舞台 井上芳雄による『夜と霧』〜苦しみの果て、それでも人生に然りと云う〜 | 気むずかしい いろいろ

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2016年「エリザベート」を博多ではじめてみて、感激したところ、

大阪公演までの間にリーディング会があることを知り、

急いでチケットを買って、仕事をさぼって観たこのリーディング会。

 

「夜と霧」は、ユダヤ人、ヴィクトール・E・フランクルの

ナチスの強制収容所の経験をまとめたものである。

ヴィクトール・E・フランクルは、心理学者である。

収容所での生活中、この苦難の意味、生きる意味を客観的に考え答えを求める。

ナチスを非難するのでなく、神に救いを求めるわけでなく、

ただただ、人間の本質を見つめる。

自分の内側を見つめる。

 

生きる希望を見失わず、出口のない地獄の中、

非収容者と収容者の内面を見つめて思考する。

 

とても素晴らしいリーディングで、

この後、いろいろと思考が止まらなかったのを覚えている。

 

 

観たのはBS衛星劇場で2014年に新潟りゅーとぴあ主催で公演された映像。

DVD化はされていないが、CDは発売されている。

会場で購入して、もう何度も聴いた。

 

リーディングは、舞台観るよりも集中力がいる。

落語よりも集中力がいる。

だからこうやって、放送してくれるのはありがたい。

表情をちゃんと観ることもできるし。

 

本を読んでいるのに、歌っているかのような語り。

大粒の涙を流し苦悩の場面を読み、

かすかな微笑を浮かべ、苦難の中での希望を語る。

リーディングもうまい。

涙がボロボロとこぼれてくる。すごかった。

 

井上芳雄はクリスチャンで、

父親は心理学者だ。

井上芳雄はこの本をながく大切に読んでいると言う。

 

勝手に想像するに、若くして座長でいた孤独と重圧に苦しんだ時があったというから、

その頃に、自分の気持ちを整理するのに読んでいたんじゃないかなと。

 

まだ原作読んでないけど、これ読むの神経削られるだろうな。

 

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原作:ヴィクトール・E・フランクル/ 池田 香代子 (翻訳) 「夜と霧」(みすず書房)より
出演:井上芳雄 
演奏:廣川抄子(ヴァイオリン)、大田智美(アコーディオン)
上演台本・演出:笹部博司
音楽:宮川彬良