金子さんとの対局(後編) | 神尾 亮の「麻雀のような人生に人生のような麻雀を」
(前編はこちら)





東1局。

私の親番。


並びは、東家から神尾、客A、金子p、客Bという並びである。


ドラは9m


金子さんはさっそく序盤の数順でソーズをバタバタと切り始めた。

ピンズも離している。


マンズのホンイツである。


基本的に私は東1局は親だろうが子だろうが真っ直ぐ行くスタンスなのだが、

6巡目に次のようなテンパイをした。





ソーズの待ちが素晴らしく良い場況なので、


3-6sでリーチにいこうかと一瞬迷ったが、


白をツモって裏1というストーリーもあるし、


2sも山にありそうなので、4sを切って、


2sのシャンポンリーチとした。



リーチ直後、金子さんの打牌は強めに放った5s


まったく無筋の牌であり、リーチ宣言牌のマタギである。


打牌の温度感からしても「いきますよ」と言っているような打牌である。


こちらとしては「待ってました」という感じである。


数巡後、金子さん6mのチーをする。


金子さんの温度が下がった。


(張ったか)


金子さんが5sを一発で切ってきているので、2sが拾えないかと思っていた13巡目。


私が引いてきた牌はドラの9m


勝負ついたなと思ってソッと牌を捨てる。


「ロン。8000。」


牌山を落とすとともに金子さんが私に喋りかけてきた。


「2sアタリだね?」


「え・・・は、はい。」


驚いて、言葉がうまく発せられなかった。


金子さんが続ける。


「2sだけは引いてきたらオリようと思っていたよ。」



金子さんは一発目に5sを切ってきているのである。


4s切りリーチに対して2-5sが危ないという話ならまだしも、

5sは一発に切って、2sは絶対に止めると言うのだ。



「え、、2sが危ないというのは、どういう感覚なんですか?」


今思えば「感覚」は失礼だった。


「感覚なんかじゃありませんよ。普通に読みですよ。」


自分がその場で理解できていないことをひけらかすことが非常に恥ずかしくなり、この場ではもう何も言えなかった。



この日の帰りにこの局について、自分なりに考えてみて一応答えにはたどりついた。


4s切りリーチといくときに私は一瞬3-6sリーチにいくか迷っているのである。


モーションとしてはこうだ。




端の2sを切ろうか一瞬迷って




4s切りリーチである。



すなわち一番端の牌を切ってもリーチに行けるのである。

しかし端から4枚目の牌を切ってリーチといっている。


これは223445からを切ったよと言っているようなものである。


おそらくそれを金子さんは見逃さなかったのであろう。




この局以降、私には一切手が入らなくなった。

どちらかというと入れられなくなったのかもしれない。



オーラス南4局。 



上家(客B):18,800(親番)

    自分:18,700

 下家(客A):30,400

対面(金子p):32,100



1000点でもアガれば3着には上がれる。

リーグ戦ではその選択もするだろう。


2着になるには、リーチ棒が出たうえで満貫ツモ条件だ。

リーグ戦ではたしかにその発想もするだろう。



しかし今日は金子さんとの対局である。


金子さんを捲らなければ意味がない。


目指すは跳満ツモだ。




オーラス開局。


ドラ表示牌が開示される。


「西」


ドラは北となった。








すぐに満貫ツモが作れそうな配牌だが跳満にするにはどうしたらよいか。



4巡目。





このテンパイをしてしまう。


2-5mでリーチと行ってしまおうかと一瞬思ったが、それではわけが分からない。


金子さんから出てくるとも思えないし、ツモったとて2着にもなれない。


奇跡的にツモって裏々になれば跳満にはなるが、

私は基本的に裏1条件はやっていいと思っているが裏々条件リーチはやってはいけないと思っている。

よっぽど対子系や刻子系の手だったら話は別だが、この手で裏々になるにはが裏ドラにならなければならない。


さて。

テンパイは取ったもののリーチとはいかなかった。


しかし2-5mを引いてきてしまったらどうしよう。


2m引きの場合は、4m切りフリテンリーチで1-4m一発ツモ裏1条件か、をツモっての裏1条件だが、

5mを引いてしまったら。。。


1mをアンカンしての新ドラ期待も考えたいところだが、上家の親がすでに4巡目に4枚目の1mを切ってしまっている。


なんとかツモって裏1条件の手にならないかと思ってダマテンを続行していたところ


10巡目に救いのツモが舞い降りる。





4mである。


これであれば、北をツモって裏1勝負とできる。


燃えるように3mを切ってリーチといった。



このリーチに対して、2着目の下家は押してきた。


もちろん眼中にない。


北が出てもアガるつもりはない。


対面の金子さんは当然の守り。


上家の親も押してきている。




リーチ後一発目のツモ・・・



1s



ダメ。




2発目・・・


2s


ダメ。



3発目・・・


9m


ダメ。



4発目・・・


1s


ダメ。



5発目・・・


5p


ダメ。




祈りながら牌を持ってくるも待望の牌は顔を出さない。



祈りに祈ってツモり続けた6発目



指に感じる字牌の感覚。


私は金子さんが大好きで最高位戦に入会した。


そんな金子さんとついに対局することのできた大切な一局。


そんな金子さんにずばりアガリ牌を当てられてしまった東1局。


満身創痍で何もすることのできなかった東2局から南3局。



何とか作った跳満条件




祈りに祈って引いてきた6発目・・・





南。





ダメ。



引いてこない。


次巡のツモも6s・・・ダメ。





ハイテイ。


一度もポンもチーも入っていないと南家がハイテイ牌を引く。


私は少し金子さんを意識し、ハイテイ牌をキュッキュとこすって引いてきた。




信じる者は救われる。






1p




ダメ。





終局。





私の跳満は実らなかった。



対局終了後、ぐったりした私を見ながら金子さんが何か話しかけている。



「ほれほれ」


顔をあげてみると金子さんの手には2牌持たれている。


ドラ表示牌の「西」ともう1牌は裏ドラ表示牌である。



焦点のあわない目を凝らしてよく見てみると、



そこには9mと書かれていた。




「くぅぅぅぅ、、、、、」


そうなのである。





この手、アガったら裏3だったのである。


すなわち、はじめにテンパイを取った2-5mでリーチを打っていても

裏3で出アガリですら跳満だったのである。



金子さんはニコニコしていた。


金子さんは悔しがる僕の表情が見たくてわざわざ裏ドラ表示牌を見せてきたのである。



僕は第1回モンド21杯での悔しがる金子さんとその表情を見る安藤さんの画を思い出した。






まったくお茶目な人である。


でもやはり、そんな金子さんが好きだ。


今回は全然かなわなかった。


Aリーグで待っていてほしい。