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南北長官級会談/ハンギョレ新聞社説06/01

南北長官級会談決裂南の責任が大

ソウルで四日間開かれた第21次南北長官級会談が何らの合意ができなくて終わった。北朝鮮核実験以後南北関係が正常化してからわずか三ヶ月のうちに再び霧の中に迷い込んだ。軽工業及び地下資源開発協力など既存合意は予定通り進行すると言うが相当な影響を受けざるを得ない。
会談が事実上決裂した一次的責任は南側にある。政府は第20次長官級会談で対北米支援を約束してからも今会談直前に北朝鮮が 2·13 合意を履行しなかったという理由で初回分船積みを延ばすことを決めた。合意不履行の主な原因がバングコデルタアシア(BDA) の北朝鮮お金問題が解決されなかったことにあるに、北にだけ責任をなすりつけた。これは南北関係を 6者会談に従属させるという点で望ましくないだけでなく、BDA問題解決にも役に立つことができない。破局的状況ではないのに人道的事案である米支援を交渉カードで活用したことも正しい道ではない。ここに対米依存姿勢が影響を及ぼしたなら大変残念だ。アメリカは韓国の同盟国で 6者会談の核心当事国ではあるが南北関係の主役ではない。

融通性ない姿を見せた北にも責任がある。南側代表団は米支援がないというのではないことを充分に説明して国際機関を通じた『とうもろこしサポート』なども考慮したが北は態度を変えなかった。そのせいで南北国策機関会議、国防相会談再開、南北鉄道の段階的開通、国軍捕虜·拉北者問題など他の議題は論議さえできなかった。北が望む米支援もしばらくもっと難しくなった。こんな結果が北住民にどんなに作用するかまた考えて見なければならないだろう。

もう政府の対北政策は冷厳な批判を避けにくくなった。まず一貫性不足だ。歴史的な南北列車試験運行をしてからわずか十日余りぶりに長官級会談を決裂させることで次段階南北関係の絵を描くにも困難になった。より大きな問題は南北関係の独自性を自ら否認した点だ。朝鮮半島固有の課題を解こうとすると南北関係拡大が必須で,これは核問題解決にも肯定的に作用する。しかし政府は朝鮮半島平和体制論議などが現実的課題として近づいている状況で、むしろ逆に行く道を選んだ。深刻な反省が必要な時点だ。

安倍首相よ、拉致問題の情報を公開せよ

吉田康彦(帝塚山学院大学客員教授/元国連職員・IAEA広報部長)

 安倍首相は拉致問題の徹底究明を求め、圧力一辺倒の政策で北朝鮮を追いつめてきたつもりのようだが、成果はまったく挙がっていない。
 首相は「拉致問題の解決なくして日朝国交正常化なし」と繰り返し、「解決」とは、①北朝鮮が死亡したとする8人全員の生還を実現し、②実行犯引渡しを要求し、③拉致犯罪の全容を明らかにすることだという。ことし2月の6者協議における「北京合意」のあとは、「解決」の代わりに「進展」と言い換えたが、何をもって「進展」とするかは日本政府が判断するのだという。
 これに対し、北朝鮮側は、①「8人死亡」は既定の事実 ②実行犯はすでに処刑済み ③拉致は「特殊機関の英雄主義・妄動主義の仕業」であり、金正日総書記が小泉首相に対し謝罪している、として「拉致問題は解決ずみ」の立場を変えていない。
 しかし、8人の死因や死亡時期には不自然な点が多く、私自身、「解決ずみ」とする北朝鮮の主張には無理があると思うが、8名死亡の事実を裏づける確証が存在しないことをもって「生存」の根拠とし、全員救出を叫ぶ日本の主張にも無理がある。「死亡の確証がないから生存していることにはならない」からだ。横田めぐみさんの遺骨をニセと断定した日本政府の根拠も薄弱である。遺骨の鑑定にあたって吉井富夫・帝京大学講師(当時)もニセとは断定していないことを英国の科学雑誌『NATURE』で認めている。
 日朝双方の当事者から入手した情報によれば、2004年11月の日朝実務者協議で、北朝鮮側は乏しいながらも集められる限りの資料と情報を日本側に提供し、日本側もそれを評価、両国は年内にも国交正常化交渉再開で非公式に合意していたにもかかわらず、安倍晋三氏の横ヤリでつぶされ、鑑定に持ち込まれた横田めぐみさんの遺骨が政治的判断でニセと断定されたのだという。その証拠に、協議に臨んだ藪中三十二団長は、帰国早々は、「これで拉致問題の90%は解決した」として、「北朝鮮側の誠意ある対応に感謝」していた。ところが、その藪中氏が遺骨の鑑定後は貝のごとくダンマリを決めてしまったのだ。
 「実は、小泉首相以下、当時の日本政府幹部は横田めぐみさんを含めて8人が死亡していることを知っている。知っていて"全員生還""全員救出"と叫ぶことで国民感情に迎合し、国交正常化を引き伸ばしているのだ」と外務省筋が筆者に語ってくれた。
 「安倍内閣は拉致問題についての決定的情報を国民に隠して政治目的に利用している。それは植民地時代の『過去の清算』をしないで済ませようという謀略だ」と、最近、平壌で再会した宋日昊大使は悲憤慷慨していた。安倍首相の背後に、そうした謀略を企んでいる勢力が存在することは確かだ。
 いずれにせよ、われわれは日本政府に対し、横田めぐみ遺骨問題を含めて拉致問題に関する全情報の公開を要求すべきだ。
【『ポリシーフォーラム』2007年5月1日号】

南北鉄道試験運転について…

去る5月17日56年間閉ざされていた南北の鉄道(京義線、東海線)に統一列車が走った。1回限りの試験運転であるが、統一の象徴としての意義は大きい。南北の鉄道連結はロシア、中国を経てヨーロッパへとつながり『鉄のシルクロード』なるものが世界に登場する。ヨーロッパとアジアの物流構造が東北アジアを中心に再編成される可能性を示す。

『6者会談の進展無いまま南北が先行するのは良くない』とか『北にお金だけがわたる』とか冷や水を浴びせる報道は相手にしないとして、1回限りとか南はお祭りムードだが北は冷ややかとか消極的な論調も出ている。そうしてまたお得意の『希望的妄想』が膨らみ『北は統一を求めていない』とか『鉄道連結は北に都合が悪い』とかばかげた話をしている。

何も知らない、知ろうともしない『専門家』… ではここで『裏話』でもしようか… 裏話と言ってもただの歴史的経緯であるが、これが裏話になるから面白い。裏も表も無い世論が支配している証拠である。

そもそも南北間が鉄道連結事業に合意したのは2000年7月である。1回限りの試験運転に7年もの月日を要した背景に何があるのか?同じ月8月には連結着工式、2003年に再連結し2005年に試運転が予定されていたがそれが頓挫した。

頓挫した理由は『軍事的安全保障措置』の問題だ。南北鉄道連結事業において最大のポイントは朝鮮を南北に分かつ軍事境界線上の運行をどうするかが焦眉の課題であるがそこに大きな問題がある。南北分断の軍事境界線およびここから南北2Kmの区域が非武装地帯(DMZ)とされているがそれが設けられたのは、朝鮮戦争の停戦時(1953年)である。軍事境界線を儲けた主体は停戦協定委員会でありその管轄権も停戦協定委員会にある。53年の停戦協定は北と国連軍(米軍)によって締結されて(南の李リスンマン大統領はボイコット)。

したがって停戦協定の定める軍事境界線および非武装地帯の管轄権は北側は朝鮮人民軍であり、南側は在韓米軍総司令官にあるのだ。軍事境界線から南方2Kmの地帯は地図上は南の領域であるが、その管轄権は南にあるのではなく米軍にあるのだ。つまるところ南政府は南北鉄道の連結事業の法的な主体となりえないのである。それを象徴する出来事があった。今回南から出発した鉄道を歓喜の中見送った南のメディアたちだが、軍事境界線ではなくそれから2Km退いた非武装地帯南方限界線で電車を見送るしかなかった。非武装地帯が米軍管轄にあるため南政府が許可を出す権限がなく、政府が米軍に申請したが黙殺された。

したがって南政府は常に米の顔色を伺いながら、何かするごとに許可を得なければ成らないといことである。朝鮮統一の象徴としての全民衆の歓喜の中で祖国統一と言う悲願成就の感涙とともに連結運行されたとしても、いつ何時でも米国の横暴無尽な振る舞いによってひっくり返される可能性が十二分にあるということだ。朝鮮民族が21世紀になっても分断されていることは民族的な恥であるにもかかわらず、それを世界の面前で米国によって遮断されることを北政府が許すはずが無い。明確かつ安全な事業計画もなしに起業すると同じことである。 まさに見切り発車になってしまう。

それでは何故今回1回限りであっても北政府をOKしたのか?それは6者会談や米朝協議の中で朝鮮戦争の終結宣言、朝米平和協定なたびに国交正常化がうっすらであるが可視化されることによって下された判断であろう。また統一を望む民衆に少しでも勇気と希望を与えるために下した決断である。1回限りも勇気と希望が絶望に変わらないための措置が出来ていないからであろう。

今回北側から出発した列車に『1968年8月9日 故金日成主席が乗車された…』とい看板が注目をあつめた。北側の金鉄道相は『ほかに新しい列車がたくさんあるがあえてこの列車を選んだ』と発言した。北側の南北鉄道連結の意志は非常に固く、その政治的意義も重く考えている。 だからこそ中途半端にいつ頓挫するかわからない状態を、朝鮮半島の運命と未来を朝鮮の民衆自身で決められる状態、すなわち朝鮮半島における米国の干渉と圧力を完璧に排除した状態にするために米朝との熾烈なせめぎあいを展開しているのである。裏話でもなんでもない…朝鮮の歴史を知っていれば簡単に考えられることなのに… 

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