あなたは5年・10年先のビジネスが想像できますか?
「ニーズを創造・発掘し適切なタイミングで提供する。」多くの企業が「理念」として定義しています。
この理念は私も素直に素晴らしいと思っています。
ところが実際はどうでしょう?「良いものでも安くしなければ売れない」と価格競争に挑み理想とはかけ離れた方向に進んでいるのです。
また、いくら独自性の商品・サービスを開発しても、プロモーションやブランディングが適切に提供できなければ価値は認められません。
コミュケーションデザインは、プロモーションやブランディングといった商品・サービスの開発、事業計画から始まり、エンドユーザ―まで全てのコミュニケーションを設計する設計する仕事と定義しています。
さらに、最適なコミュケーションを設計しても、商品・サービスを利用する生活者に「想い」や「物語」が伝わらなければいけません。それがまさにコンテクトデザインなのです。
例えば、エンドユーザーから「靴が欲しい」と言われた場合を見てみましょう。
売り場である店舗から、靴製造販売会社の担当者が依頼を受けます。
依頼を受けた担当者は、企画部に報告し企画部は商品開発部に依頼をするのです。
企業規模によっては、さらに多くの窓口を経由するかもしれません。
開発部では市場調査を行った上で、「売れる」と判断された「最高の靴」を用意するでしょう。
そこには「靴」の本質から離れる場合もあるでしょう。「だれが」「なんのために」「どのような」思いが必要とされるのか?さらに、「そもそも靴が必要なのか?」まで掘り下げて考える必要があるのです。
時には、靴ではない「何か」を提供する場合があるかもしれません。
コンテクスト・コミュニティデザインでは、「本質」「価値」「想い」「ストーリー」を徹底的に向き合いプランニングを行います。これらを避けてしまえるほど現在の消費環境は甘くはないのです。
メディア環境は時代やニーズによって恐ろしいスピードで変化し続けています。人はメディアの「変化のスピード」にほとんどの人がついてこれないでしょう。元々人の脳は「変化を嫌う」のです。
メディアの変化は世の中に「情報」という洪水を溢れさせています。ここ数年で消費される情報量は爆発的に増えました。
しかし、人が処理できるであろう「情報量」はほとんど変わりません。人が処理しきれない情報は「ゴミ」と同様なのです。1日は24時間である事は変わりなく、その中で情報に触れる時間もそうは変わらないからです。
数年前までは、娯楽メディアの主役はテレビでした。人気番組は多くの人が視聴するため、職場や学校ではテレビの話題がコミュニケーションの役割を果たしていたのです。現在ではテレビ以外にも多くの楽しく、魅力的な情報が効率的に入手できるようになったので、多くの選択肢の中から自分好みの情報だけを得るようになったのです。
そのため、商品・サービスの開発時から利用者の価値や感性を理解し購買に至るまでの適切なコミュニケーションを設計しなければならないのです。
従来の“欲しい”と思わせることができれば“購入”に至る確率はかなり高いものでありました。しかし実際の購買行動はもっと複雑です。
今日のメディア環境を理解し、重要なプロセスを強く意識して最大限利用する。これからのビジネスには不可欠な視点だと考えています。
消費・生活者の購買行動が激変しているのに、企業からのアプローチ方法であるコミュニケーションが変わらなくていいわけはありません。
まず考えなければいけないことは、購入にいたるまでの“仕組み”を理解しそのために必要な物は“何か”を理解することでしょう。
つまり消費・生活者が目的によってメディアを使い分けているようになっているため、それに合わせたコミュニケーションを情報発信側が設計していかないと、最終的な“売る””利用する”ところまで到達しない危険性があるのです。
コミュニケーションは「社会生活を営む人間が互いに意思や感情、思考を伝達し合うこと。言語・文字・身振りなどを媒介として行われる」と定義されています。(Webデジタル大辞泉の解説より)
コミュニケーションの本質は「意志や感情、思考を伝達し合うこと」なのです。
情報発信側の企業の多くは、誤った価値を一方的に「伝える」だけで利用者とのコミュニケーションが取れていると錯覚しているのです。
「伝える」から「伝わる」までにはいくつもの、複雑なプロセスが存在しているのです。
あるレストランを例にとって見ましょう。
お客さまがお店に入り、メニューを見てオーダーし、食事を楽しむ。店を出ていく際に「今日の料理はおいしかった。また来ます」といってもらうためには一体何が必要なのかお分かりですか?。
料理を作るシェフの技術、完成度も当然ありますが、お客さまが満足していただくためには、ワインの品数、店の雰囲気、心地よく流れる音楽、サービスを行なう接客のマナーに至るまで山の様にあります。
一つひとつがお客様を満足させるための大切な「手段」でありコミュニケーションなのです。
コミュケーションをデザインするとは、相手に対して本質を理解し、提供する様々な要素を正確に把握しつつ、目的達成のために全体をち密に構築していくことに他ありません。
「伝わる」本質について、知っていただきたい点があります。
今までの様に単に「情報を提供する」だけでは、あふれる情報に紛れ機能しにくくなっているのです。
消費・生活者が触れた情報に対して、さらに能動的に関与してもうべきであるとい考え方が普及してきています。いわゆる関係性の構築という考え方です。この考え方は、「伝える」で終わらずに消費・生活者との間に関係性をつくるところまでを目的をするもので、とても難しい課題であると思います。
しかし、これらを実現することが、コミュニケーションデザインの「本質」であるとも考えます。
関係性を構築するには、常に新しい「消費社会が求めている本質」を知る必要があります。
それは、商品・サービスを購入するという「所有権の移転」という満足感ではなく、「体験」から得られる心の豊かさであり、頭や精神で楽しむ充足感といった側面も必要でしょう。
まさに今もとめられているのは、新しい言葉であり、新しい需要を生み出す表現といっていいでしょう。
人の感性は時代により方向が変化します。
先に解説した通り、Web環境の激変により、合理的でシンプルな世の中がここ数年続いてきた。しばらくはその方向に向いて動くわけだが、ある時から一気に「逆の方向」に向けて振り子のように動く時が来る。
都会的な世の中に必要性を感じ、均一化された世の中に安心感を得ていたわけです。
そして今は振り子が反対方向に動いてきたことを理解されていないのが事実なのです。
非合理で、非論理的、シンプルではなく反対に複雑なもの、都会的ではなくナチュラルな物、均質化されたものよりも個性的なものに動いているのです。
数年前までは「不快」とされたものが「快」とされてきているのです。
それは、人間臭いもの、意外性のあるもの、個性的でありながら情緒的なもの、それらを「満足の本質」と捉える必要があるのです。
人は今まで見たことのない驚きを求め、知的な喜びに安心感を得るのです。
「モノ」に対する充足感よりも「コト」への期待感が日々強くなってきています。
消費・利用者は「自分たちの気分をわかってくれる」と感じた商品・店・ブランドに全力で寄り添っていく傾向があります。これらを理解・提供するには難しい事かもしれませんが、頭を抱える必要はありません。それこそが私が提供している、コンテクストデザインに他ならないからです。
人はそれぞれ生まれた環境や教育、経験によって考え方や価値観が異なります。ひとつの映画を見ても、ストーリーの良さを語る人もいれば、美しい映像に価値を見出す人もいる。
詩や小説も同様で、描写・情景・心情・世界観。人はそれぞれに異なった受け取り方をし、時には言葉で表現できなかった影の部分を読み取る場合もある。
つまり、感情や感性によって受け取り方が変わって来るのです。
考えたいことは、受け取り方に違いがある商品・サービスをどのように表現すれば「語られるもの」になるのかです。
人はそれぞれ自らの解釈・理解を持ち、自信の言葉で伝え語る商品・サービスはどのようにデザインしていくのか。
ひとつの答えとして言えること、それは、人は「価値」を認識し、自身の関わりを合わせたとき語りはじめるのです。「語り」によって「伝わる」のです。それは、単なる「消費」をはるかに超えて「豊かさ」と「満足感」を有することになるのです。
コンテクストとは「文脈」を意味します。細かな感情を読み取り、もっと細かいもの価値を創造する。均一化によって落とされたものを丁寧に拾い上げていく。小さな文脈を紡いぎ、新たな「表現」「言葉」としてアプローチしていく。それこそが、コンテクストデザインに他ならないのです。
情報発信側である店舗や企業は大量生産を背景に成長してきました。
マーケティング手法に沿って特定の使い手を想定し、特定の問題を解決してきたのです。例えば、体型・環境・趣味・嗜好これらのセグメントをターゲットとして新たな市場としてきたのです。
現代アプローチの手法は、適した使用者に、正しい使用方法で、最適な価値を提供することが目的としてます。そのため、言語・画像・映像を明確に伝えてきました。「正確」に伝え「正しく」使用してもうることが、アプローチ上の「本質」あるいは「価値」とされてきたのです。
コンテクストデザインによるアプローチは、「正確」といった「条件」は必ずしも重要とは考えないのです。多様の「価値」そのものの定義が受け取り側である使用者側に委ねられていてもいいのです。
提供側の意図とした「価値」を目的とはせず、むしろ使いての主体性に任せ解釈を委ねることで、時にはまったく別の「価値」が波及する場合もあると考えます。
勘違いされてはこまりますが、価値伝達の行為を放棄することではありません。
情報提供者側のストーリーや強い思いは明確に伝えることが前提として存在しなければいけないからです。強い文脈と弱い文脈との釣り合いが生じて、新たな「価値」が創造されるのです。
コンテクストデザインによるアプローチは、受け手の新たな「ストーリー」を生む仕組みといっていいと考えます。言い換えれば、情報発信側である商店・企業と、受信側である、消費・利用者の両者の創作活動と言えるかもしれません。
これまでの、「便利さ」をもたらす段階から、「嬉しい」を生み出す段階になってきました。さらに、「心の豊かさ」への価値欲求が主流となり、それが新しい消費社会を牽引しています。
「新しい消費者」は時間を追うごとに多くなってきています。これらは製造業に限った事ではなく、エンドユーザーとのコミュニケーションに重点をおく小売り・サービス業にもいえることです。
現代のビジネスデザインでは、「価格訴求」に「価値」を求めています。さらに、「価格訴求」は時代の要請で逢ったことに間違いはありません。しかし、現在ではその目的は果たされ、これらかの消費社会モデルでは「価値創造」が求められるのです。
「良い商品を安く」それでも「売れない」のです。いかに安くても、どんなに良い商品でも、緊急性がない商品・サービスが売れることはないのです。
これからは消費者の心の中に価値を生み出し、購買動機を喚起させる試みが必要です。
消費者にどの点を伝えるべきかを考え、どんなストーリーを積み上げるか。手作り・特別なタレ・豊富で新鮮な材料。これらの情報を言葉だけではなく、感性に訴える表現を提供する。
消費者は「価格」よりも自分にとっての「価値」を感じ「買いたい」という気持ちが湧きおこるのです。
これまでのビジネスモデルにおいては、マニュアル化と均一・標準化」によって、人材をマネージメントしてきました。行動は細かくマニュアル化され、入社から数日経過するだけで、誰もが同様な均質的なサービスを確立し、効率を上げようとする。
しかし、感情・感性に訴えかけるコミュニケーションを目的として、新たな価値を創造するコンテクスト・コミュニケーションデザインでは、マニュアル化する事はできません。
“臨機応変”という一言で済ますことは難しく、これまで解説したコンテクスト・コミュニケーションデザインを完ぺきでなくとも、その構造や仕組みを理解・実践できる人材を育成することも重要でしょう。
コンテクスト・コミュニケーションデザインはなにも、お店・企業を消費者だけを指すものではありません。「人は感情によって動く」ことを考えると、企業と従業員の間にもこのデザインモデルは必須事項であると考えます。
激変する消費社会では、いかに人材教育に力を入れたとしても、今までの方法では強いビジネスパーソンは育つ事はありません。それはなぜか?従業員も「消費者」に他ならないからなのです。
従業員一人ひとりも異なる「価値」が存在し、「心の豊かさ」と「精神的な充足感」を求めているのです。それでも「従業員教育は適切に行われている」と考えるのであれば、一度年度別の「離職率」を調べてください!そうすれば、「従業員が辞める理由」が明白になると考えています。
話しを戻しますが、以上の理由から今までのビジネスモデルにおいて必要で適切な人材育成の方法はそのほとんどが役割を終えと考えています。
これまでの人材教育では、課題や手段に重点を置いてきましたが、これからのビジネスモデルでは、構造やシステム全体を見る感性が求められます。新しい消費モデルでは、分類された業種は消滅し、複合的な業種こそが“ビジネスの形”となっていくと考えられます。
酒を売るのが「酒屋」、魚を売るのが「魚屋」、家を建てるのが「工務店」こうした分類は過去のものになっていくのです。従来の“専業”に価値を持たせる「何か」を創造しなければいけないのです。
そこで働く従業員には、仮に魚を売る場合でも「魚」を売る知識である。「産地」「品種」「味」ではなく、「魚を食卓で囲む家族」といった世界観を持ってビジネスに取り組む必要があるでしょう。
これまで、激変する消費モデルの現状から、今までのビジネスモデルが抱える問題、さらには、これからのビジネスを展望するコンテクスト・コミュニケーションデザインを意識した人材育成についてを解説してきました。
つまりは、ビジネスの軸が「モノ」から「ヒト」になった事をお伝えしたいのです。
「心の豊かさ」と「精神的な充足感」が求められる時代。新しい消費社会の本質は「人の理解」であって、人が何を求め、どう感じるのか?これらを日々考え実践していく上で、新たな需要が生み出されるのです。
商人(あきんど)は巡り合った消費者(お客)に商品のストーリー(物語)を説きその心を魅了する会話を成立させ需要を創造するのです。
過去に手のひらからポロポロとこぼれ落ちたものを丁寧に一つひとつ拾い上げていく。こんな考えが新しい社会を作っていくのだと考えています。