手で皮がむける⏫
って、当たり前じゃないの？
足で剥くワケじゃないし。
と、突っ込みながら
豊見城のマックスバリュで
待ち合わせをしていた。
で、私の横で買い物カゴを下げ
品定めをする忠雄さんは
まったくのベジタリアン。
親友である
ルミ子姉さん本人の弁によると
8人兄弟の忠雄さんの
1番下の弟さんは
もっとも出来が悪かったらしい。
桃人 ( ももと ) と
祖父から命名されたのは
おメメぱっちりの、形の良いくちびるは
桃の花のツボミのようだったから。
まるで女の子のように愛らしく
体も弱かったからか
それはそれは大事にされて
大きくなった。
が‼️ 顔がいいというだけで
人生うまく行くとは限らない。
母親のお腹にいる時に
兄や姉の残りのカスしか
もらっていなかった、と
あからさまに親戚じゅうから言われて
いつのまにやらDQNになってしまう。
体は丈夫になったけれども
漢字が読めないから
当たり前だけど勉強は出来ない
人との付き合いが分からないから
トンチンカン。
早合点で短気で喧嘩っ早い。
しかも弱いから殴られ放題に殴られて
可愛い顔立ちだったのが
だんだんと顔付きも変わってきた。
他人の話を鵜呑みにして
騙された事もしばしばある。
だけど
桃人さんの唯一の味方
母親だけは
いつも優しかった。
桃人は
肋骨が足りないように
母ちゃんが産んでしまったから
桃人は何も悪くないんだよ。
いつもそう言って
ニッコリ笑う母ちゃんは
近所にも知れた美人だった。
行商しながら服を売っていた
年下の夫と一緒に
牧志の公設市場の奥にあった
古い場所に店を構えた。
仕事につけない桃人が訪ねて来ると
母親は嬉しそうな顔をして
お金を渡していたらしい。
悪事を働くよりも
ずっとマシだと言って。
兄弟からは
口も聞いてもらえないけれど
１つ上の忠雄さんだけは
桃人さんに
説教していたんだって。
でも
にいにい ( 兄さん ) の話は
難しいから分からないと笑うだけ。
ウソを付いたり、盗みをしないだけ
まだいいか、と
そのたびに忠雄さんは
深いため息をついたって。
そんな桃人さんは
23歳で亡くなった。
やっと、土木業の定職に付いて
初めての給料が出た翌日。
オレがご馳走すると母親を誘って
沖縄そばを食べに行く予定だった。
桃人さんが
初めて稼いだ給料で
ご馳走してくれるというから
母親は、オシャレをして
長い髪を結い上げた。
で、それは梅雨の長雨で
視界のよくない日だった。
大型トラックに轢かれ2人とも即死。
ひき逃げの犯人は捕まらないまま
奇しくも日本へ返還された沖縄は
念願の本土復帰をはたし
怒涛の嵐のようなドサクサに紛れ
すべてが変わってしまった。
大好きな沖縄そばを食べずに
亡くなってしまった
母親と桃人さん。
あの桃人が、本当にご馳走出来るのか
と、信じられなかった忠雄さんは
2人の後を付けていた。
轢き逃げを目撃した
忠雄さんの目の前で
小柄な母親の肩を抱くように
庇うような姿で桃人さんと母親は
体の原型を止めない姿で
タイヤの下敷きになっていた。
忠雄さんは発狂してしまい
しばらくの間、精神病院にいたらしい。
それから、
退院して来てからの忠雄さんは
肉類が一切食べられなくなっていた。
今でも、お盆になると
桃人さんは現れる。
にいにい、オレは
ソーキ ( 肋骨 ) が一本足りないのか？
という意味の
ニイニイ、ワンは
ソーキブニン、ティーチ足らんね
って、言うんだと。
するとね。
お前は、それでいい
と答えるんだって。
なんで、俺のところに
出てくるんだかなぁ
と、ボヤく忠雄さんへ
言ってみたよ。
お兄ちゃんが
説教してくれたのが
嬉しかったんじゃないの？
それに、お前はそれでいい
って、お兄ちゃんから認められるんだから
桃人さんからすれば
最高じゃないの？
忠雄さん、ずっと
泣いていたなぁ。
ナイチャーに泣かされるとは
思ってもみなかったってさ。
素直に泣いてろ💢
沖縄そばのダシ
ダシ、ダシ、ダシのオンパレード。
まぁ、沖縄だし…
というワケで
安上がりに済ませたい時や
キャンプやバーベキューや
自炊ありの宿に泊まる時には
ぜひぜひお試しあれ。
肋骨足らなくても
株は上がるに違いないさ。