友人が社会人1年目に経験した話。

その日は暑い夜だった。

ひどく蒸し暑くて、我慢できなくなった彼は夜中に海へ車を走らせた。

夜の11時くらいだったか。

その日は平日だったからほとんど車とすれ違わなかったという。

やがて道路は防風林に囲まれた鬱蒼とした林道になった。

近くに民家はなく、街頭もない。

光源は、月明かりと、彼の車のライトだけだった。

しばらく進むと、白いぼぉっとした人影に気づいた。

近づくにつれて、それが髪の長い、白い服(ワンピースか)を着た女性であることが分かった。

時間はもう12時近い。

民家までは車で20分以上かかる距離だ。

不可能とまで言わないが、不自然だ。この時間にここにいる理由がない。

友人は、この女はこの世のものではないと思った。

友人は、できるだけ車のスピードを速めて、女性をやり過ごすことにした。

すれ違う瞬間に、ふと女性を見てしまった。

いたって普通の女性だった。

すこし吉孝由里子に似ていたと友人は言う。

こんな話を聞いたことがある。

もう少し走ると、展望台がある。

そこは夜になると若者たちのナンパスポットになる。

ときおりナンパしたはいいものの、

車中でケンカして、道路の途中で女性を置き去りにする輩がいるらしい。

友人は、さては捨てられたか、と
女性に対する同情と、ちょっとした下心を抱いた。





それのどこが怖い話なんだ!?
僕等はいっせいに彼に対してツッコんだ。

友人はこう答えた。


その夜は、3回もその女とすれ違ったんだ。