ルミ子姉さんが
久しぶりにグチを言う。
友だちの父親の病気が
なかなか治らないらしい。
琉大病院で診てもらっても
結果は原因不明ということだけ。
夜になると
パンパンに浮腫んだ両手が震えて
少しでも何かが触れると
大声を上げて痛がるんだけど
目は天井の一点を見つめたまま
まばたきもせず動かない。
声をかけてみると
普通に返事はするのに
食事となると
固まった舌が動かない。
リウマチ?通風?てんかん?硬化症?
もちろんだけど疑いはある。
でも処方される薬は
単なる痛み止めだけ。
で、ルミ子姉さんは
無意識に霊視していたらしい。
すると、見えてきたのは
髪の長い女性らしき黒い影。
浮気?と思ったんだけど
違うと感じたらしいのよ。
そこまでドロドロしていないし
浮気するほどの甲斐性が無いくらい
真面目で正直過ぎるくらいの
仕事一筋、頑固一徹なタイプだと踏んだ。
まぁ、そういうタイプが
本気になると怖いんだけどさ。
平均台を踏みはずすと
たちまち落下みたいなね。
普段からマメに踏みはずしている人は
あゝ、またやっちまったって
青アザ作るくらいで
大したことないけれど。
でね。
呪いや祟りって
信じる?って聞かれた。
信じる、というより
ある、と思うよ
と答えただけさ。
ルミ子姉さんには
何か別のものが見えてんだなぁ
と、何となく感じつつ
コーヒーを飲んでいたけれど。
でね。
この話を
ユタの明美姉さんに
話してみたんだよ。
するとさ。
その人の病気はさておき
人間の心に巣食う闇の話になった。
救う、方じゃないのよ。
沖縄って
ユタという霊媒師?が
知られているけれど
それぞれ得意分野がある。
その中でも
" 念 " を飛ばして
知りたい相手の情報を知ったり
操ったり、陥れたりするユタが
今でもいるのよ。
もちろん商売として
依頼者から請け負うワケ。
カンタンに説明するなら
代理で呪いをかけるんだよ。
沖縄って
家族経営の会社が多い。
だからというわけでは無いけれど
骨肉の争いという意味で
長男を次男が、あるいは
次男が長男を、という感じで
〇〇して、とか病気にして
とか、身体障害者にしてとか
依頼をする人が後を経たない。
どころか、ソレ専門のユタもいる。
イチャリバチョーデー
という、一度会えば兄弟というウチナンチュ
ばかりじゃ無いのよ。
そう、長男崇拝の沖縄って
信じられないくらいに
長男を大事にする人がいる。
なんで、長男だからって
財産をもらうんだよ
みたいな兄弟争いもある。
かたや、オンナの場合。
ダンナや恋人の浮気を疑って
プライベートを探ってもらう。
そんなのが得意なユタは
カナブンや蝶々など
昆虫を使って様子を探る。
式神みたいなもんよね。
ユタを使わなくても
" 念 " の強い人はいて
そんな女性と結婚したら
毎日毎日、会社に付いてきた
奥さんの生き霊が
背後に立って監視する。
たまらないだろうね。
で、ルミ子姉さんの友だちの父親は
自業自得らしいのよ。
自分の孫娘のために
誓いを立てていたんだって。
難しい心臓の手術が成功するなら
自分はどうなってもいい。
黒い女の影って実の娘みたいよ。
" 念 " の強い実父に
うまく頼み込んで
父親を利用していた。
それが真相らしい。
この、ルミ子姉さんの病気の友だちは
ライバル会社の社長を蹴落とすために
さんざん" 念 " を飛ばして
病気にさせたり、事故を起こしたりして
自分だけ抜け駆けしたんだって。
同級生だろうと、友だちだろうと
容赦しなかった。
だから
入院しても見舞いに来る人もいない。
家族すら見放している状態なのは
皆んな知っているから。
知らんぷりしたまま
うわべだけの付き合いに
止まっていたらしい。
私たち人間は
正義だ、悪だ、と
やたらと区別するけれど。
本音と建前を
使い分けてもムダ。
私にさんざん
悪口を浴びせ悪態をついていた静留。
言い返せない自分に
腹が立っていたんだろうなぁ
なんて思っていたんだけど
そろそろ私も
トドメを刺さねばならない。
静留は
そんな、ぶっきらぼうで
言葉が汚い正明に
惚れたんだろう?
違うかい?
突っ立ったまま固まる静留。
大人しくテビチの海に溺れろ‼️
そうなのよ
このまだまだ古い世界が残る今
自分の中に溜まったカスを
きれいにしていかなくちゃね。
自分を救うために
おのれの中に巣食う
いらないモノを捨てなくちゃ。
だってだって
人間だものぉぉぉぉ…
おっ?おぉ?おぉ〜💦
こぉんなに沢山あるなんて!
在庫抱えている場合じゃ
ないよ、ホント😱