天使よ故郷を見よ | ぶっ飛び沖縄‼︎

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突然沖縄に引っ越してきました。
楽しいこと、不思議なこと大好きです。


雨の続く今頃の時期に

不彌也さんの軽井沢の別邸で

古風な朗読会が

開かれたことがある。


急な仕事が入って肝心の主人2人は不在。

集まったのは、不彌也さんや

真人( まひと)さんの信奉者の

学者や教授たち。

執事の士恩さんや勘解由 ( かげゆ )さんが

接待することに

なったんだけどね。


なんで

不彌也さん直々に

私が呼ばれたのかが

分からなかったんだよ。

別に朗読されなくても自分で読みますがな。

テキトーにナナメ読みくらいに

不彌也さんの書斎で。


男ばかりなのはいいけれど

体育会系の自衛官や警察官たちが

大勢集まっている方が

ナンボか面白いのに💧


おはぎ、ぼたもち、栗まんじゅう

豆大福、月餅、あんこ玉、芋ようかん…

今日は和菓子屋か?みたいな。

帰ろうかなぁ、みたいな。


で、集まった和菓子の中に

イギリス文学の教授

松永光彦というのがいた。

ずんぐりむっくりで小柄。

顔の割に声だけは、よく通るバリトン

人間ってどこかしら良い点があるモンよね。

お得用3色ダンゴみたいだけどさ。


まず、スタートは

士恩さんが最近読んで

好きだと言った

「 天使よ故郷を見よ 」の中の

一部分を読み上げた。


いい声なのよ。

ホント。

しかも、ドイツ人なのに

日本語が日本人より

ずっとずーっと綺麗で上品。


ちなみに

「 天使よ故郷を見よ 」

は、37歳で夭折した

アメリカの小説家トマス ウルフが

ほとばしるような情熱的な文言で

書き綴った自伝的小説。


確か、アンルイスの

歌のタイトルにも

同じのがあった。



士恩さんは

不彌也さんをサポートするために

仕方なく男爵の称号を

捨てたようなものじゃない?


と、

お得用3色ダンゴの

みっちゃんミチミチ光彦が

ポチッと言ったのが始まり。

私の印象ではケンカを売ったというか

半分くらいはヤッカミかな。


たとえ、人の事情を知っていても

言っていいことと言わなくていい事って

あると思うのよ。

しかも、さほど親しい間柄でも無く

カビ臭い学問繋がりの

ただの和菓子屋なのに

もとい、朗読会なのに💢


人の不幸話好きは

何もオンナだけじゃない。

逆に凋落貴族の落ちぶれていく話は

男たちの方が好きかもしれない。

顔はそう見えないけれど

興味津々で耳ダンボにしている様子は

手に取るように分かる。


ちょうどその時。

地下にあるワインセラーから

数本のワインを持って来て

光彦のひと言に固まっていた士恩さんを

フォローしたのは勘解由さんだった。


ちょっとお口直しに

と、ゴディバのチョコを勧め

コホン、と咳払いをしてから

キプリングの「 青い薔薇 」を

朗読したのは勘解由さん。


皆んな、勘解由さんは

東大医学部卒の

元外科医だと知っているから

ちゃんと聞いていないと

切り刻まれる?と思ったのか

居住まいを正して聞いていた。


恋人を喜ばせようと

僕は摘んだ

赤い薔薇と白い薔薇を


恋人は

どちらの花束も

受け取らない


彼女は

青い薔薇を摘んできてね

と言った


僕は 世界の半分を

さまよった

青い薔薇が咲く土地を

さがして


ラドヤード キプリング作


ここで言う

青い薔薇とは

この世に存在しないもの

ということ。


さらに勘解由さんは

軽やかに続けた。


わたくしが思うに

男爵の称号など惜しくないほど

命をかけて添い遂げる相手

すなわち、青い薔薇を

士恩さんは見つけることが

出来たのです。


堕天使ルシファーは

明けの明星というくらい

孤高に光り輝く存在です。

大天使ガブリエルと

双子だという説がありますが。

神に背き、あえて

堕ちる使命を選んだのでしょう。

強い魂でなければ

出来なかったことです。


ルシファーがいてこそ

ガブリエルが映える。

悪がなければ善が分かりません。

無知蒙昧な民衆に善を理解させるために

悪をかって出たのだとも

解釈出来ます。


わたくしには

不彌也さまと士恩さんは

ルシファーとガブリエルのように

見える時がございます。


そう言って

パタンと分厚い本を閉じる。

堂々と言い放った勘解由さんも

また、真人さんが

青い薔薇だったのだろう。


皆んな圧倒されて

身動き出来ないでいた。

光彦など、さっきまでの

傲慢な顔つきが打って変わって

ショボタレたオッさんになっていた。

まるで、食べ残しの3色ダンゴ。


私だけが

拍手をしていて

小さくブラボーと

呟いていた。



堕天使ルシファーと

大天使ガブリエルは

双子だという。


キリスト教圏では

長年の宗教論争があった。

ひとくちにキリスト教と言っても

カトリック、プロテスタントを始め

かなりのいろいろな人たちが

自分たちの教義が1番として掲げ

〇〇派を立ち上げて

相手の違いを認めなかった。


まるで

共○党かな?


ここまで来ると

分かると思うんだけど。

さまざまな解釈がある

ということ。


ギリシャ神話だろうと

聖書だろうと

書いたのは人間なんだよね。

最初はシンプルだったのが

いろいろな人たちが解釈して

あーでもない、こーでもない

そうでもない?ってやったワケよ。


その人の立ち位置や

価値観や信念や

生きていた時代背景によって

天と地ほどの違いがある。

ましてや権力を持つ人ほど

自分が正しいと主張する。


その主張が

どんなにおかしくても

どんなに不自然であっても。


五代将軍の徳川綱吉が発令した

生類憐みの令なんかは

それに当てはまるだろうね。

空気読めないというか

悪名で名を馳せる将軍の1人として

歴史的に有名人になったけど。



その夜は、男たちに囲まれて

私は一輪の可憐な薔薇だったハズ。

しかし。そうはイカのキンタ○

それが私だ。

光彦に手が出なかっただけ

私は自分を賞賛する。


私だったら、光彦のグラスに

毒を入れるくらいやる。

睡眠薬入れたワインを

ヤツをさんざん持ち上げて飲ませ

意識不明にしてからスッポンポンにして

道端に放置してやるぞぃ!

と、キッチンに立った勘解由さんの

後を追いかけ、怒り心頭に発した私の発言に

勘解由さんは、いつもの鷹揚な口調で

ゆったりと返した。


士恩さんもわたくしも

分別の無い不用意な事を口にして

主人の顔に泥を塗るような事態は

避けなければなりません。


文学には文学で

返すものなのですよ。

お嬢さま。


想像を超えて

一発で完封された気分だった。

戦わずして負けるTKO というか

TKGというか、イヤそれは卵かけご飯。

その夜は、おとなしく

不彌也さんの書斎にこもって

キプリングの詩集を

じっくり読んでみようと思った。


きっと、

今頃、不彌也さん

大きなクシャミしてんな、と思ったら

書斎の机の上に本が置いてあった😅

しかも、キプリングの

青い薔薇の伝説のページが

開いてんの!


思わず

ブルブルっと来て

ぶへぇ〜くしょい!

と、大きなクシャミが出た。


驚いたことに。

梅雨寒い夜ですから

と、士恩さんが

ストールとコーヒーを

サイドテーブルに置いてくれた。


お嬢さま

あなたさまの漢気( おとこぎ ) だけは

わたくしは嬉しく思っています

と、深々と頭を下げて来た。

す、スゲー💦

ど、ど、ドイツ人なのに

漢気って言葉を知っているぅ〜


ってか、女の子に言うか?

しかも!

翌日にムカッと来る私も私だ。


後日、私が真人さんへ

コトの顛末を話したらば

温室へ引っ張って行かれた。


ルシファーもガブリエルも

薔薇の名前にあるの。

ブルーローズの仲間なのよ。



世の中

気持ちの持ちようで

いくらでも変わるし

変えられる。


人の評価って

その人個人のまったくもって

勝手な解釈だから。

ただそれだけのこと。


政治家だって医者だって

学者だって、ただの人。

トランプだって

おそロシアの、かの人だって

いくら威張っても、いくら頑張ってみても

いつかは死ぬ、ただの人。


ついでに言えは

憎らしい姑だって小姑だって

先に?死んでしまう。

別れたDV夫だって。


どんな毒親だって

肩で風を切るのが年々難しくなった

ヤクザだってさ。

しょせん、そんなカテゴリーに

当てはまる人たちでも

不老不死なんてない。


🎵 ぼっくらは皆んな生きている

生きているから いつか死ぬ

皆んな皆んな

生きているんだ 

ただの人👦 なんだー!



天使よ

故郷なんか見なくていい。

振り返る必要もない。


今、自分が在るところで

自分だけの青い薔薇を

咲かせばいい。

それが、あなただけの

光り輝く本分なのだから。