路線毎の落差に驚く(後編) | 直球オヤジの自由奔走生活

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座右の銘は「"行きたい"、"やりたい"、"欲しい"と思った時が"その時"」。55歳で早期退職し、高齢者と呼ばれるまでの今が"その時"。趣味のバイクや自転車は年齢的に待ったなし。エコノミーな生活で趣味を楽しむ。これをどう追い求めるかが、このブログのメインテーマです。

北東北をぐるっと鉄道でまわる旅の2日目以降は、日本海側から太平洋側に移動し南下する。ここに東日本大震災の被災地を走る三陸鉄道がある。この鉄道の今は。

私ら夫婦はここまで日本海側のJR
五能線津軽鉄道に乗り、新青森駅までやってきた。ここから東北新幹線で八戸に移動し、JR八戸線三陸鉄道(以下、三鉄)を乗り継いでいく。JR東日本の「旅せよ平日!JR東日本たびキュン?早割パス」(2/29で販売終了)は、いくつかの三セク鉄道も乗られるのがうれしい。三鉄の運賃は決して安くないので、これはありがたい。

平日の夕方前、三鉄の北の端の起点となる久慈(岩手県)で、JR八戸線から三鉄に乗り継ぐ。ポケモンのラッピングがされた単行列車。
乗車率は2~3割程度か。ざっと見た感じ観光客は少ないよう。前回も書いたが、東北新幹線は活況を呈しているのに、そこから枝分かれしたローカル線に乗るとガクンと乗客が減る。冬の三陸地方は美味しいものが目白押しだし、ちょっと寒いが寂しい海の雰囲気を味わうのも一興だと思うが、観光客は少ない。



ポケモンのキャラクターに彩られた三陸鉄道の車両

 

約1時間半乗り、沿線の主要な町のひとつ宮古(岩手県)に到着。ここから更に三鉄を乗り継いで次の駅で降り、今宵の宿に向かう。ここまでの一日半、周囲も含めて全く雪が無かったのに、今夕になって雪が降って来た。雪の中をカミさんと宿まで歩く。宿はなかなか立派だった。二食付きで一万円少々というお手頃な料金なのに、部屋も食事も十分な質と量で大満足。しかし、宿泊客はそれほど多くないよう。前日の宿は私ら夫婦だけだったが、大きな宿なのに今宵も10組いるかいないかという感じ。

翌朝は
前夜から降った雪が10cm以上積もり、その中を再び駅まで徒歩で行く。雪が全く降らない(数十年に一度)土地に住んでいる私らには、雪がただ積もっているだけでちょっと楽しい。朝8時前、列車がやって来た。乗客は少なかった。数えるほど。大きな町から出ていく方向の列車で通勤通学の乗客が少ないからだろうが、乗車率は1割にも満たない。車内が寒い。暖房があまり利いておらず、上着が脱げない。あまりにも寒いので二両編成のもう一方の車両に移動するとそこそこ暖かかった。人員不足か経費削減かわからないが、三鉄大丈夫かと少し感じた。


 

そんな三鉄に乗るのは3回目。この鉄道は思いのほか海は臨めない。沿岸部まで急峻な山地が迫っている三陸海岸沿線では、その山地を貫くトンネルと谷を渡る橋で鉄路を築いており、海岸線に添って敷設されていないので、意外にも海は遠い。それでも谷あいからたまに見える海や、集落のある海に近い駅に止まると海がバッと開ける。また山間部は昨夜からの雪で水墨画のような山紫水明の世界に変貌し、癒される。



前夜からの雪で景色は一変していた

まるで桜のようにも見えた

 

そうこうしていると長かった三陸鉄道も終点の大船渡市の盛駅に到着。ここからJR大船渡線BRTに乗り継ぐ。「BRT」とは、かつての鉄道を廃止し、線路を剥がしてバス専用道に転換したバス路線のこと。盛駅から気仙沼までそのBRTで南下する。BRTのことを知らないカミさんに前述の説明をしたものの、思いのほかバス専用道を走ることが少なく、「これじゃあ、普通の路線バスじゃん」と不満の様子。そんなBRTだが、鉄道では見られない光景が見られる。三鉄では東日本大震災で壊滅的な被害を受けた場所をチラッとしか確認できないが、バスはそのエリアの真っただ中を走る。私はバイクツーリングでも三陸地方には何度も来ており、震災当初と比べ、町並みは生まれ変わり、今ではだいぶ落ち着いた感がする。でも真新しい住居や店などが建っている新市街地に空地が目立つのが、ちょっと淋しい。


盛駅で三鉄から大船渡線BRTに乗り継ぐ

かつての鉄道のホームからバスに乗り込むのがBRTらしさ

 

ここでも気になったのは乗車率。そんな新しい市街地も通るBRTなのに、一向に乗客は増えない。終点の気仙沼近くになると乗客は私ら夫婦だけになってしまった。このBRTは鉄道と違ってバスだから、町の主要な施設(学校や病院など)を巡ることもでき、住民にとって鉄道より便利になるというふれこみだった。当初鉄道の復興を望む声は大きかったが、そのようなメリットもあるからと、やむなく鉄道の復活は諦めてBRTに転換したのに乗客は多くない。採算性の観点から鉄道の復活を拒み続けたJRからすれば、「ほら見たことか。言った通りでしょ」と思っているかもしれない。

気仙沼から仙台方向に向かってBRT路線は伸びているが、カミさんは「バスより鉄道の方がいい」と言うので、計画を変更して東北新幹線に接続する一ノ関駅に向かうJR大船渡線に乗り換える。そして一ノ関駅で
東北新幹線に乗り換えると、あら不思議、乗客が多いこと。最速の「はやぶさ」ではなく「やまびこ」だからガラガラかと思ったら、乗車率は50%を超え70%くらい。やはりかなり多くの人が移動しており、改めて新幹線の活況に目を見張る

旅に何を求めるのかは千差万別。若い頃は「観光地巡りなんて、ガイドブックのおさらいにすぎない」と粋がっていたが、旅に何を期待するかは、その人がそれで満足ならばそれでいいと、今ではそう思えるようになった。ただ、旅の面白さとして共通して言えるのは、「今まで見たことがない(食べたことがない、経験したことがない)ことに出会える」という点。新幹線のような太い幹だけでなく、そこから伸びた枝葉、そして更にその先の末節まで行けば行くほど、未知のちょっと変わったモノやコトに遭遇できる確率が高くなる。枝葉末節路線は、新幹線と比べればスピードは亀のように遅いし、乗り心地も良くないし、便数は少ないし、不安になるほど乗客は少ないし、着いた先の町の宿だって限られてしまう。でも、そこでは人や物が溢れる大都市や有名観光地とは対極な世界が見られ、「日本」と一括りに言うけど「日本も色々だなぁ」と知る端緒となる。そんな土地、ちょっと語弊はあるが「僻地」にもっと多くの人が行ってみたらと感じた、東北の鉄旅だった。