野球ではバッターの打率がとやかく言われるが、
芝居で大事なのは打席だ。
つまり、舞台に立つこと、
映画やテレビに出演することだ。
映画やテレビに出てもセリフが
少なく、芝居できなきゃしょーがないが。
うちの柴田は仮面ライダーにレギュラー出演していたそうだが、
芝居の稽古でセリフがしどろもどろで、
よく叱ったものだ。
猫 「セリフくらい覚えてこいにゃん!」
柴 田「こんなに長いセリフ、なかったもんで(汗)」
なんて会話がなされていた。
今は、台本渡すと、次の日には完璧に言えるようになっている。
おまけに、唐十郎の『少女仮面』では
二幕まるまる一人芝居で腹話術師を演じていた。
そうなのだ。
打席に立たないと打てないし、
打率も上がらない。
先日のロケハンで大阪芸大を卒業後、
デジタルハリウッドという専門学校へ進み、
映画の制作の助手をしている若い奴Tと出会った。
Tも関西出身でロケハン時、クルマを運転してくれたのだが、
後部座席でプロデューサーがいろんな映画の話しをしているのに、
全然、観ていない。
「おまえさぁ『ミリオンダラー・ベイビー』観てないの?」
「はい」
「『許されざる者』も?」
「観てません」
「おまえさぁ……映画の世界で働きたかったら、映画くらい観ろよ!」
と怒られていた。
舞台の世界でもそうだ。
うちの舞台のオーディション受けに来て通っても、
うちの舞台を観にこない奴がいる。
ナニ考えてるンだ?
ナニも考えてないンだろうな。
ロケハンの二日目、
温泉に泊まらせてもらったので朝風呂に入ると、
Tがいた。
「おまえさ、Pに映画観ろって言われてたけど、
日本映画とか、本当に観てないの?」
「いえ、少しは観てますよ」
「どういうの? ホラーとかか?」
「最近じゃ……『失恋殺人』とか……」
「ああ、宮地真緒が裸になったやつね……あいつ、
うちの舞台に出たことあるンだよ」
「へぇ……そうなんですか」
と、食いつき悪い。
「あ、『花と蛇』は全部観ました」
「杉本彩と小向美奈子の裸ね」
「あと、最近じゃ『ヌード゙』も観ましたね」
「それオレの知り合いのプロデューサーが噛んでるやつだよ」
「ちょっと前だと、『さよならみどりちゃん』とか……」
「それも星野真理が脱いでるやつだろ……じゃあ『蛇とピアス』は……」
「観ました……何回も……グフフフ……」
「う~ん、そこまで観てるとは……本当に好きなんだね、そういう
ジャンル……」
「あと、真木よう子の『ベロニカは死ぬことにした』も観ました」
「それも真木よう子が脱いでるね」
「夏川結衣が脱いでる『夜がまた来る』も、
佐藤寛子が脱いでる『ヌードの夜2』も観ました!」
「もういいよ……おまえが(あるジャンルに関して)
映画をよく観てるのは、よぉおおおくわかったから!」