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私が老健の介護士の採用担当だった頃の話。
とある日の昼間に「見学したいんですけど」とアポなしの来訪者、聞けば就職先を探しているそうです。
30代後半〜40代の男性で普段着、履歴書等はなし。
当時はコロナ禍でもなかったので、私はすぐ見学にお連れしました。
見学中に何度も確認したものの、一切の質問がなく、話を振ってもほぼ無言で視線も合いません。
施設側から見ると、とてもここに就職する気があるとは思えませんでした。
見学後に男性の顔を見ると、何かを噛み締めるように上を見て泣いています。
私は思わずギョッとしたものの、「これで見学は終わりです」と伝えました。
すると男性は、タオルで涙を拭きつつ小さく「ありがとうございました」と言って帰って行かれます。
当時は冷やかしの類いかもとか、変な人だとか、そんな風に思っただけでした。
けれど、ひきこもり支援のボランティアをしたり、企業在籍型ジョブコーチの研修を受けたりした今になって考えると、あれはあの人にとっての社会復帰への一歩だったのかもしれません。
確認のしようがないので想像にはなりますが、あの男性が望むことが今できていることを願うばかりです。
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