へばりついてちゃダメ その1
その対極に、明治生まれの人達がいます。彼らの(祖)父母は江戸の価値観を色濃く引き継ぐ一方、日清戦争、日露戦争を経験しました。その子供たちは激動の昭和前半を生き抜き、焦土と化した国土を復興させ、高度経済成長を達成しました。憲法が変わり、教育が変わり、天皇の位置づけが変わるという数々の大転換を経験しました。
そうした度重なる変化を経験したことで、世界史でもまれに見るタフさを身につけたのが明治人であったと思います。辛酸をなめた人間のみが持ちうる老獪さと冷静さと力強さを国家レベルで所有し、たくましい大人達が社会に溢れかえっていたのが高度経済成長までの日本でした。懐古的になっても仕方ないと思いますが、日本の並はずれた成長の裏にはそうした人達がいたことを忘れてはならないと思います。
戦争も革命もなく、経済的に恵まれた状況というのは、同時に精神的な堕落、貧困、怠慢を生みだす運命にあります。歴史上繁栄したあらゆる国が同様のループに落ち込み、衰退していきましたが、そのメカニズムについては次回紹介したいと思います。
<その2へ続く>
ロシアンたこ焼き
先日、川崎汽船時代の先輩達と飲んだ。
誰かが「ロシアンたこ焼き」なるものを注文した。どれか一つにハバネロの粉が入っているのだが、見事に激辛たこ焼きに当たってしまった。その辛さが尋常ではなく、飲みこんだ後にものすごい吐き気が襲ってきて、そのままトイレに駆け込んだ。
便器にうずくまった時、知らぬ間にひじでボタンを押してしまい、ウォッシュレットが起動した。ウォッシュレット作動に気がつくのが遅れたため、そのまま顔に水を浴びてしまった。泣きっ面に蜂ならぬ、ハバネロにウォッシュレットであった。さらには、ウォッシュレットの水に驚いたあまり、持っていたペットボトルを便器に落とすという三次災害まで発生した。
ハバネロ粉を飲みこんだせいで、体が内部から攻撃されている感覚を味わった。あんな常軌を逸した料理を出すお店に本気で腹が立ったが、その後飲んだ温かいジャスミンティーが心身の異常を癒してくれた。ジャスミンティーの効力を初めて実感し、その優しさにとても感動した。以来、寝る前は温かいお茶を飲むようになった。
コクヨの椅子と身体化
車によく乗る人は、車体を自分の体の範囲として認識していると思います。幅、長さ、高さ、出力などの全てが身体感覚として把握できるようになってくると、駐車や狭い道での運転もスムーズになっていきます。
車以外にも、全ての乗り物が身体化できると思います。というよりも、迅速、的確に運転するには、身体化することが不可欠だと思います。飛行機も船も車も、運転者にとって死角になる部分は必ず存在しますが、にもかかわらず衝突や事故が起きないのは、運転者が乗り物を身体化し、死角をイメージで補正しているからだと思います。
スポーツというものは、身体感覚の最小単位である「肉体」の感性を高める訓練であると思います。ぶつかったりつまづいたりしやすい人は、自分の肉体を身体化できていないのだと思います。
身体化されたものというのは、使用者に快適さを与えてくれます。洋服やメガネや時計、財布やバッグや携帯電話などが使い易くなっていくのは、身体化されていくためだと思います。ぶつけたりひっかけたり落としたりしやすいのは、まだ身体化できていないからだと思います。製造メーカーの多くは、より身体化しやすい形状(使いやすい形状)を日々研究しています。
塾を始める際に生徒用の机と椅子を購入しました。普通の学校で使われているコクヨの机と椅子です。それに久々に座った時、懐かしさと同時に体にぴったりとくる感じがありました。「あ、これこれ」という感じで、何とも言えない感動を味わったのです。よく考えてみれば、小中高という成長期に毎日何時間も使ったものなので、身体化が為されない訳がありません。その上コクヨの企業努力によって、シンプルさの中にも様々な工夫がなされています。塾を訪れた友人達も、椅子に座ると必ず「おー、懐かしい」と言いますが、その「おー」の中には、身体化されたものへの快適さも含まれているように思います。
健全な肉体に狂気は宿る
集団行動というのは、草食動物の生存戦略上非常に重要なことだそうです。ライオンに襲われたとしても、不運な仲間が捕らわれる間に逃げ出せますし、集団が大きいほど自分に降りかかるリスクは減少します。
人間の母親にとって、子供とは「弱い生物」に他なりません。常に気にかかり、降りかかる災難を少しでも回避させたいと願います。弱い生物は孤立しては生きられないことを本能的に知っていて、子供には必ず生き延びてほしいという切ない親心は、子供が多数派に属するように圧力をかけます。
普通に学校に行け、普通に勤めろ、普通に結婚しろ、普通に子供を育てろという圧力は、弱いはずの我が子にとって不可欠な生存戦略だという確信から生まれるものです。そのため、親の「ふつう化」への圧力は際限なく続いていきます。
こうした「ふつう化」戦略は、社会が安定している時はかなり有効だそうですが、社会(生態系)の地殻が変動している時は、ふつう化戦略が必ずしも成功するとは限りません。そこで重要になるのは、変人戦略だそうです。
草食動物の集団は、ハイエナの集団に突っ走っている可能性があります。崖に追いつめられつつある可能性もあります。そのような時は、たとえ集団の中にいてもリスクは格段に高まります。それにいち早く気付くことができたり、集団の端に陣取ることができれば、逃げ出せる可能性は高まります。
ふつう化戦略をとるのか、変人戦略をとるのか。それはひとえに、個人の時代認識によって定まってくるように思います。
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