【ジョン&ユッキー劇場】
東京大田区・洗足池に勝海舟が眠るお墓がある。
勝海舟(勝麟太郎)は洗足池の風光を好み、ここに別荘を持っていたそうだ。
洗足池ではボートやスワンに乗ることもできる。
お墓の裏手、すぐ近くには「勝海舟記念館」もある。
立派な記念館だ。
規模では「ジョン万次郎資料館」に軍配が上がる。
(競ってどうする…)
勝海舟記念館では、ジョン万次郎のことにもチョコッと触れている。
勝海舟はジョン万次郎に「日本の表舞台に立たないか」と、何度もラブコールを送ったそうだ。
しかし万次郎は政治の表舞台に積極的に立つことを頑なに断り続けたそうだ。
そんな意志と魂が現代でも受け継がれているのだろうか。
未だに、現代(May.2025 present)になっても万次郎は表舞台に出てこようとしないのだ。
日本よりも、むしろアメリカでの評価が高いように感じる。
アメリカ人の方が万次郎をメジャーな有名人として扱っているように思える。
福沢諭吉は人を見る才に長けていたそうだ。
一万円札にもなった人だ。
慶應義塾大学という、日本でトップレベルの私立学校を設立した偉人だ。
福沢諭吉もまた、咸臨丸乗船メンバーだ。
諭吉からの視点で見たジョン万次郎はとても興味深い。
使節団として渡米後、ショッピング中、辞書(ウェブスター大辞典)を購入したことは有名な話だ。
その辞書を日本に持ち帰り、日本の教育をさらに進歩させたのは言うまでもない。
さて、ここで想像力を働かせてみよう。
初めての異国の地、言葉も文化もまったく知らない地。
鎖国が開けたばかりのこの時代。
そんな場所で気軽にショッピングができるだろうか?
どうやって買うの?
立ち読み、チョイ読みしてもいいの?
この本、タイトルからしてなんの本だかわからん。
これ値段、いくらするの?
なんて言えばいいの?
このお土産、日本に持ち帰っていいの?
お土産購入ショッピングは海外旅行の楽しいイベントのひとつだ。
未知の外国では楽しむどころか、どうしていいかわからない。
しかし、現地の言葉も事情にも詳しいガイドが一緒ならどうだろう。
ユキチ:万次郎さん、日本に持って帰る書籍とか手に入れたいんですけど…どうしたらいいのかなぁ
ジョン:アァハァン、ブックア〜ンドスゥヴニィね! ユッキー、それなら本屋に行こうよ
ユキチ:ユ、ユッキー?
ジョン:アメリカ人にはさ、ユキーチって発音しにくいんだよね、だからユッキーの方がいいよ
ユキチ:ま、万次郎さんは?
ジョン:かたいなぁ、ジョォーンでいいよ、コーミィージョォーンってね、じゃあ早速ブックストゥアにレッゴォー
ユキチ:ほぇー、どれもこれもわけわかんないけど…あ、あの本はなんだろう?
ジョン:あ〜、ザッツァ…アバウト、レイローピクチュアブック
ユキチ:レイロー? あ〜この前教えてもらった汽車かぁ
ジョン:イヤァ、ザッツライ!
ユキチ:えと…あの棚の本、あ、あれがいい
ジョン:ワァット? あのぶ厚い本?
ユキチ:なんか豪華そうだけど、なんの本かなぁ
ジョン:さすがヤッキー! 勉強家だね
ユキチ:あれ、ユッキーでないの?
ジョン:ソォリィ、ちょっとスラングになった
ユキチ:あー、それ、スランプね
ジョン:ノーノー、スラァーング、ナマリみたいな?
ユキチ:ちょっとなに言ってんだかわかんない
ジョン:ユッキー、あれは辞書だよー
ユキチ:ほえ〜…辞書かぁ、いいね!
ジョン:でもこれを選ぶなら、あちらの簡易版の方が読みやすいし、手頃でいいと思うよ
ユキチ:へー、ではあれ、取ってくれる?
ジョン:オフコース
ユキチ:だぶりゅ…なんて読むんだろう
ジョン:ウェヴスタァッ、リピートミィ
ユキチ:そういう音、出せないから…
ジョン:これ、辞書の中ではヴェリフェイマスだし、今ならこれマストヴァイでまちがいないよ
ユキチ:で、でも高くない?
ジョン:え、プライス? ウェル…ほら、ここに記載してあるネ、このコイン5枚で買ってお釣りが来るよ
ユキチ:日本の通貨ならいくらくらいかなぁ
ジョン:たぶん1万くらいじゃね
ユキチ:えーっ、壱萬? そんな通貨、日本にないよ
ジョン:そのうち日本でも1万なんてペイパー紙幣通貨が造られるかもね
ユキチ:そうかぁ、にしても高いなぁ…どうしよう
ジョン:ミスターキムラからたっぷり予算もらってるんだから、いいじゃん
ユキチ:それもそうだな…えと…これで、壱ダラの半分お釣りがくるのか
ジョン:ハスダラ、ザッツライ
ユキチ:お釣りのハスダラ、チップであげたほうがいいかな?
ジョン:ワァット? ティィップ? だれに聞いたの、そんなこと
ユキチ:勝さんがさ、メリケンではお礼に必ずチップ渡すって言ってた…
ジョン:ノーニードティップ、このお店ではチップなんて不要ネ
ユキチ:そっかあ、勝さんには悪いけど、万次郎さんと一緒でよかったー
ジョン:ヘーイ、コーミージョォーン、オライ?
ユキチ:勝さんも船酔いしてなければ一緒に本屋行きたいって言ってたからなあ
ジョン:オォ、ミスターカツ、He is seasickネ、アイレッコメンデッヒムゆっくり休む
ユキチ:やっぱちょっとなに言ってるかわかんない…
ジョン:ウェル…それよりさ、買った本、帰りの船で濡れても大丈夫なようにワァラプルーフバァーッグに入れてもらいなよ
ユキチ:ワラの夫婦バーグ? なにそれ?
ジョン:厚めの袋ってこと
ユキチ:そっか、そだねー…え? 追加料金いるの? ハスダラも?
ジョン:ん? どした? 厚い袋は有料だと? んなバカな…ではミーが交渉してあげるよ
店員:オミヤゲ用の袋はね、別料金ね、でもチョトなら勉強するあるよ
ジョン:あのさぁ、さっきさぁ、安いマァガズィン買ったイケてるマダムにはさぁ、厚い袋フリーサービスしてたよね
店員:うえっ?!
ジョン:オレたちさぁ、あのマガジンのさぁ、十倍以上高い買い物してんだぜ、なあ、そこんとこどうなのよ
店員:あわわわ、そ、そりはぁー…ですね、えーと…
ジョン:あれー…これってさぁ、もしかしてさー、まさかの人種差別的なぁ?
店員:オイオイ、ちょまっ、ちょまっ、な、なんでそんな流暢な英語しゃべれるんだよ
ジョン:んなこたぁー聞いてねえスよ、人種差別してんのかってこと、ユーアンダスタンミー?
店員:ま、まいったな、バレバレじゃんか…
ジョン:フリー? or 差別…
店員:はいはいっ、無料、無料でいーす、しかも、袋、二重包みの大サービスしまーすっ
ジョン:グッジョブ!
店員:ま、まいど…
ジョン:ほうらね、ユッキー、無料だよ、しかも二重包装サービスしてくれたよ
ユキチ:ぽかぁ〜ん…ほえー、ネイティブ英会話カッケー! 万次郎さんって交渉力もマジすげえー
ジョン:オフコォーッス、世界に出たらネゴシエイションは常に必要ね
ユキチ:で、でも、店員さん、なんか怒ってないかな
ジョン:なにも知らないと思ってさ、なめられてるんだよ、こういうときはさー、ガツンと言ってやらないとさー、ガツンと
ユキチ:や、やっぱ、万次郎さんの英語って、超すごすぎるわぁー!
ジョン:ていうかさユッキー、これさ日本で読むの、大変っしょ
ユキチ:そ、それなんだけさ、万次郎さん…
ジョン:え? 帰国したら翻訳手伝ってくれって? う〜ん、まあ時間があれば…たぶん無いと思うけど
ユキチ:そこをなんとか!
ジョン:いやいや、そう言われてもさー、ノーサーンクスってことで
ユキチ:翻訳手伝ってくれたらさ、万次郎さんの株がまたまた爆上がりですよ!
ジョン:いや、ほら、だって、ミーが活躍するとさ、なにかとやっかむ人が多いっしょ
ユキチ:そ、それは仕方ないことだし
ジョン:そうなるとさ、ミスターユッキーにも迷惑かかるかもしれないっしょ
ユキチ:万次郎さん、そんなやつらは無視すればいいんですよ
ジョン:I think so, but doesn't make sense...
ユキチ:え? ちょっとなに言ってるかわかんない…
ジョン:まあ、私もそう思うけどね…て感じかな…
ユキチ:なんかさ、万次郎さん、米国に来てから日本語に変なナマリがありません?
ジョン:うっ…た、たしかに…そうなっちゃってるかもぉー
ユキチ:でさ、この後もショッピングつきあってくれませんか?
ジョン:ソォリィバッタァ…あ、いや、すみません、実は、写真撮影のプロフェッショナーにキャメラッの使い方とかテクァピッチュア、アーンド現像のことを聞きに行くプロミッスがあるんで
ユキチ:キャラメル? お菓子買いに行くの? それなら一緒にいくいく!
ジョン:ち、ちがうって、キャメラ…なんていうか、自動写生装置? って言えばいいのかな
ユキチ:あっ、海軍の事務所とかにある、あれね、でもあれに写りこむと魂抜けるってうわさだけど…
ジョン:オォーマイガッ…それっ、その発想、つくづく400年の鎖国が原因だよなぁ
ユキチ:あと、ゲンゾーって誰? 一緒に帰国した日本人の彼もいるの?
ジョン:ジーザスッ…イッツナットヒムッ
ユキチ:でもゲンゾーって言ったよね、たしかに聞いた!
ジョン:あぁ、えとね、カンバーックトギャザはデンゾー、ゲンゾーじゃないヨ、現像を教えてもらう約束してんのよ
ユキチ:ゲンゾーにゲンゾーを教わる?
ジョン:ノーモア…その後も別の買い物する予定があるからユッキーとのミッションはインポッシブルね
ユキチ:なに買うの?
ジョン:フォアマイワイフ、スーベニィにミシンも買おうと思ってね、へへへ
ユキチ:え? 四人の妻、スーとベニィとあと誰? 万次郎さん、こっちに妾(めかけ)つくってんのー?
ジョン:どういう耳してんだよっ! ちっげーよ、ミシン、ミーシーン
ユキチ:維新?! そ、それってアメリカだと買えるもんなの?
ジョン:ち、ちっげーって、ミシン…ほら、ペリーも持ってたでしょ?
ユキチ:いや、ペリーの持ち物って言われても…どんなお菓子だっけ?
ジョン:だからぁ、お菓子じゃないって…えとね…自動はた折り機械
ユキチ:自動で国旗とか製造できるの?
ジョン:い、いやちがうな…そうそう、さきほど買った辞書で「S」で調べてみてよ
ユキチ:おっ、それいいね、早速使おう、辞書!
ジョン:ふぅ〜、ユキチとの会話は疲れるわぁ
ユキチ:えーと、最初のアルファベットはMだからぁー
ジョン:ノーノー、Sで調べてみなよ
ユキチ:え? どして?
ジョン:スワイン マッシィンン(sewing machine)だから
ユキチ:え? ちょっとなに言ってるかわかんない…
ジョン:まあ…今後の日本でも流行るもんだからきちんと調べてみてよ…
ユキチ:よーし、帰国したら勉強すっぞー!
ジョン:そんなに勉強してどうすんの?
ユキチ:学校作ろうと思ってるんだ、ヘヘヘー
ジョン:リアリィ?! イッツグレイト!
ユキチ:そ、そんなにすごいかな
ジョン:イヤァ、ユッキーにknock outされた気分だよ
ユキチ:ノックアウトって?
ジョン:KOされたってこと
ユキチ:ケイオーか、いいね、その言葉!!
ジョン:フォゴッドセイク…
一万円札にもなった福沢諭吉。
初めての海外旅行のショッピングはこんな感じで楽しんだのだろうか。
残念ながら、勝麟太郎くんは船酔い残って体調不良でショッピングには来れなかったようだ。
一緒に来ていたらジョンに「ヴィクトリー」(勝つ)または「ヴィクター」などと呼ばれていたかも。
ここに登場している親切なガイドのジョンはネイティブイングリッシュペラペラのジョン万次郎。
単に、そこらの英語会話ができるだけの外国人ではない。
あの1849ゴールドラッシュの現場で生き抜いて金をゲットしたしたたかさ、交渉力も持っているのだ。
諭吉もまた、先見の眼をもち、激動の時代で、上手に危険回避をしつつも日本に貢献した人だ。
右も左も天も地もわからない異国の地で。
さぞやジョン万次郎は頼りになるガイドだっただろう。
福沢諭吉もツアーガイドに感激、大いにリスペクトしたことだろう…たぶん。
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