これは僕が実際に経験した話。

今から6年ほど前。

僕の携帯電話に知らない番号から留守番電話のメッセージが録音されていた。

聞いてみると、

中年か初老くらいの女性の声でメッセージが残されている。

内容は、どうも娘か誰かを心配して電話を掛けた様子。

今度はいつ来れるのとか訪ねている。

間違い電話か。

数日後、また同じ電話番号(番号は覚えていないが、声が同じだった)から

メッセージが残されている。

「いい加減に連絡をよこしなさい。お母さんは心配しているのよ。」

そんな感じの内容が残されていた。

上品な声だし、何度もメッセージを残されても困るので、

意を決して間違い電話先に電話をしてみた。

「すいません。〇〇というものですが、
そちらの番号から僕の携帯電話にメッセージがありまして、
おそらく間違い電話だと思うので、お知らせしようとご連絡したのですが・・・」

すると

「あなたは何者ですか?なんでうちの番号を知っているの?」

僕は
「ですから、お宅の番号から僕の携帯に
間違って留守電のメッセージが残されていたんです。
娘さんあてだと思うのですが、間違ってメモされたか登録されたんじゃないかと」

それに対して
「うちには娘などいません。
何を訳の分からないことを言っているの?
気持ち悪いので二度と電話しないでください。
警察を呼びますよ。」

ヒステリックに怒鳴られて切られた。

その夜、またまた同じおばさんから留守電メッセージがあった。
「今日、変な男から電話がありました。
あなた、いったい何をしているの。
いい加減に連絡をよこしてくれない?
じゃないと、母さんおかしくなってしまいそうだわ。」


面倒くさいので、着信拒否してやりました。
知らない番号から携帯に電話がかかってきた。

若い男の声。

出るや否や

「てめえ、誰だよ」

といきなりキレられる。

僕も若かったから言われもない怒声に、

というか、自分からかけといていきなり「誰」だという意味不明な電話に対して、

ブチ切れた。

「つーかてめえ誰だよ、ごら」

それに対して男も喚き散らす。

僕も興奮しているから、何を話したかは覚えていない。

ただニュアンス的に、

電話の向こうの男が恋人に電話をしたところ、

知らない男(俺)が出たため、ブチ切れたらしい。

男はどうも彼女の浮気を疑っているらしい。

間違い電話?

ただ彼女だったら番号登録してるだろ・・・

そう思った俺は、

「お前番号間違ってるから。夜中に変な電話かけてくんじゃねえ」

と相手をバカにする感じのいい方で話しかけた。

それでも男は決してひかない。

「嘘つけ、ごら。てめえ、今からそっち行くからな。」

ああ、めんどくさい。

でも、本当に来られたら怖い。

いや、そもそもこいつが俺の近くに住んでいるかも定かではない。

そこで、僕のいたずら心が芽生えた。

「来るなら来いよ、タコ。てめえがキモいから女にフラれんだろ。バーカ」

男は完全にブチ切れた。

「てめえぜってー殺すかんな。待ってろや、逃げんなごら」

俺は冷静にとどめを刺す。

「きめえんだよ、変態。一生さまよってろ、タコ」

そしてすかさず電話を切り、その番号を着信拒否した。

時間は夜の11時半過ぎ。

まさか来ないだろ。

一瞬携帯ってGPSで場所とか分かるんじゃないのか。

とか頭をよぎるが、

とりあえず家の鍵をしっかりかけることにした。




数日後、テレビのニュースで

若い男が元カノを殺害するという事件が報道されていた。

知らない街で起きたことだ。

そんな事件なら日常茶飯事のように起きている。

僕には何も関係ない。
友人が社会人1年目に経験した話。

その日は暑い夜だった。

ひどく蒸し暑くて、我慢できなくなった彼は夜中に海へ車を走らせた。

夜の11時くらいだったか。

その日は平日だったからほとんど車とすれ違わなかったという。

やがて道路は防風林に囲まれた鬱蒼とした林道になった。

近くに民家はなく、街頭もない。

光源は、月明かりと、彼の車のライトだけだった。

しばらく進むと、白いぼぉっとした人影に気づいた。

近づくにつれて、それが髪の長い、白い服(ワンピースか)を着た女性であることが分かった。

時間はもう12時近い。

民家までは車で20分以上かかる距離だ。

不可能とまで言わないが、不自然だ。この時間にここにいる理由がない。

友人は、この女はこの世のものではないと思った。

友人は、できるだけ車のスピードを速めて、女性をやり過ごすことにした。

すれ違う瞬間に、ふと女性を見てしまった。

いたって普通の女性だった。

すこし吉孝由里子に似ていたと友人は言う。

こんな話を聞いたことがある。

もう少し走ると、展望台がある。

そこは夜になると若者たちのナンパスポットになる。

ときおりナンパしたはいいものの、

車中でケンカして、道路の途中で女性を置き去りにする輩がいるらしい。

友人は、さては捨てられたか、と
女性に対する同情と、ちょっとした下心を抱いた。





それのどこが怖い話なんだ!?
僕等はいっせいに彼に対してツッコんだ。

友人はこう答えた。


その夜は、3回もその女とすれ違ったんだ。