一般人には知られていないだろうが、国営農地開発事業というのがある。その事業で農村の浄水場も作ることもできる。
そういうわけでここの農村には市による水道ではなく、その事業で作った浄水場があるわけだ。一応市のほうでも関与しているらしく、浄水場の掃除には2人が応援に来た。
掃除とは、水槽の中の砂を洗うことなどだ。
以前はかなりきつい仕事だった。水槽内の隅の上っ面をスコップですくって、外に出して砂を水で洗い、洗った砂を元に戻すというものだ。
何とも原始的でばかばかしい仕事だ。水道など市に全部移管してしまえばいいのだが、農村というのは自分たちのために作ったものを保持したいようだ。
何しろ、いつものことだが、そういう施設にはちゃんと組合のようなものがあり、ちゃんと役員がいるのだ。役員には役員手当、そして、こういう仕事に出れば日当をもらうわけだ。といっても安いというのが実感だ。
あまりにもきつくて、数回でなかった。そんなやり方だから出る人間が減ってしまい、砂の洗い方の変更を余儀なくされたようで、今回出てみるとポンプで送水された水で水槽の中で砂を洗うものになっていた。
ある程度の水圧、それで水槽内で砂の中にパイプを突っ込んで「砂を洗う」というものだ。
ちっぽけなやり方だが、そんなやり方でいいということらしい。
掃除は浄水場施設内の水槽の砂が大部分だが、取水口のほうでも掃除する。
取水口がこれまたもっと山のほうに作られている。川底に取水口があり、小石によって敷き詰められている。その小石をスコップを差し込んでこねくり回してきれいにすることと、取水口にも水槽があってそこもポンプ送水で掃除するものだ。
施設を作るとき、どうして機械を使って掃除するようにしなかったのか不思議でならないが、何とも農村的だ。
農村というのは世間にあまり知られていないようだが、こうした組合的なものがいくつもある。頭数が少ない割には。
ロートルばかりで人手不足というのは農村では特によく表れている。