今回は、ロックの新人・高崎美佳さんの大阪東洋初乗りの模様を「狐の嫁入り」と題して語ります。
さて、美佳さんのステージ模様を話そう。
太鼓・笛の音が聞こえる。そして、かごめかごめ♪の童謡が流れる。
紫の着物を着た女性が浮かび上がる。着物地には白と緑の葉を付けた赤い花がいくつも点在。赤い帯を締める。両腕で黒いかつぎを頭上に持ち上げ、顔を覆っている。妖しい雰囲気が漂う。
かつぎを取ると、狐のお面が現われる。白いお面に赤い線で狐の顔が描かれている。赤い二つの耳、妖しく釣り上がった目、突き出た鼻、目の上と左右の頬に三本の髭、そして口元が妖しく左右に裂けている。
彼女はゆっくりとお面をとる。優しそうな面長の日本女性の顔。私はその美しい顔立ちに一瞬で心を奪われた。彼女が狐でもこのまま化かされていたい、そんな気分(笑)。
花いちもんめ 後ろの正面だぁれ♪ 童謡が流れる。
彼女は一旦、着物のままお盆の上に進み、素足に赤いハイヒールを履く。
そして舞台に戻って、着物を脱ぐ。
黒い軽装なドレス姿に。上半身はブロック柄、膝丈のスカートは縦縞柄で透け透け。手に赤い花(牡丹?)を一輪もつ。頭上の赤いリボンと赤いハイヒールと合わせて、赤の三点がポイントになっている。
ベッドショーでは、最初の紫の着物を羽織って盆に移る。
近くで見る美佳さんの美貌に酔いしれる。長い黒髪が胸まで垂れる。白い肌が映える。形のいい乳房、ふっくらした大きなお尻、薄めの色をした陰毛が性器の周りに広範に生えていてエロさをそそる。バランスのいいヌードにうっとり♡
ベッド曲の最後に、演目名になっている東京事変の「夢のあと」が流れる。
「狐の嫁入り」というフレームが浮かぶ。辞書には次のように解説されている。①.日が照っているのに、急に雨がぱらつくこと。日照雨(そばえ)。天気雨。②.夜、山野で狐火が連なって、嫁入り行列の提灯のように見えるもの。
この「狐の嫁入り」の由来について、次の三つの説がある。
1. 狐を生け贄(いけにえ)にした
2. 狐を隠している
3. 狐に化かされている
それぞれの話を紹介しよう。
1. 狐を生け贄(いけにえ)にした
昔、ある村で長い間雨が降らず、田畑が干上がり農作物が育ちませんでした。困った村人たちは神に生け贄を差し出し、雨乞いをすることを計画します。
何を生け贄にする? 「狐にしよう」
どうやって掴まえる? 「騙してやろう」
人間に化けるのが得意な、女狐がいました。
村一番の男前の若者が狐に近づき、自分の結婚を持ちかけます。
嫁入りに来たら、殺して生け贄にするという計画。
交際しているうちに、二人は心を通わせるようになりました。そして狐は、若者の本当の目的に気が付く。
それでも狐は嫁入りを決意します。
若者のため、村のため生け贄となり、狐の流した涙が大粒の雨となって、村中に降り注いだのです。
2. 狐を隠している
ある狐の娘、嫁入りが決まりました。めでたいということで、親戚そろって娘を連れて嫁入り行列をしようということになりました。
ところが、人間の村の中を狐がぞろぞろと行列をつくって歩いた日には、一斉に掴まえられるに決まっている。
雨でも降っていれば少しは視界がぼやけて見えないのに、めっちゃ晴れてるし。それでも、狐たちは、精一杯の雨乞いをした。すると、自分たちの周りだけ雨が降り出した。
狐たちは雨を降らしながら足早に村を通り、無事に嫁入りすることができました。
そうとは知らない村人たちは、なんで雨が降っているのか謎のまま。狐って雨を降らせるんだーという話になりました。
3. 狐に化かされている
昔ある地域では、提灯(ちょうちん)の明かりをともしながら夜中に嫁入りをする風習があったそうです。
めでたい行事ですし、村を挙げてお祝いをする日になります。
「明日は、与作んとこに嫁くるべ」
「来週は、田子作んとこに嫁くるべ」
村の掲示板には、最新の嫁入り情報が張り出されたことでしょう。
そんなある日。
村はずれの森の中から、ポツリと小さな火の灯りが見える。今日は嫁入りの予定は無かったと思ったけど・・・
ポツポツポツ。灯りは増えて漂います。
フワフワ揺れているが・・人の姿はない!?
謎の灯りを鬼火とも呼ぶ。これは狐が人間に隠れて行っている、嫁入り行列だろうと言われるようになった。
一番スタンダードな説は、二つ目に紹介した「狐の嫁入りを雨で隠す」のようです。
私には、最初の女狐の悲しい伝説が心に残りました。
今回の美佳さんの演目「夢のあと」を拝見して、私なりの現代版ストリップ童話「狐の嫁入り」が頭の中を流れた。
平成28年9月10日 大阪東洋ショー劇場にて
『夢のあと -ストリップ版「狐の嫁入り」-』
~高崎美佳さん(ロック所属)の演目「夢のあと」を記念して~
ある山の麓の村に一人の青年が田畑を耕して暮らしていました。名前をサワテと言いました。
彼は気が優しくて力持ちでしたが、女性にはとんと縁が無く30歳を越えた今も未だに独身。あまり女性にモテそうな顔をしてませんね。そのため、彼の趣味といえば町場のストリップ劇場に行くことくらいでした。
山の麓ですから狐がよく出没し畑を荒らしました。
「こらぁー!このいたずらキツネー!!」
一匹の白いキツネが家の中から飛び出てきました。口に魚を咥えています。
サワテが外に出たときには、キツネはもう山の中に隠れてしまいました。
「困ったキツネだな。今回はポラまで散らかされてしまった。・・・」
サワテは町のストリップ劇場に通い、踊り子のポラ写真を蒐集していました。いつもポラ写真を小まめに整理していましたが、机の上に置いていたポラ・アルバムを蹴散らされ、ポラは散らばるわ、汚されるわで散々な状態でした。「食べ物を盗るだけでなく、こんな悪戯までするとは・・・」気の優しいサワテも自分の趣味を穢されたのが我慢なりません。そこでキツネを捕える罠をつけることにしました。
翌朝、畑の中で、まんまとキツネは罠に掛かっていました。
サワテが近づいてみると、キツネは死んだようにぐったりしていました。最初しめしめと思っていたサワテでしたが、左足から流れる血がキツネの白い毛を真っ赤に染めているのを見て気が動転しました。死に物狂いで罠から抜け出そうとしたんだな。すぐに罠を解いて「悪いことをしてしまったな。これに懲りて二度と悪戯はするなよ。」とキツネを放してあげました。
その晩、サワテはいつものように町のストリップ劇場に行きました。
「本日、期待の大型新人デビュー!」と大きくポスターが貼られてありました。新人好きのサワテの心が激しく疼きました。
新人がステージに現れた瞬間、サワテは息を呑みました。
紫の着物を着て、黒いかつぎで顔を覆っていたのですが、かつぎを取ると・・・そこに、狐がいるのです。いや、狐のお面が浮かび上がる。白いお面に赤い線で狐の顔が描かれています。赤い二つの耳、妖しく釣り上がった目、突き出た鼻、目の上と左右の頬に三本の髭、そして口元が妖しく左右に裂けている。
サワテは自分と視線が合ったような気になり、身動きができなくなりました。
彼女はゆっくりとお面をとりました。優しそうな面長の日本女性。サワテは彼女の美しい顔立ちに一瞬で心を奪われました。なんてキレイな娘だろう~♡
愛くるしい笑顔、透き通った白い肌、ふくよかな胸、きゅっとくびれたウエスト、大きく形のいいお尻。しかも、まるで獣のようにシャープな動きをしました。ベッドでは妖しい流し目をサワテに送りました。また命がけのような迫真の演技に心を掴まれました。サワテは一目で彼女の魅力に嵌ってしまいました。彼女の名前はミカ。
彼女の虜になったサワテは毎日のように劇場に通い、畑で採れたばかりの旬の野菜をミカに差し入れしました。ミカはにこっと笑って、彼の差し入れを受け取りました。時に、サワテは長い手紙をミカに渡しました。そこにはミカに対する純粋な熱い気持ちが書き綴られていました。ミカもサワテを気に入り、サワテが来ない日には「サワテ、来―ん、コン、コン、コン」と淋しがりました。
いつしか二人は恋に落ち、結婚することになりました。とても仲睦まじい夫婦生活が始まりました。
しばらくストリップ通いを止めていたサワテでしたが、長年の趣味だったので、ついついミカの目を盗んで劇場に通い出しました。こそこそしながらも嬉しそうにポラの整理をしているサワテを見ていて、ミカは黙って見過ごしていました。踊り子をしていたミカは彼の気持ちを理解してあげてました。
ところが、サワテはミカに嘘をつきました。劇場に行きたいために、つまらない嘘をついてしまいました。ストリップに理解のあったミカでしたが、嘘は許すことができません。
三度目の嘘をついた晩、ストリップ劇場から帰ってきたサワテは、ミカが家にいないのに驚きました。
隠していたポラ・アルバムが机の上に散乱していました。そして、一枚の手紙が置いてありました。
「私は、あなたに命を救われたキツネです。どうしても恩返しがしたくて、踊り子になりました。あなたの家で、ポラ写真を見つけて、あなたがストリップファンであることを知り、また好みの女の子も写真で大体分かりました。お蔭で今のミカに変身することができたのです。
そして、私のことをお嫁にしてくれてありがとう。でも、平気で嘘をつくようになったあなたと、これ以上、夫婦でいることはできません。
あなたは私のこと以上にストリップを愛しています。ストリップと結婚してください。お元気で。さようなら。」
サワテは夢から覚めました。本当に大切なものを失ってしまったことに気づきました。
突然、雲ひとつない空なのに、小雨が降ってきました。
サワテの頬が濡れていたのは、小雨のせいなのか、涙のせいなのか分かりません。
おしまい