地震報道で報じられないこと | 直球オヤジの自由奔走生活

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座右の銘は「"行きたい"、"やりたい"、"欲しい"と思った時が"その時"」。55歳で早期退職し、高齢者と呼ばれるまでの今が"その時"。趣味のバイクや自転車は年齢的に待ったなし。エコノミーな生活で趣味を楽しむ。これをどう追い求めるかが、このブログのメインテーマです。

次々入って来る能登半島地震の実状。これは酷い。被災者の辛さは、安全な所から見ている自分なんかには想像もできないレベルだろう。そんな溢れ返る地震関連報道の中、殆ど、いや全く触れられないことがある。それはなぜなんだろう。知りたいことなのに。

地震が起きて約二週間。最近の話題は避難所の過酷な生活と、まだ援助の手が届いていない孤立集落のことが多い。膨大な報道がされているが、なぜか全く触れられていないことがある。ひねくれた性格の私は、見えている部分ではなく、
見えていない部分に注目してしまう習性があるので、それらが大いに気になる。それは決して興味本位ではなく、その中に大事なことが見え隠れしている。そんな報道されないことを書いてみよう。

1.原発は大丈夫?
 今回の地震で最大震度の震度7を観測した地は、「
志賀」という場所。「しが」ではなく「しか」と読むが、ここに志賀原発がある。いくつかのトラブルは起きたそうだが、東日本大震災の教訓が活かされたのか、大事故には至らなかったのは幸いだった。

しかし、この原発は原子炉建屋直下に活断層があるのではないかと、適合性審査の過程で長年揉めたことで有名(2023年3月に2号機においては活断層では無いという結論が出た)。加えて今回の能登地震では隣町の輪島を中心に、原発のある半島西側では最大で
4mも隆起したとも言われている。原発が立っている地の地殻変動量がどれ程だったのかは知らないが、そもそもこのような地に原発があることは問題ではないのかメディアは追及すべきなのに、原発関連の報道は非常に少ない。今回は大事故には至らなかったから「良かった、良かった」で済ませてはいけない。本当に大丈夫か、志賀原発。

2.鉄道はどうなっている?
 能登半島には何本かの鉄道が走っている。金沢方面からは半島のなか程に位置する和倉温泉まで
JR七尾線が、そこから先の穴水まではのと鉄道が延びている。また、富山方面からは半島の根元にほど近い氷見までJR氷見線が走っている。これらの路線の今は?道路のことは頻繁に報道されているが、鉄道に関しては殆ど報道されない。さぞかしあちらこちらで寸断されているに違いないのだが、東日本大震災の時の「さんてつ(三陸鉄道)」とは全く扱いが違う。

私は
乗り鉄を趣味としているので、能登半島を走るこれら三本の路線全てに乗ったことがあるが、どれも乗客は少なかった。特に奥能登方面に伸びるのと鉄道は厳しい状況だった。報道がされないということは、その関心の薄さの現れかもしれない。普段からこの鉄道は住民の足ではなく、車社会の地域においてはあってもなくても同じような存在だったのか。もしそうだとしたら寂しい実態だが、日本各地のローカル線にはそういう路線が数多く存在する。果たして能登の鉄道は復旧し、そして生き残れるだろうか。

3.救援隊はどんな生活をしているのか?
 災害復旧にあたる
自衛隊の姿には敬服する。自衛隊だけではなく、電気や水道、道路などを復旧させようと多くの事業者の方々が現地に投入され、日夜懸命に作業をしていることだろう。しかし、そんな救援活動に励む膨大な人々のバックヤードの実態は全く報じられない。

あれだけ多くの自衛隊員は、いったいどこで寝泊まりしているのか、食事は、トイレは、風呂は?そんな数々の疑問が沸いて来る。ちゃんと食事を摂らなければ救援活動に支障が出てしまうから、しっかり食べて、寝て欲しい。しかし、その実態はベールに包まれている。過酷な戦場では兵器だけでなく
後方の支援体制も非常に重要だから、それらが活用されているのだと思うが、バックヤードは見せないことは不文律なのか軍事機密のベールに包まれている。

4.メディアはどこに泊っている?
 救援隊以外に報道各社も大量の人員を投入している。連日連夜被災各地から中継しているが、
メディアはどこにどんな形で寝泊まりしているのだろうか。現地の宿泊施設は休業している所も多かろう。比較的被害が少なかった金沢や高岡には多くの宿泊施設があるが、ここから現地に日参していては、移動に多くの時間を費やしてしまう。また、食事は買い溜めすればしのげるが、トイレはどうしているのか、ガソリンはどうやって調達しているのか。まさか、中継車と伴にキャンピングカーやタンクローリー車を同行させているとも思えないが。

メディア報道の功罪はあるし、多くのメディアが入れ代わり立ち代わり取材に来て鬱陶しいと思う被災者もいるだろう。でも、現地の実態を知るにはメディアの力は必要。そんな報道に携わる人々も苦労しながら放送しているはず。そんな一端を少しは開陳してもいいのではなかろうか。

5.無事だった部分も見せて欲しい
 完全に倒壊した家屋が映る映像を見ていると、時に
全く無傷のように見える家屋も見られる。”多く”の家屋が倒壊したと言われても、”全て”の家屋が倒壊した訳ではないはず。シャンと建っている家屋はどんな建物なのか。また、大きな家具が倒れる動画も投稿されニュースで報じられたが、そうでない家もあったはず。そんな家庭ではどんな対策を事前に講じていたのだろう。

大地震が起きると全国各地のホームセンターの
防災コーナーが賑わう。商魂逞しいとも言えるが、これを機会に我が家の防災対策を見直すことは良いこと。しかし、どう対応したらいいのかわからない人もいるだろう。現地で大きな被害を免れた人はどんな家に住み、どんな準備を事前に実施していたのか知ることができれば大いに参考になる。「そんなことは後々落ち着いてから」と言われるかも知れないが、多くの人は喉元過ぎれば熱さを忘れてしまう。防災意識が高まっている今こそ、そんな例も報道して欲しい。

6.孤島は大丈夫なのか?
 能登半島の沖合約50kmの所に「
舳倉(へぐら)島」という小さな島がある。本当に小さな島で、地図を見ても思わず見逃してしまいそうになるが、2020年の調べでは人口66人32世帯の方々が住んでいる。この島も輪島市で輪島港から定期船が出ている。そんな絶海の孤島は被害を受けなかったのか。津波は大丈夫だったのか。また唯一の移動手段である輪島港との航路は途絶えてしまっているだろうが、食料なども含め生活はどうなっているのだろう。そんな小さな小さな島のことなんか、取るに足らないことなんだろうか。

7.あの高級温泉街はどんな状況?
 七尾市と言えば、私が思い出すのは
和倉温泉。この温泉郷は高級ホテルが多く、全国的に知られている。中でも超おもてなしホテルとして有名な「加賀屋」はメディアの露出も多かった。私も和倉温泉に二、三度泊ったことがあるが、質素倹約旅行なので温泉街の外れにある激安ビジネスホテル泊りで、この温泉街の素晴らしさを堪能したことがない。そんな温泉郷も多大な被害にあったはず。「あの加賀屋も休業」という報道は聞いたが、温泉街の被害を伝える映像は無かった。

「この時期に観光なんて!」と眉をひそめられかねない状況下だから、能登観光の代名詞的なこの温泉街のことを報じるのを控えているのか。また被害がことのほか甚大で、復興後の風評被害を予想して控えているのか。しかし、
七尾と言えば和倉温泉というほど全国的に有名なのに、生活と直接関係が無い場所は報じないのもおかしい。

8.ガザやウクライナはどうなった?
 イスラエルのガザ侵攻が起きたら、ウクライナでの戦争のことはパタリと報じられなくなった。能登半島地震が起きたら、テレビからガザのニュースが消えて無くなった。
他国のことよりも自国の方が大事というのはもっともだが、どちらも依然と悲劇は続いている。ニュースバリューが無くなると手のひらを返したような対応をするのは、メディアのいつものやり口

「戦争と地震のどっちが悲惨か」などというような比較はすべきではないだろうが、敢えてするのなら私は
戦争の方が遥かにイヤだ。そういう比較や感情を抱かせないよう、ガザやウクライナことを報じないのか。再び彼の地のことが報じられるようになった時、事態は一層酷く取り返しの付かない状況に陥っていたりするかも。

陰謀だとは言わないが、報じないことには訳がある。忖度や配慮もあるだろう。被災者の気持ちを思えば相応の配慮は必要だし、安全な場所にいる人が抱く単なる興味や好奇心に答える必要も無い。でも、ある一面だけを繰り返し見せられると、社会の関心はそこにだけ集中してしまい、そこから除外された部分は無かったことになってしまう恐れがある。対応が遅れた孤立集落の問題もその一端かもしれない。避難生活の実態について微に入り細に入り言及したり、ショッキングな映像を何度も何度も繰り返し放送なんかせずに、もっと広く、そして多方面に渡って報道することも必要なんじゃないかと思う。