自衛官の忠雄さんと
警察官の美祢彦 ( みねひこ ) さんは
大学の同級生だった。
2人は何となく
ウマが合わないというのかな。
皆んなで飲んでいたところで
気に入らないことでもあったのか
警察官の美祢彦さんが
表に出ろ!と、大声で怒鳴って
上等だ!と忠雄さんが上着を脱ぎ
ランニング一枚になった。
大男でムッキムキの体をした忠雄さんが
鼻息荒くのっしのっしと先に外に出て行くと
美祢彦さんはドアの鍵を閉めた。
で、12月の寒い夜に
凍えそうになった忠雄さんは
相変わらず、お前は単細胞だなぁ
と、1時間後に中に入れてもらえた。
ガタガタ震えて
大量のハナミズを垂らし
べちょべちょの涙を浮かべる忠雄さんは
失禁までしていた。
ママが着替えさせ
つんつるてんのトレパン履いて
ラクダの厚手シャツを着ていた忠雄さんは
半泣き顔をしながら座った。
で、不彌也さんから
お湯で割った高いブランデーをご馳走になり
美祢彦さんから約束させられる。
ガンを患って
余命宣告をされた母親を
不彌也さんに
合わせることを。
美祢彦さんって
霊能力を持っていて
その力を仕事に活かしていた。
取り憑かれて暴れまくる人から
霊を引き剥がすまでは出来るんだけど
自分自身に被ってしまう。
美祢彦さんは
暴れないんだけど体調不良になる。
そこんところを
いつもバリアを張ってもらう
不彌也さんから
無理をするな、と言われながら
浄霊してもらっていた。
さっきまで
体調不良で飲めない状態なのに
いきなり飲めるようになるって
私からすれば不思議だった。
忠雄さんの母親は
毎日毎日祈っていたんだよ。
自分はどうなってもいいから
息子の無事だけを。
短気で堪え性がないから
ケンカっ早い。
正義感ばかり強くて
物事の全体をよく見ていない。
先々、とんでもない事を
やらかすに違いないと。
そんな息子が、体力に任せて
自衛官になったから
母親の心配は
ますます膨れ上がってしまった。
不彌也さんにより
憑き物が落ちたように
顔つきまで変わった母親は
不彌也さんから
諭される。
思い込み、という
一点集中の念は
現実化しやすい。
人の不幸を願ったとしても
その現実化は
相手ではなく
我が身に現れる。
つまり
ガンの原因は
母親本人の強い一念。
私はどうなってもいい
という、凝り固まった思いだと。
単細胞で良かった
そう呟いて頭を下げた忠雄さんは
隣りにいた可愛い彼女さんに
メッ!とオデコをツンツンされて
ヤニ下がっていた。
神々しくてそばに寄れないと言い
不彌也さんへ、離れたテーブル席に座り
手を合わせて祈っていた彼女さんは
大丈夫だ、子どもが産まれれば
忠雄は変わると言われた。
苦労人の彼女さんは
忠雄さんの母親の看病を
ずっとやっていたんだよ。
自分は、母親を早くに亡くしているから
夫になる人の母親まで
亡くしたくないって。
ケナゲじゃない?
泣かせやがって
この野郎!ってヤツ。
ちなみに、忠雄さんは
風邪を引かなかった。
皆んなから、やっぱり
ナントカは風邪をひかないと
太鼓判を押されたらしいのよ。
この時代の
マジムンって