令和7年の経営所得安定対策事業の説明会 要諦
今回の事業説明会での要諦は、以下の通り。
*令和7年、令和8年は、水張り要件を緩和し、地域水田協議会が設定した「連作障害緩和策」を水張りしたものとみなすようにしたこと。
従って、
令和7年、令和8年は、水張りしなくても地域水田協議会が設定した「連作障害緩和策」を実施するか、水張りのどちらかを実施すれば、交付対象面積からの除外がなくなる。
水張りと連作障害回避策のどちらかを実施しない場合、令和7年、令和8年は、交付対象面積のままだが、令和9年では、交付対象面積から除外される。
*令和9年からの政策は、水田に対する交付金から作物に対する交付金にシフトする予定で詳細についてはまだ決めていない。
§水張りするか、連作障害回避策を実施するかの選択
曲者が連作障害回避策の中身だが、一応説明会では、一つの例として堆肥を使うものがあった。ほかにも何点かあった。
連作障害の回避策については、いずれ水田協議会が内容を具体的に示すものと思われるが、国家公務員(農水省の役人)が言っていたのは、
「水張りしなくても水張りに相当する何かをやってくれ」だった。
§令和9年度から農業政策が抜本的に変わる?
すでに畑地化したところがある。その扱いは、おそらく令和9年からの作物に対する交付金対象面積に含まれないことになるはずだ。
そうやって畑地化したところは、登記が水田のまま交付対象面積に含まれないようだ。
説明会資料によると畑地化し水田は、48000ヘクタールだった。
そのような農地は、今後も交付金対象から外したから政府としては、農業予算が同じ規模でも残った交付対象面積に交付金を配分できることになる。
畑地化による交付対象面積からの除外で農業予算がどれだけの効果をもたらしたのか、まったく公表していない様子だ。
産地交付金という補助金の枠は、令和9年度以降、おそらくは、水田とか畑の違いを区別せず作物ごとに行うらしいから産地形成の事業として交付対象面積から除外したところを除外のままにしてやるということは、資料にもあるように日本全国で48000ヘクタールは、最初から除外されるのだろう。
念のために言えば、畑地化した水田は、5年間決めた作物を作り続ける必要がある。産地形成に役立てられる要素があるわけでそれを交付対象面積から除外したままにするというのは、何と言ったらいいのか、農業政策の費用対効果の面で何が向上するのか不明だ。
恐らく、縮小した交付対象面積に単位面積当たりの予算を増やせることだろう。
§説明時間
13時半から初めて14時半少し経過した程度。
毎回、立派な冊子のようなものをもらうが、説明に使っているものは、A4の用紙に要点を抜き出したもの。
場合によっては、あちこちに説明箇所が飛ぶものもあった。
文字も小さいし、プリント用紙の一か所をホチキスで止めたものは、何かと読みにくい。
それなら冊子のようなものに全部書いておけばいい。冊子に要点と細かなものとを区別すれば、1冊で説明を読める。
§水張りの場合の申込書が同封
水張りは、実施1週間前に提出だとか。1か月以上の湛水。湛水の物理的条件は、よくわからないが、水田同等の水を突っ込む作業をやればいいような感じだと思える?
現在、畑地化の要望は、取り下げていないが、そのうち取り下げることになりそう。
水張りも可能だが、やるなら、従来のような溝を掘ってアスパラ畝が浮いたように水をためる方法になる。
これをやるには、畝の両端をディスクプラウなどで囲って水がたまりやすくする必要がある。それをしないと枕地がべちゃべちゃでトラクターはやめたほうがいい。今までの経験だと、3時間くらいで満杯になり、水を止めて別の畝にやると2時間もしないうちに水がほとんど消える。水閘管から水が垂れ流しの状態だから、それを超えるくらいの水量が求められる。欲しい水量は、水稲屋よりも多いんじゃないかな?
ついでに肥料の流しこみにも使える。
§アスパラと肥料
アスパラの場合、肥料が効いていると思える場面は、化学肥料の窒素が効いた時の斑点病多発くらいだ。
水張り時に収穫を同時に行えば、茎の出来具合に影響するとか、収量に影響するのは、夏秋栽培作型で確認(1.5倍くらい)したが、普通路地で水を張っての効果は、未確認(実施回数が少ない)。
水量が少ないから1日あたり多くて畝2区間から3区間(収獲中の話)。むろん、夜中にも湛水作業して。
そういうことで水張りするなら普通路地収穫終了後になるだろう。その時期なら、隣が水稲だから、水の利用も奪い合いしなくて済む感じ。
§「みなし水張り」(2025年4月26日追記)
後日談。役所の担当者に「水張に見なす施用」の土壌改良剤の施用について聞いてみた。
質問・・・消石灰は土壌改良剤だと思うがそれを散布したら水張とみなすのかどうか。
その回答は、協議会で決まっていない、と。
ふつう、消石灰といえば土壌改良剤だろうと思えるが、なぜそんなことも決まっていないのか、国のほうで示していないらしいことも言っていた。
回答のほかに役所が言っていたのは、詳細は産地づくり交付金などの受付時に提示するとか。
それでは、現時点で肥料を注文する場合に消石灰が土壌改良剤なら現時点で注文する肥料の後で注文することになるから交付金申請時以前に教えてくれと言ったら、5月の連休明けなら可能だと返答。
なんだか、農林水産省という役所の説明会では、細かな説明を堆肥とかもみ殻とかそんなものを説明しても土壌改良剤という言葉の説明が不要なように思えたから、消石灰も当然入ると思っていた。しかし、電話して確認したらまだ決まっていないと。
水張りみなし施用を出している時点で令和9年度以降「5年間の水張り要件は求めない」ことで岸田政権で決めた「5年間の水張り要件」を無理やり5年間続けている感じだ。
お役所仕事だと思える。消石灰が土壌改良材に該当しないなら水張りやってみるしかないな。---ついでに電話で畑地化の要望を取り下げた。その手続きも面倒で水路とか畔とか、写真撮って役所に提出しなければならない。
大体土地改良区のがちがちの制度を変えずに水田政策などの抜本改革をするというのは、形だけにしかならない。
土地改良区というのは、「日本の農業≒水田≒土地改良区」だから、土地改良区のような地方税相当の改良区賦課金の徴収や地区除外決済金制度や水路や道路の所有権問題などの古めかしい制度をそのまま保持しているような土地改良区は、それを大改革しなければ日本の農業政策の抜本改革など不可能だ。
それらは、要は、交付対象面積からの除外に伴う土地改良区の権利関係がやくざの手切れ金以上に面倒だという点だ。実質、隣接する他人の土地改良区内の土地であれば、地区除外はできない。
がんじがらめの土地改良区の水田が日本の農業構造の改革対象なのだが。
土地改良区の起源は、小作地主に変わって土地改良区という地主に置き換えただけの封建制時代の名残でしかない。土地に縛られ、地主に縛られて土地改良区からの地区除外が実質できない制度だ。
その証拠に土地改良区賦課金は、地方税と同じ。土地にかかる税金の体裁で水利にかかわっている権利とみなされるが、権利とは名ばかりで実際には年貢と同じことだ。しかも土地改良区から抜けられない権利関係を絡めた制度だ。そうなるのは、水路や農道が公共物ではなく、「みんなのもの」だからだ。そうなるように土地改良事業の工事費は、農家の応分負担(受益者負担)の原則を持ち込んでいるわけである。
そうやって、受益者の土地に小作地主の土地である証文を土地改良法に記載し、各土地改良区の約款だとか定款に記載しているわけである。
そんな古めかしい土地改良区には指一本も触れずに水田農業政策とか、農業構造改善とか、そんなことを言っているのだ、農林水産省というのは。
§みなし水張りーーー役所からの回答(5月12日追記)
連休明けに役所から電話が来て、消石灰や炭カルなどが水張りとしてみなされるものになったと聞かされた。
ついでに湛水を聞いてみたが、協議会のほうで現地確認するらしく、それに合わせて水張りしていなければならない様子だ。たぶん、同じ畝の部分の湛水状態を見るものだと思えるが、具体的には不明部分でもあるらしい。
水張とみなし水張りについては、全体的に国がこだわっているのが連作障害対策。
どんな根拠なのか、ある程度分かるが、水張りを水稲作付けしなくてもいいようにしてから連作障害対策としてのみなし水張りそのものの施策の価値を考えると、なんか馬鹿馬鹿しいものに思える。
肥料注文時点ではっきりしてないから消石灰などは注文しなかったし、すでに萌芽前に肥料を散布したから、収穫終了後に消石灰などの注文と散布作業ということになる。
手間を考えると、行政相手の農業だからだろう。交付対象面積からの除外を受けないようにするための手間と考えるしかない。
行政相手の農業といえば、コメの価格高騰の責任が農林水産省の毎年のコメの作付配分にあると言える。
ぎりぎりまでコメの作付けを削り取れるだけ削って、作況指数100にこだわり、一等米比率の高温による低下を考慮しないコメの流通を推進してきた農林水産省の社会的な責任だろう。
こだわる点は、連作障害というのもそれだ。