歌の贈りもの  | 鳥肌音楽 Chicken Skin Music

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6月27日はブルース・ジョンストンのお誕生日のようです。42年生まれなので75歳、かなりの高齢ですが今もマイク・ラヴと一緒にビーチ・ボーイズとしてツアーで世界中をかけめぐっています。

ということでブルースについてウィキなんかで調べていたら、彼の代表曲「歌の贈りものI Write The Song」について「えっ、そうだったの」と今までのイメージがほとんど180度間違っていたことに気づいてしまいました。こまめに歌詞カードを読んでいればこんな勘違いは起こる故もなく、今頃気づいたのかと笑われそうではありますが・・・。



ビーチ・ボーイズの評価がビートルズを肩を並べるくらいになった現在では「歌の贈りもの」は作者ブルース・ジョンストンの歌と言うイメージが強いのではないかと思いますが、この曲が一般的な音楽ファンに知られるようになったのは1977年にバリー・マニロウが歌ったバージョンのヒットによってであり、このヒットでブルースは77年度のグラミーでソング・オブ・ジ・イヤーを獲得しています。

ですが、「歌の贈りもの」のオリジナル・バージョンは1975年にデヴィッド・キャシディが歌ったものなのです。

David Cassidy - I Write the Songs


デヴィッドの歌う「歌の贈りもの」のプロデューサーは72年にビーチ・ボーイズを脱退して自身のイクイノックス・レーベルなどで制作人として活躍していたブルースです。プロデューサーとしてかっての盟友カール・ウィルソンをセッションに招集してバック・コーラスを謳わせています。自分の未発表の自信作をデヴィッドに提供したということなで、アメリカではさほど話題にならなかったようなのですが英国では11位のヒットになっていました。

と書いたものの、オリジナル・バージョンはキャプテン&テニールであると書かれたものもあります。C&Tのバージョンは75年の5月発売のアルバム『愛ある限りLove Will Keep Us Together 』に収録されています。

I WRITE THE SONGS -- CAPTAIN & TENNILLE


キャプテンことダリル・ドラゴンとトニー・テニールはキャプテン&テニールでのデビュー前の70年代前半ビーチ・ボーイズのツアー・メンバーでしたから、その縁でのカバーとなったのでしょうが、ひょっとするとビーチ・ボーイズを抜ける前にブルースがビーチ・ボーイズのステージで歌っていたこともあって、それをC&Tが気に入っていたなんてことはないのかな(妄想です)。

そして75年の11月に決定版となるバリー・マニロウのシングル「歌の贈りもの」が発売となるのですが、ウィキによればバリーは最初この歌を録音するのを嫌がっていたのですがクライヴ・ディヴィスの説得によって録音を決心したとなっています。ってことは自分で選曲したわけじゃないということになるのでしょうが、誰が薦めたんでしょうね。クライヴ・ディヴィス?ブルース・ジョンストン?それともプロデューサーだったロン・ダンテか。

それは置いといてバリーの自伝にはバリーが歌うのを嫌がった理由が以下のように書かれています。

「問題点は、あなたが歌詞をじっくり聞いていないと、歌手が自分自身のことを歌っていると思われてしまうことだ。自画自賛野郎と誤解される可能性が強いんだ。」

えっ、どういうこと。「歌の贈りもの」ってエルトン・ジョンの「僕の歌は君の歌」みたいな、「愛する君のために作った歌を心をこめて歌うよ」っていう歌じゃないの????。そうこれが大きな勘違いでした、僕はバリーが危惧した以上に歌詞を全然読まずにタイトルと曲調だけで単純なラヴ・ソングと思っていたのですが・・・・。

Barry Manilow - I Write The Songs with lyrics



わたしは永遠に生き続ける
最初の歌を書いたのはわたし
言葉とメロディをひとつにし
わたしは音楽
そしてわたしは歌を書く

わたしは世界中で歌われる歌を書く
わたしは愛と言う特別な歌を書く
わたしは少女が涙する歌を書く
わたしは歌を書く 歌を

わたしの家はあなたの心の中にある
あなたの魂の中にわたしはいる
あなたの目を通して見ることで
年老いたわたしは若くいられる

わたしは世界中で歌われる歌を書く
わたしは愛と言う特別な歌を書く
わたしは少女が涙する歌を書く
わたしは歌を書く 歌を

わたしの音楽はあなたを躍らせ
あなたにスピリットを与える
わたしはあなたの心を揺らすR&Rを書いた
音楽はあなたの心を満たし
すてきな出発点となる
それはわたしから それはあなたへの歌
それはわたしから それはあなたへの歌
それは世界中のみんなへの交響曲

わたしは世界中で歌われる歌を書く
わたしは愛と言う特別な歌を書く
わたしは少女が涙する歌を書く
わたしは歌を書く 歌を

わたしは音楽 そして わたしは歌を書く


歌詞の主語の「I」は人間ではなく、おそらくは音楽の神ミューズのことなのではないかと思います。つまりこの歌は音楽の神にたいするゴスペルって思っていいんじゃないかと。ありきたりのラヴ・ソングなんかではありませんでした。ホント何も聴いてなかった自分がお恥ずかしいかぎりです。

「歌の贈りもの」はフランク・シナトラ、サミー・ディヴィスJr.、ジョニー・マティス、フランク・チャックスフィールド、マントバーニ、レイ・コニフ、リチャード・クレイダーマン、トム・ジョーンズ、ダィナ・ショアといったそうそうたる歌手や演奏家によって取り上げられていますが、それもこれも音楽の神への感謝の気持ちゆえなのでしょうね。納得いたしました。



いろいろあるけど本人バージョンが一番かな。