朝鮮問題を見る眼~Eye/愛~
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拉致敗戦 -日本は北朝鮮問題で致命的な孤立に追い込まれる(その1)

レオン・V・シーガル/聞き手・松尾文夫
 
 北朝鮮のマカオ資金送金問題の解決で二月の合意文書採択以来、宙に浮いていた六者協議が動き出した。その中で六月二十三日の米主席代表、ヒル国務次官補の平壌電撃訪問に象徴されるように、米国と北朝鮮の間の「呼吸の一致」が目立ちはじめ、拉致問題の進展を前面に押し出してきた安倍外交孤立化の懸念が際立ってきた。一九八〇年代から北朝鮮の核開発問題の研究を続け、米政府の政策決定の裏側を知り尽くしている米国の専門家に、米国が日本を非難する可能性すら出てきた今の構図を解説してもらった。

松尾 ヒル代表の行動をみていて、ブッシュ政権の北朝鮮政策の転換を肌で感じるようになってきたが、いつごろからこの変化は始まったのか。
シーガル 去年の夏からだ。一年前の、恐らく八月末から九月初めごろだろう。七月五日にミサイル発射実験があり、核実験を準備している明らかな証拠が出始めていたこのころ、具体的な日時は分からないが、ライス国務長官がブッシュ大統領のところに行った。同じころ、別にヘンリー・キッシンジャー元国務長官も大統領と会ったとみられている。この延長線で十月十日、キッシンジャーが対北朝鮮についてのブッシュ大統領のメッセージを持って、ひそかに北京へ行き、中国の胡錦濤主席に会う動きが生まれている。このメッセージは、同主席を通じて金正日総書記に伝えられたと信じられている。これは、北朝鮮との交渉路線の切り替えが、基本的にイラク戦争の失敗の結果ではなく、対中友好政策と連関していることのしるしだ。
 その会談は偶然にも、北朝鮮の核実験があった十月九日の翌日に行われた。そのためには、もっと前からキッシンジャーは北京にいたはずだ。会談の段取りは、その一週間ほど前に決まっていたのだろう。
松尾 実に興味深い。日本の安倍晋三首相も、核実験の前日(十月八日)に北京入りしていた。同じころキッシンジャーもいたわけだ。それで、ブッシュ・メッセージの内容は?
シーガル 私が得ている情報からの推測だが、第一に、北朝鮮が核を捨てたら、われわれは平和条約に調印する、だがそれに関する協議は早期に始めることができる、との立場を伝えたと思われる。第二は、この平和条約に関する協議の一つの方法として、暫定的な一連の和平合意について交渉し、信頼醸成措置ないしは、北朝鮮側が言うところの、軍事停戦委員会に代わる和平メカニズムに、調印することも可能だ、と伝えたのではないか。
松尾 つまり朝鮮戦争の公式終結である平和条約の一つ手前の和平合意、これは上院の批准を必要としない。政府間合意でやれるという判断か。
シーガル そのとおり。平和条約が公式の戦争終結で、それは彼らが核を放棄するまで実現しない。ブッシュ大統領も、公式発言で確言している。だが、和平合意は、もっと早く作ることができる。米国がそれに調印することは象徴的な外交的承認を与える手段となる。
 第三は、北朝鮮の安全保障と同時に、六ヵ国協議に参加しているほかの全員の安全保障も協議したい。そうなれば、六ヵ国協議は地域安全保障フォーラムに変わるはずだ。重要なのは、北朝鮮が同等の主権国家としてテーブルに着くことであり、他の五ヵ国と同等の立場に立つことになるのだ、との考え方が伝えられたと思う。


松尾 「レジーム・チェンジ」政策の否定をはっきりと伝えたということか。
 
シーガル その選択肢は最初から存在しない。軍事的オプションもないうえ、韓国と中国が制裁に加わらないからだ。彼らが制裁と封鎖で北朝鮮を完全に締め上げる気にならない限り、米国はレジーム・チェンジなどできない。とにかく、重要なのは、こうしたメッセージが、胡錦濤主席を通じて北朝鮮に渡ったということだ。
 
松尾 そのメッセージが、核実験の後で北朝鮮に渡ったことが、日本にとっては気になる。それは、米国が北朝鮮の核保有を事実上容認するという意思表示ではないのか。
 
シーガル いや、絶対に違う。六者協議の枠組みを見れば分かるが、その目的は常に最終的な核の撤廃だ。
 ただ、その過程が段階的なものになることを、われわれは承知している。なぜなら北朝鮮は、米国の姿勢は完全に変化し、自分たちを敵扱いしなくなった、と確信するまで、核を手放さないからだ。そして、それには何年もかかる。即座にできることではない。
 問題は、北朝鮮が核を放棄するかどうか、誰にも分からないことだ。いろんな人物があれこれ言っているが、そうした発言は無意味だ。なぜなら、鍵を握っているのはただ一人、金正日総書記だからだ。彼はまだ心を決めかねているのかもしれない。
 だからこそ、段階的に交渉する必要がある。核計画を放棄させ、核兵器と核物質を再び査察の下に置かせる。この道を進む際、交渉材料を持っておくことが大事だが、いまのわれわれには、あまり手持ちがない。軍事力行使はできない、制裁はできない、大きな見返りを与えることもできない。
 
松尾 しかし、今度の変身までは、ブッシュも交渉拒否の立場だった。
 
シーガル その結果として、北朝鮮は核爆弾一、二個分のプルトニウムを持った。やがてそれは、八個から一〇個分になった。そのうち一個は実験で使われたから、七個から九個に減ったわけだ。そこで、誰でもこう言うようになった。核兵器を廃棄させたいと思うなら、交渉しなければならない、ほかに道はない、と。それがうまくいく時もあるが、交渉しようとしても、うまくいかなかったのがイランだ。

松尾 つまり、キッシンジャーのアイデアをブッシュ大統領が買った、ということか。
 
シーガル そこまでは分からない。だが、たぶんキッシンジャーのアイデアだと思う。なぜなら、核問題に取り組む唯一の道は、より大きな安全保障の枠組みを北朝鮮に与えることだ、というのがキッシンジャーの考え方だからだ。北朝鮮の安全保障問題は、対米関係が主だが、地域的な文脈もある。韓国との「和解」は別にして、彼らは中国に頼ることができないし、信用もしていない。ロシアとの関係も、以前と同じではない。ご承知のように、日本との関係は歴史的な重荷を抱えている。
 だから、北朝鮮の安全保障は、地域的な枠組みの中でしか保証されない。そして一九八八年以来の北朝鮮の政策は、三つの旧敵国、つまり米日韓に働きかけて、彼らの言う「同盟国」に変えることだった。それは一九八九年に始まり、金丸信(自民党衆議院議員)と金日成主席の会談、そして一九九一年の南北基本合意を生んだ。先代ブッシュ大統領への働きかけは、一九九二年一月、ニューヨークでアーノルド・カンター国務次官と金容淳朝鮮労働党書記の高級会談を生んだ。
 松尾 そして今回、先代ブッシュ大統領ともつながるキッシンジャーが、再び顔を出したわけだ。
 シーガル ブッシュ政策の変更には、昨年十月十日の、キッシンジャーと胡錦濤の北京での会談、十月三十一日のヒル国務次官補と北朝鮮側の北京での協議を行い、BDA(バンコ・デルタ・アジア)銀行の問題を解決するメカニズムで合意、そして、二〇〇七年一月のベルリンでの二国間協議での取引--といった証拠をあげることが可能だ。今度の突破口となったベルリン会談はライス国務長官が賛成し、ブッシュ大統領のOKをとったのだ。 
 しかし、振り返ると、二〇〇五年九月、六ヵ国協議で共同声明が、小泉首相も、韓国も、そして中ソも望んで、米国が完全に孤立したかたちでまとまったとき、当時まだ力を持っていたチェイニー副大統領をはじめとする右派・ネオコン連中は、面白く思わなかった。そこで何が起きたのか。事実上、米国は声明を受諾するが、ただちにそれに背を向けることになった。
 いまでは偶然だったことがはっきりしているが、その六ヵ国協議の最中に後ろ向きの動きが起きた。九月十五日に、米財務省がBDAの制裁に自らの判断で踏み切り、これをネオコンが利用した。そしてヒル次官補は、ワシントンから強制され、北朝鮮に原子炉を提供する手段であるKEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)の廃止を告げる声明を読み上げた。
松尾 ネオコンの上に乗ってきたブッシュ大統領はなぜ気を変えたのか。
シーガル 私は常にこう言ってきた。ブッシュ大統領を強硬派だと思い込んではならない、と。彼は、本能的な金正日嫌いだ。だが、北朝鮮に関して政権内で起きていたのは、強硬派が大統領を一つの方向に押しやり続けたことだ。時にはパウエル前国務長官などの話し合い派が、大統領を別の方向に押し、パウエルが望むことを大統領がすることもあったが、そうなるとチェイニー一派が押し返し、元に戻してしまう。北朝鮮に関しては、これがたびたび起きたのだ。つまり大統領には心が二つあって、あっちへ行ったりこっちへ行ったりする。
 
松尾 なるほど。
 
シーガル 大統領はレジーム・チェンジを望んでいると、誰もが思っていた。だが、大統領は早くから、韓国と中国にはその気がなく、日本の小泉首相も望んでいないことを知っていた。大統領の基本線は、「外交的解決を望む」という決まり文句だった。その外交的解決とは、何を意味するのか。強硬派にとってそれは、五ヵ国をまとめ上げて、みんなで北朝鮮に脅しをかけ、核兵器を無理やり放棄させることだった。だが、うまくいかなかった。小泉首相は、制裁を望まなかった。常に制裁に抵抗した。国会が制裁する権限を採択すると、彼は立ちあがって、刀は持つべきだが、それを抜くべきではない、と言った。そして韓国も中国も、制裁を実施する気は全くなかった。つまり、外交的解決という決まり文句には、パウエルも賛成できるし、強硬派も反対できないかたちでついてきた。
 いま重要なのは、ブッシュ大統領にとっての二〇〇七年夏の状況だ。民主党はいま対中貿易を巡って大統領を叩こうとしている。労働組合が面白く思っていないからだ。中国の人権問題でも、大統領にかみつきつつある。イラクの失敗の陰で表に出てない状況だ。
 
松尾 常に中国との関係を優先させる父ブッシュ以来の対中協調路線を守るためにも、北朝鮮との交渉の加速に切り替えたということか。
 
シーガル そのとおりだ。キッシンジャーが、なぜ北朝鮮問題に関して大統領と話をしたいと思ったのか。答えは、彼がニクソン訪中以来深く関わる中国だ。その意味で今度のブッシュ大統領の決定の出発点は、中国との協力路線を維持し、対中政策が危機に陥らないようにするとの選択だ。この決定は、アジアにおける緊張と敵意の増大を回避するためのものだ。その中心にあるのは、五ヵ国が協力して北朝鮮との取り決めを作り出すことだ。
 なぜそれが、ブッシュ大統領にとって重要なのか。もし北朝鮮との取り決めができなければ、道は悪化をたどり、日中間のライバル関係を激化させるような方向に日本を駆り立てるだろう。それは、米国の安全保障上の利益にならない。われわれの狙いは、中国を協力的にさせることにある。
 そして、いまのところ、この政策は機能している。対中外交はブッシュ外交で唯一成功している外交政策と言ってもいい。それに協力することは、中国にとっても利益になる。なぜなら中国は、経済発展のために、平穏な二〇年間を必要としているからだ。中国は軍事力を背景に周辺諸国に圧力をかけるだろうと論じる人が日本にも米国にもいる。しかし、逆に静かに振る舞い続けるほうが得策だと中国は考えるだろうと見ることも十分可能である。
(その2)へ続く


慰安婦決議案、米下院外交委で可決

"来月本会議採択へ-謝罪要求、安倍政権に痛手" 

【ワシントン26日時事】米下院外交委員会は26日(日本時間27日未明)、第2次大戦中の従軍慰安婦問題に関する対日謝罪要求決議案を賛成39、反対2の大差で可決した。これを受け、ぺロシ下院議長(民主)は初の本会議採択を目指す方針を表明。共和、民主両党に支持は広がっており、7月中の採択が濃厚となった。法的拘束力はないが、採択回避を求めてきた安倍政権には外交上の痛手となりそうだ。
 決議案は日系のマイク・ホンダ議員(民主)が1月末に提出。旧日本軍が若い女性を「性的奴隷」にしたと非難した上で、日本政府に公式かつ明確な謝罪のほか、教育の徹底などを求めている。採決前にラントス外交委員長らの提案で一部修正され、「首相が公式の謝罪声明を出せば、これまでの声明の誠意について繰り返される疑問の解決に役立つ」との文言が盛り込まれた。

追い込まれる日本… 

米ヒル国務次官補の電撃訪朝に最も衝撃を受けたのは日本であろう。ヒル氏の訪朝は滞っていた6者会談の合意を早く履行するためのものであって、朝鮮半島の非核化と東アジアの安定と平和をつくるための大きな前進となる喜ばしいニュースのはずである。

しかし日本はそうではない。ヒル電撃訪朝に安倍首相らは「時期尚早」と不快感をあらわにしている。6者会談の参加国であるにもかかわらず朝鮮半島の非核化と東アジアの平和にはなんら関心をもたず、ただひたすら政権地盤を固めるために"拉致"問題をこじらせている日本。

日本の立場は想像以上に追い込まれている。02年に訪朝した小泉総理と朝鮮のあいだに”賠償金は3兆円”という密約があったと韓国中央日報が報道した。日本からすればそこで手を打っておくべきだったのであろう。

ここからはまったくの推測になるが、02年の小泉訪朝は米国を無視して突然行った小泉ならではの奇策であったろうし、朝鮮の立場からもブッシュ政権発足以降つよまる強硬政策をけん制するために開かれたと思う。

したがって3兆円も現金ではなく10年間の労務、つまり開発を無償で日本のゼネコンが行う日本にとっても大きなプラスをもたらすものであった(中央日報)。 しかしそこに待ったをかけたワシントンのネオコンとそれ忠実な右翼政治家たちによってその約束も反故にされた。その流れに乗じて政権をとったのがまさに安倍である。

朝鮮はもう日本を交渉の相手とみなしていない。"日朝国交正常化"の相手を米国と見ている。吉田康彦氏が朝鮮の高官から聞いた話によれば、”朝鮮は日本を相手にしていない。米国が動けば日本もすぐうごく。"と認識しているようだ。賠償金の金額の交渉も米国とするだろう。

最近南北鉄道連結でロシアが技術支援を申し出えいること(東亜日報)や、朝鮮がインフラ整備にEUの企業を誘致している事実から見ても、賠償金による開発の利権も日本にはわたらない。1965年の日韓条約は米国の軍事同盟強化の為に子分同士のてうちをさせたもので、有・無償資金と民間借款を合わせて6億とういう当時では考えられない巨額は"援助"が行われた。

米朝主導で賠償金問題が解決されるのであれば3兆円を上回る金額を支払わなければならないであろう。

まさに年貢の納め時である。02年の条件で手を打てたのにもかかわらず日朝ピョンヤン宣言を事実上反故にし、それを利用し政権を獲り、いまもなお支持率低下の歯止めに拉致問題をこじらせる安倍。

日本に利権なしの巨額な賠償金を支払いを求められる。『「時期尚早』どころの問題ではない…

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