この映画のキャッチコピーの「また2分。」めちゃ秀逸。
<ドロステのはてで僕らは>を見て記憶している人だけがわかる「また2分。」。
そして、貴船ふたたび。
演劇がすべてストップしたコロナ禍で、ヨーロッパ企画は新しい試みをしていた。
ワンカットワンシーンで、演劇を生配信していたのだ。
30分もない芝居だったが、入念に準備した導線は、演じながら、撮影しながらドキドキしただろう。コンマ1秒でも遅れると、すべてが台無しになる嵐電の中と外で芝居をしていたのだ。
その第2弾が、貴船の<ふじや>で撮影され、
この映画も、おなじく<ふじや>が舞台。
旅館ではたらく従業員と客が一同に、タイムループを経験する。
ループするのだが記憶はしっかり残っている。
ループ期間が、きっかり2分。
なんで時間がループするの?どうなってんの?
混乱するお客様にまずお知らせしなきゃ、
事態を把握するため次のループでは、○○さんは、次はXXしてと、
ループしながらも登場人物たちの物語は進んでいくのがおもしろい。
同じ時間をループするということは、やり直しができる。
2分間のあいだに壊れたものは、元に戻るし、死んでも生き返る。
やり直せるから、試してみる人、
無限とおもわれるほどある時間の中で一休みする人、
今までいえなかった思いを伝える人、それぞれ。
登場人物みな記憶を保持したまま時間だけが繰り返されるの、おもろかった。
貴船の景色が雪で真っ白になったかと思うと、
雪がなくなり苔が鮮やかな時もあり、
本来なら時間軸がつながらない撮影条件なのに
「タイムループのせいで、世界の時間軸がくるってる」の一言で、片付けているのもおもしろかった。
ループしている2分間は、ワンカットの長回しだし。
コロナ禍の挑戦がちゃんと活かされている。
挑戦的な人たちで、好感持てる。
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2023年
原案・脚本:上田誠
監督:山口淳太
撮影:川越一成
出演:藤谷理子、永野宗典、角田貴志、酒井善史、諏訪雅、石田剛太、中川晴樹、土佐和成、鳥越裕貴、早織、久保史緒里、本上まなみ、近藤芳正