雲ノ平へ アーティスト編
雲ノ平へ アーティスト編
みんな忘れてる頃だと思いますが、実はぼく、アーティストインレジデンス(AIR )で雲ノ平山荘に行ってたんですね。( 何より自分が忘れてた。)
今年2022年の3年目となり、計7組8名のアーティストが参加してるのですが、それぞれ滞在期間がずれてはいるものの、ぼくは3人のアーティストと時期が重なっていたので、会うことが出来ました。
3人ともそれぞれ、素晴らしい方々でしたね。これまたごく個人的な印象ばかりですがタラタラと書いてみました。
シキチさん/ダンサー
ハードスケジュールの中4日間だけ滞在して作品制作して行ったシキチさん。ここに来る2日前まで海外にいて、下山したらまたすぐに海外に行かねばならいという多忙な方。
1日も無駄には出来ないせいか、登山未経験ながら折立口から7時間くらいで雲ノ平山荘に到着したとのこと。実はぼくと同じバスで折立に到着してたのに、雲ノ平山荘に着いた時間は約24時間くらい差があったようで、さすがダンサー?身体能力の高さか、根性か、とにかくすごい。
ところどころダンスを見させてもらったのですが、自然の風景の中でしとやかに踊ってる姿は、とてもきれいだった。雲ノ平の山々と同様、ずっと見ていられる。カメラマンと追いかけっこしてるようなカメラワークもあったりして、どのような映像になっているのかもとても楽しみです。
ハトさん/コマ撮り実写アニメーション
ムラック、という名前の人形が雲ノ平山荘付近を大冒険する、コマ撮り実写アニメーション作品?を作っていました。
雲ノ平でやることが明快で、晴れの日も台風の日も、毎日ちゃくちゃくと制作を進めていたハト。とにかくアーティスト!って感じの独特なキャラクターで、しかもエンタメ感あって、いつも明るいハトにみんな癒されてました。
ムラック[mrak]。チェコ語で「雲」という意味。きっと雲ノ平の雲なんだろう。
一コマ一コマ、ムラックをゆっくりと動かしながら、物語が出来てくるのを部分的に見させてもらったけど、とても労力がいる仕事、というのはすぐに忘れてしまうほど、動いてるムラックのかわいさに惹かれる。全体通してどんな物語になっているのか、完成が楽しみです。
シゲタさん/カメラマン
メチャクチャ真面目な部分と、恐ろしくふざける部分と、その両極端を行ったり来たりしてるとても面白い人。しかもぼくと同じ部屋だったので、一緒にいる時間が長くて楽しかった。
「す」という言葉で全てを伝えようとしてくるので、朝の挨拶も「す」だったりする。すれ違う時もす。もちろん寝る時もす。
基本的には滞在中、光を待っている感じで、狙ってない光の時には全くカメラを持たずに、本を読んだり、じっと考え事をしてる姿が印象的でした。とはいえ人と話すとガハガハと笑うし、おそらくとても気遣いの人。
大判カメラでの撮影で、どんな写真を撮ったのか現像するまで分からないので、誰よりも完成作品のイメージが見えない!
過去作品の写真集がとても素敵だったのもあって、完成がとても楽しみです。
ダイトウさん
昨年のアーティストインレジデンスの参加者のダイトウさん。主に木炭を使った作品を制作していたようで、丁寧な描写で風景を描いてるのだけど、独特な世界観ですてきでした。
今年は制作ではなく「自分の作品が雲ノ平山荘に飾られてるから見に来た。」と言って4日間、遊びに来た様子。
ダイトウさんの制作現場には立ち会ってないけど、とても真摯に制作に向き合ってるのが話を聞いてて分かるし、人付き合いではものすごく人懐っこいところもあって、魅力的です。
と、いうことで、今回のアーティストインレジデンスでは残りの3名の方にはお会い出来ませんでしたが、来年辺り開催される展覧会か、下界でのワチャワチャ会でお会い出来るのを楽しみにしてます。
あと!こちらはアーティストではないですが、ずっと記録用の写真を撮ってくれていた2名のカメラマンもチラリ紹介。
アカサビさん/記録係カメラマン①
優しさと厳しさを兼ね揃えたような、みんなから頼りにされてる人。ムードメーカー的な存在。
着いてすぐの時はご飯時なんかにちょっと話しづらい感じになっても、アカサビさんが話を振ってくれて、輪に入れてくれてとてもありがたかったです。反面仕事の時はバシッと厳しい顔を覗かせたりもして、いずれにせよ常に人のことを気にかけてくれてる、優しい方です。
そして、業界に近い人で、とにかく経験値が高い印象。
アオレンジャー。アカサビだけどアオレンジャー。
モリタさん/記録係カメラマン②
以前雲ノ平山荘で運営スタッフとして働いていて、その後記録係のカメラマンとしてここ数年滞在している。
とにかくいい男。
僕の好きな映画「ノスタルジア」のロケ地巡りをイタリアに行ったがあったり、その監督のタルコフスキーのフランスにあるお墓に行ったこともあるなど、個人的にかなりジェラシー。
カメラマンとして記録だけでなく、作家活動もしていてそれらの作品も素敵でした。
記録係カメラマンのお2人。
いつも2人で夜遅くまで編集作業などされてます。
このブログでもお二人の撮った写真をかなり使わせてもらってます。ありがとうございます!
はい!
以上アーティストインレジデンス参加アーティスト+αの方々でした。
٩( ᐛ )و
雲ノ平へ 学者編
雲ノ平山荘に滞在していた学者の方々です。
「サイエンス・ラボ」と題して雲ノ平山荘に学者の方々を招いて、これから色々はじまりそうな気配。今は雲ノ平山荘に学者の方々を呼んで、自然×科学にどのような可能性があるのか、というところを模索している段階のようです。きっと。
とにかく今後が楽しみ。
大石侑香さん
神戸大学大学院国際文化学研究科
文化人類学者で、西シベリアの少数民族・ハンティの文化の研究をしている。
調査に当たって実際に彼らと長期間生活をともにしいるらしいのだけど、その話がどれもぶっ飛びすぎてて、いつまでも聞いてられる。
大石さんの飄々とした笑顔の裏に、シベリアでの壮絶な経験を感じざるを得ない。
みんな大好き、大阪のミンパクこと国立民族学博物館 学術資源研究開発センターで特任助教もやられている大石さん。
衝撃的だったのが、雲ノ平の電波の入るところで休憩中に突然「買う買う!その値段なら買う!」って大石さんが電話ごしに言い出して、とにかくそんな「ノリ」で買ったなにがしかが、これからミンパクで展示されるそうな。
温泉に行った時の大石さん。ちなみに入ってるのは冷たい川。すぐ傍らに温かい温泉が出てる。
動きが野生的でかっこいい。
こちらは大石さんの滞在中にやってくれたイベントで、スライドショーでシベリア滞在中のことなど紹介してくれた。
マイナス30度の雪原を、トナカイ3頭と荷物の乗ったソリで80kmを移動中、1頭のトナカイが動かなくなって、残りの2頭もすぐに走るのをやめてしまった。つまり絶望的な状態ですね。
トナカイには道が分かるようだけど、大石さんはもちろん分からない。残り50kmほどある中、だいたいの方向を、自分がソリを引いて歩き、本当に偶然、現地の村人と遭遇して、一命を取り留めたという。
他にも聞いてると、大石さんなんでまだ生きてるんだ、っていうほど危険な目にたくさんあってて、その話を聞いて以来見る目が変わってしまうのも無理はない。
単純にシベリアの少数民族の村に何度も滞在してるので、現地の日常的な話を聞いてるだけで面白い。
そしてそれらの話を飄々と話し続ける姿もとてもすてきです。
田中信行さん
特定国立研究開発法人理化学研究所 生命機能化学研究センター 上級研究員
通称、ヒゲ。
ある日の朝食後に「皿洗いの化学」と題して講義。
科学的な知見から、皿などについた汚れを落とすとはどんなことかを学びました。皿洗いなどで普段当たり前にやってることにどのように科学的な根拠があるのか、意外な発見もあって楽しかった。
とにかく明るくて冗談を交えながらも、しめるところはしめる!みたいな話し方で、いい先生感が出まくってました。
大石さんと田中さん。下山の日。
二人とはここに来る時の富山→折立間のバスも同じで、何も知らずに薬師沢小屋で一緒に朝ごはんを食べて、気付いたらお互い雲ノ平山荘に滞在する仲間で、同じ時間滞在してたし、日々仲良くなっていったので、寂しいお別れでした。
これは田中さん、大石さん、妻とぼくの4人での、高天原温泉からの帰り道。天気も悪くなってきて、無事帰れるか心配なところで2人に遭遇して、とても心強かった!
古川不可知さん
九州大学 非核社会文化研究院 文化空間部門講師
学術資源研究開発センター・機関研究員
みんな肩書きがたくさんあるのでこれでいいのか分かりませんが、古川さんもみんな大好きミンパクで働かれてたこともあるそうです。
基本的に脱力系の古川さん。この時もおそらく脱魂して、肉体だけがそこに存在しているような状況かと思います。きっと。
そしてこれが入魂時。自撮りの申し子古川不可知、降臨。
この日はネパール滞在時のお話をスライドショーで聞かせてくれました。大石さんと同じく少数民族の村に何度も行って現地の人と同じ生活を志す、というフィールドワークをやられているので、とにかくここでしか聞けない話ばかりだし、面白かったです。
このスライドショー、雲ノ平山荘の登山客の方々も参加されてたのですが、常にいろんな人が質問していて活気がありました。
「シェルパと道の人類学」という分厚い本を出されています。
古川さん、下山の朝。
「ぼくは人間嫌いなんで」と何度も言ってたわりに、みんなから好かれるようなキャラクターだし、色々いじっても相手してくれて、とても良い人。
そんな古川さんの教え子、タイラさん。
雲ノ平山荘の日々を楽しんでいた様子。
と、いうことで、以上サイエンティストのみなみなさまでした。
個人的にはここまで学者の方達とディープにお話しさせてもらえる機会もないので、とても刺激的でした。
ぼくが雲ノ平山荘で描いた「かつて雲ノ平にいた動物たち」シリーズを作るきっかけになったのも、古川さんのスライドショーの中で現れたイエティがきっかけになっているし、他にアーティストとの化学反応もあったのではと思います。
今後雲ノ平山荘で「サイエンス・ラボ」と題して、サイエンティストがどのように活躍するのか、とても楽しみです。
٩( ᐛ )و
雲ノ平へ スタッフ編1
雲ノ平へ スタッフ編1
2週間、超絶お世話になったスタッフの方々です。
みなみなさまが日々笑顔で接してくれたおかげで、個人的にも最高の雲ノ平山荘滞在になりました。
ということでごく個人的な印象ですが、スタッフの方々についてつらつらと。
アサミさん
別名厨房長。いつも最高に美味しいご飯を作ってくれてありがとう!ございました。ご飯大事。アサミさんがいる年に来れて良かった。
( もちろんご飯はスタッフのみなみなさまが使ってくれています。)
美味しいご飯を作るだけじゃなくて、キャラクターも最高です。厨房にいる時はものすごいオーラで時に近付き難い感じさえありますが、それ以外の時は自称宇宙人も納得の不思議な人。また早くご飯食べたい!
(ぼくの下山前日にこのピンクのお菓子作ってくれたのが最高に嬉しかったです。 )
ヨウコさん
どっしりとした優しさで雲ノ平山荘を支えるヨウコさん。下界でもアサミさんとマブダチとのこと。忙しい時でもいつも心に余裕がある感じで、個人的にはとても頼りにしてました。
この笑顔。ありがとう!
トモエさん
雲ノ平山荘初年度とは思えないほどのベテラン感。
いつもどこか遠くを見てるような人。休みの日になると一人寝袋を持って山の深いところで寝たりしてる。都会から離れて山に一人になりに来てるような背中が印象的でした。
サオリさん
ぼくと同じ誕生日で同じ干支なのに、12歳若い。
いつも登山客の方々と楽しそうにフランクに話してる姿が印象的です。友達来たのかな?と思ったら普通にお客さんだったりして、見ているこちらも楽しいです。
彼氏がウーバーイーツのカバンの中にお菓子を入れて、雲ノ平山荘に来た話がステキすぎる。
とにかく「上でも、下でも」楽しんで生きてる感じがとても良かった。
スタッフ編2へつづく…。
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雲ノ平へ スタッフ編2
雲ノ平へ スタッフ編2
ワダさん
二朗くんのおさななじみで、もう何度も雲ノ平山荘に来ているベテラン勢。実際山歩きもとても早い。下界にいる時は筋トレしているらしく、みんなで歩く時はよく誰かのカバンを持ってくれるらしい。
ワダさんはわりと寡黙な人で、始めは声をかけづらかったですが、話始めるとすぐにとても暖かい人だと分かる。一緒に下山させてもらえて楽しかったです。
タカオさん
タカオにさんは付けたくないけど、みんな統一してさん付けにしてるので付けてみる。(以下、タカオ )共通の知り合いもいて、ぼくの作品もとても気に入ってくれてたりで、初日から質問攻めしてくれて嬉しかった。
タカオとは何度か創作のことや雲ノ平山荘のことなど、夜遅くまで話した。タカオが真面目なので意外と下らない話は少な目だった気がする。とにかく思考するのが好きだけど、非常に人間味もあって、いい男です。
ナツイさん
ただの海沿いパーティーピーポーなのに調子に乗って山に登ってもウェイウェイしてたら場違いだった、的なナツイです。下山前日は深夜1時くらいまでお酒付き合ってくれたいいやつです。
「自然しかないと思って山小屋に働きに来たら人間関係しかなかった。」は名言。実際ほんとそうなんだよなぁ…って話は置いておいて、とにかくマイペースなナツイがいてくれて、個人的には癒されました。一緒に働いてるスタッフからしたらどうか分かりませんが。笑。
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雲ノ平へ 小屋主編
雲ノ平へ 小屋主編
雲ノ平山荘の小屋主といえば、山好きならきっと誰しもご存じ、伊藤二朗。あの「黒部の山賊」の著者であり、70年前、黒部の険しい道を切り開いた伊藤正一の二男。
二朗くん。
10年ほど前に、共通の友人である大野慎矢を介して知り合う。その時はまさかこんな面白い人だと思ってなかった。最高に面白い人でした。
二朗くんについて知らない方は、まぁ知らないままで良いでしょう。
ぼくもほとんど何も知らないですが、ただ、まだまだこれから先も見続けていたい人であるのは確かです。
この動画、宮台真司と語り合う二朗くんの姿は衝撃的だった。
宮台真司と「普通に」話せるような友人が周りにいたなんて。。
内容も素晴らしいので始まりだけでも、お時間ある方は是非見てみてほしいです。
鷲羽岳山頂にて。
二朗くんと一緒に山を歩いていると、なぜだかとても楽しかった。ぼくがゼーゼー言いながら歩いている目の前で、ポケットに手を入れて軽やかに山を登っている姿が印象的でした。
妻の麻由香さん。
も、以前からの友人。
雲ノ平山荘に着いて顔を見た時、嬉しくて泣きそうになった。
今回アーティストインレジデンスに参加させてもらって、42年の中でも最高に印象的な2週間でした。ここでの経験は、今後の作家人生にも大きな影響を与えてくれると思います。
二朗くんに感謝。
ここからなにか、新しく始めたい気持ち。
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