介護業界で働こうかな?と迷っている方に向けて、よく聞く問題の一つ『介護業界の人間関係は悪い』について検証していきます。
※今回するのは入所施設限定の話です
まずはデータから考えてみましょう。
公益財団法人介護労働安定センターが令和元年度に実施した「事業所における介護労働実態調査(事業所調査)」
この調査によると「一年間の介護職員の離職率」は16.0%、対して全産業の平均は14.6%となっています。
このデータを見ると離職率はやや高いものの、他の職種に比べ飛び抜けているという程ではないことが分かります。
また、「離職者の勤務年数」の項目では勤務年数が三年未満の離職者が全体の66.1%と新人程辞めやすい状況といえるでしょう。
ただ、新人程辞めやすいというのは介護業界だけに限らず、全ての会社に当てはまる傾向ではないでしょうか?
介護という職種自体が合わなかったり、実際に働いてみて労働条件が合わなかったり。と辞める原因は色々予想されるので、このデータだけでは『介護業界の人間関係は悪い』とは言えません。
では次に同センターが同じ年度に実施した「介護労働者の就業実態と就業意識調査(労働者調査)」のデータを参照してみましょう。
「前職(介護関係の仕事)をやめた理由」の上位3つは
●職場の人間関係に問題があったため 23.2%
●結婚・出産・妊娠・育児のため 20.4%
●法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため 17.4%
となっており、離職理由に人間関係が大きく影響していることが分かります。
やはり『介護業界の人間関係は悪い』のでしょうか?
施設で働いている人はどう思っているのか見てみましょう。
「現在の仕事の満足度」の項目内の「職場の人間関係・コミュニケーション」の満足度はどうか?
という質問に、やや不満足・不満足と答えた割合は18.8%で、最も多かった「賃金」のやや不満足・不満足の割合45.1%に比べると大分低い事が分かります。
全体で比べても、この項目の質問内容12問の中でやや不満足・不満足と答えた割合が3番目に低いので、仕事を続けている人たちは人間関係に余り不満を持っていないことが分かります。
今までのデータから、介護業界は「新人に厳しい施設が多いが、一度受け入れられると居心地が良くなる。」という見方ができます。
「人間関係が悪い」というより「合わない人間が排除されやすい」という方が正確ではないでしょうか?
ここで、より深くこの問題について考えるためにも、何故「合わない人間が排除されやすい」か?を実際に働いている立場から紐解いていきます。
先程のデータにも有ったように新人職員の離職率はやや高いです。
反対に新人の時代を乗り越えた人の離職率は低く、長年働いている人たちが一定数います。
大抵の場合は各部署のリーダークラスはこの「長年働いている人たち」が占めており、中心メンバーはベテラン勢で固められているケースが多いです。
そして、施設とはある種の独立国みたいなものなので、同じ施設形態でも風土やルールが全然違います。
そのため独特な職場の雰囲気ができやすくなります。
このベテランメンバー間で形成された暗黙のルールと独特な職場の雰囲気こそが、「合わない人間が排除されやすい」環境を作る要因となっているのではないでしょうか?
それに新人職員側から見ても、「介護経験者であればどの施設でも採用されやすい」という人手不足の業界ならではの事情を知っているので、一つの施設に固執する人は少ないようにも思えます。
つまり閉鎖的な職場環境と慢性的な人員不足こそが、この問題の原因といえるのです。
ここまで見てくれた方は「新人に厳しいなら働くのがイヤだ。」と思ったかもしれません。
そんな人に向けて最後に一つデータを見てみましょう。
先程挙げた調査「介護労働者の就業実態と就業意識調査(労働者調査)」の「今後の能力・スキル向上の意欲」の項目で、72.8%の人が今後も能力やスキルを高めていきたい。と回答しています。
このデータから分かるように、介護業界は前向きで向上心のある人が多い業界なんです。
そして介護、つまり「人の生活の手助け」を長年している人は、忍耐力も優しさもある人が多いのも事実です。
現在国としても介護に関するデータを各施設・事業所から集め、「良いケア」の共通認識を定める取り組みを始めています。
おそらく閉鎖的な職場環境は今後解消されていくでしょう。
今、介護の仕事をしようか悩んでいる人は「合わないなら別の施設に行けば良いや。」ぐらいの気持ちで介護業界に来てみませんか?
必ずあなたに合う施設があるし、あなたの成長にもつながります!
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