2023年に観た映画、ベスト1! | 直球オヤジの自由奔走生活

直球オヤジの自由奔走生活

座右の銘は「"行きたい"、"やりたい"、"欲しい"と思った時が"その時"」。55歳で早期退職し、高齢者と呼ばれるまでの今が"その時"。趣味のバイクや自転車は年齢的に待ったなし。エコノミーな生活で趣味を楽しむ。これをどう追い求めるかが、このブログのメインテーマです。

毎年20本前後の映画しか観ないので、映画に詳しいとか、映画が趣味とまで言わないが、その中でベストを選んでみようと思う。果たして去年観た映画のベスト1は。それは意外な作品だった。

去年(2023年)私が映画館で観た映画の総数は
23本。映画の評価点数は次のようにしている。満点は5点。4点以上なら十分満足。3点はギリギリ許せるレベル。5点は全く非の打ち所がなく完璧な場合で、どんな素晴らしい映画でも何かしらツッコミどころはあるから、過去に5点を付けたことは無いと思う。だから現実的に4.5点がほぼ最高点となる。鑑賞後時間経過とともに印象が変わることがあるので、評点は映画を観終わった直後、他のレビューを見ずに直感的に付けている。観た順に表記する。

<邦画>
 シャイロックの子供たち:3.5
 怪物:4.0
 658km、陽子の旅:3.5
 こんにちは、母さん:3.5
 沈黙の艦隊:4.0
 福田村事件:4.5
 ゴジラ-1.0:4.0
 ほかげ:4.5

<洋画>
 非常宣言:4.5
 SHE SAID/シー・セッド その名を暴け:4.5
 ドリーム・ホース:4.0
 FALL:4.0
 オットーという男:4.0
 コンパートメントNo.6:3.5
 生きる LIVING:3.5
 パリタクシー:3.5
 インディ・ジョーンズと運命のダイヤル:4.0
 ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE:4.0
 キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩:4.0
 グランツーリスモ:4.0
 クリエーター 創造者:3.5
 ナポレオン:3.5
 PERFECT DAYS:4.0

2023年は映画の当たり年で、なかなかいい映画に恵まれた。観た本数こそ洋画には負けるが、
邦画にいい映画が多かったこともうれしい誤算。洋画の中には邦画には無い大スケールとドンパチが派手な映画も多いが、その手の映画は観終わった直後は「ああ、面白かった」と思えても、すぐに減衰してしまい、深く印象に残らない。私のこのベスト1は評価点数も重視するが、その中でも強く印象に残った作品から選んでいる。だから、決して「ああ、面白かった」とか「良かった、良かった」と、カタルシスを憶えるような結末のものが選ばれるとは限らない。

そういう観点で一次選考をすると、以下の映画が残った。

 怪物:4.0
 福田村事件:4.5
 ほかげ:4.5
 SHE SAID/シー・セッド その名を暴け:4.5
 FALL:4.0
 PERFECT DAYS:4.0

邦画と洋画で各3本ずつ残った。この中からベスト3を選ぶ。

第三位!:FALL フォール
「山でのフリークライミングで夫を落下事故で亡くしたベッキーは、悲しみから抜け出せず1年が経とうとしていた。そんなベッキーを立ち直らせようと親友が奇抜なクライミングの計画を立てる。
荒野の真っただ中に建つ、今は使われていない地上600メートルの塔をターゲットとして選んだ彼女達は、老朽化で足場が不安定になった梯子を登り続けながらも、なんとか頂上に到達。しかし、それも束の間、梯子が崩れ落ち、彼女達は塔のテッペンに取り残されてしまう。スマホの電波は不達。食料も無く、辺りに人影も無い。ベッキー達は技術と知識をフル活用して、どうにかこの危機から抜け出そうとするが・・・」(「映画.com」よりあらすじを抜粋、修正)


 

地上600m!高所恐怖症の人でなくてもゾッとする映画。そんな一本の塔が荒野に建っており、そのテッペンに取り残されるなんて!そのハラハラドキドキ感や絶望感があまりにも恐ろしい。単純だし、深いものは無いが、だからと言って「頭を空っぽにして」見られるものでもなかった。動画配信やスマホという現代的な要素も絡ませている点もいい。ハラハラドキドキ映画は多いが、こんな奇抜なシチュエーションの映画は初めて。

第二位!!:福田村事件
 「数々の社会派作品を手がけてきた森達也監督が、
関東大震災直後の混乱の中で実際に起こった虐殺事件を題材にした作品。
1923年、澤田は教師をしていた日本統治下の京城を離れ、妻の静子と伴に千葉県福田村に帰ってくる。澤田は日本軍が朝鮮で犯した虐殺事件の目撃者であった。その年の9月1日、関東地方を大地震が襲う。多くの人々が大混乱となり、流言飛語が飛び交う中、香川から関東へたまたまやってきていた沼部率いる行商団15名は、次の地に向かうために利根川の渡し場に向かう。沼部と船頭との小さな口論に端を発した行き違いにより、興奮した村民の
集団心理に火がつき虐殺が起こってしまう」(「映画.com」よりあらすじを抜粋、修正)


 

関東大震災直後、各地で起こった朝鮮人らをターゲットにした虐殺事件。そのひとつがこの事件。そこに新聞記者や日本統治下の朝鮮から帰国してきた元教師、地元自警団などが織りなすこの事件。差別的な側面もさることながら、流言飛語に惑わされた普通の市民も巻き込み、群集心理が一気に噴き出す様が恐ろしい。映画は比較的ノンビリと穏やかに進むが、終盤の大量殺戮場面での急転直下の展開がすさまじい。こういう事件があったことを忘れていけない。

第一位!!!:ほかげ
 「塚本晋也監督が、
終戦直後を舞台に絶望と闇を抱えながら生きる人々の姿を描いたドラマ。
焼け残った小さな居酒屋に1人で住む女は、体を売ることを斡旋され、絶望から抗うこともできずに日々をやり過ごしていた。そんなある日、空襲で家族を失った子どもが、女の暮らす居酒屋へ食べ物を盗みに入り込む。それ以来、子どもはそこに入り浸るようになり、女は子どもとの交流を通してほのかな光を見いだしていくが・・・」(「映画.com」よりあらすじを抜粋、修正)

 

 

気持ちのいい映画では全く無い。エンタメ的な要素もほぼゼロに近い。映画館を出た直後は複雑な気持ちだったし、この映画をベスト1に選ぶとは、その時には思いもよらなかった。素晴らしいのは出演者の演技。この映画で趣里という女優を始めて知った。NHKの朝ドラを観る習慣が無いのでこの女優の存在は知らなかったが、趣里の演技が秀逸。映画の画面も内容も終始暗く、ドヨ~ンとしているが、時折見せる顔には母親(伊藤蘭)の面影がはっきり見て取れる。戦争から戻った元兵士の森山未來や戦争孤児役の子役の演技も申し分ない。戦争と言うものは無事に生き残って帰還しても、また戦争から逃れられた市民らにとっても、その後は地獄が待っていたという内容。殆ど救いの無い様で気持ちは落ち込むかもしれないが、最後にほんの僅かな希望が垣間見えるのが唯一の救い。

「ほかげ」は私の中では第一位にしたが、誰にでもお勧めという映画ではない。映画館を出た時「観て良かった!」と思いたい(私もそうだが)のなら、この映画は観ない方がいい。結末はすっきりしないし、戦争直後の悲惨な状況がプンプンしており、不快に感じる人も多かろう。しかし、それでも主演級の三人の役者の演技があまりにも素晴らしく、
終戦直後の苦悩と憤りを表現している。内容よりもそこに脱帽した。

2023年は邦画にいい映画が多かった。巷の評価が高い「月」を見逃してしまったのは残念で、これを観ていたら順位に変動があったかもしれないが、派手なハリウッドや韓国の映画と違い、
人間の奥底に潜む心根のようなものを見せられた映画が多かった。それらには派手さは全くなく、映画にあって然るべきエンタメ要素も少ないし、安全安心で、不潔なものを極端に忌避する潔癖症のような現代社会から見たら、あまり見たくないシーンも多い。だから観ようかどうしようか逡巡するし、観た後も「ああ良かった!」とはならない。しかし、なぜか鑑賞後その印象はズルズルと長く引きずる。こういう映画を良しとするようになったのも、歳のせいかな?