このコラムについて
このコラムは、元官僚として霞ヶ関・永田町界隈でお国のために汗を流していたくま先生が、なかなか外からはうかがい知れない公民の裏側を面白おかしくお伝えするものです。
コラム
元官僚のくま先生がこっそり教える
公民の裏側
(毎週土曜日更新)
目次
第7回 漢字が苦手な総理大臣!?
第8回 根回しとはー小〇進次郎に
気に入られたくま先生
第9回 スペルミスが命取り!?
条約交渉の現場
第10回 まるでシンゴジラの世界…
官邸危機管理センター
第11回 ここまでする!?がんば
れ黒子の官僚たち!
根回しとは?
先日のコラムで書いた通り、多くの重要法案は国会ではなく、内閣が作ります。
とはいえ、国会で審議され、議決されないとその法案は「法律」にはなりません。その意味で、国会はやはり「国権の最高機関」であって「唯一の立法機関」なのです。
そのため、内閣から法案を提出するとき、官僚のみなさんは、その法案を国会で「可決いただく」ためにあらゆる手段を講じます。
与党の各種会議での事前説明や、国会スタッフ(調査室)へのご説明、議員からのどんな質問にも即座に対応できるよう、答弁に立つ大臣へのノータイムでのカンペ差し入れ(笑)…など、さまざまありますが、最も重要なのが「根回し」です。
いったい「根回し」とはどういうものなのでしょうか?
根回しのテクニック
根回しとは、法案を出した省庁の担当者が、国会議員の部屋を個別に訪問し、法案の内容のご説明や、質問への回答などを行い、法案への賛成をお願いするものです。
とはいえ国会議員の数は713名(衆465、参議248)。対して法案作成チームで国会議員に対面で説明できる資格のある人は(法案の規模にもよりますが)せいぜい5人前後。
根回しは通常、衆議院・参議院それぞれ1~2週間程度で行う必要があるので、この人数では全く足りません。
そこで、
・そもそもご説明にいく国会議員の数を絞る(担当部会/委員会所属の議員をはじめ、法案に関心の高そうな議員を優先。さらに、元自省庁の大臣など、仁義上説明が必須な議員も根回し必須。)
※「部会」は党内で法案を審査する組織、「委員会」は国会内で法案を審査する組織です。
・説明可能な官僚を増やす(局次長級や総務課の幹部など、法案の内容を知らなくても「顔」で押し通せる人や、法案担当課のOB・OGに法案を即席でレクチャーして協力してもらう)
などの工夫を通して、可能な限り多くの議員のところへ根回しできるように調整します。
また、国会議員の「格」に合わせて、格が高い議員には事務次官や局長などを、格が低い議員(野党若手など)には課長補佐を割り当てるなどの工夫も必要です。
このように誰に誰を合わせるかを考え、かつ省庁側と議員側のスケジュールを調整し、なるべく説明者のタイムロスを少なくする(●●議員の説明を終わらせたら、その足で同じ議員会館(※)の●●議員を回れるようにする等)…という神業的な調整テクニックが必要で、これができる方は法案審議の際に重宝されます。
※国会議員が普段執務している会館。衆議院が2つ、参議院が1つの合計3つあります。
小泉〇次郎議員に気に入られたくま先生
私は法案チームに4度(も!)所属していましたが、3度目のチームは法案の規模のわりに超少数チームで大変な思いをしました![]()
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この法案は様々な省庁と合同して作成したもの(いわゆる「束ね法」)だったので、根回しが必要な議員の数も普段より膨大。とてもいつもの布陣ではまかないきれないというので、当時まだ係長だった私も、異例措置として、根回しへの単騎出陣を何度も命じられていました。
他省庁は40代後半~50代の課長や局長レベルが首をそろえる中、一人だけ30代半ば(当時)の若造くま先生がまじって法案の担当部分を説明していたのを思い出します。
その根回しの際に出会ったのが防衛大臣として今をときめく小〇進次郎議員です。
おじさんばかりの布陣に一人若いのがいた(実はくま先生は小〇進次郎と同い年)のが目立ったのか、はたまた元塾講師のスキルをいかした華麗な説明(?)が印象に残ったのかはわかりませんが、説明やQ&Aの後に、
などと気さくに話しかけられ、私一人だけ名刺交換をお願いされました。
当時小〇議員は自民党のとある部会の部会長で、この法案はこの部会を通すことがまず大きな関門でもあったので、小〇議員が機嫌よくこの法案を認めてくれたのは内閣全体としても朗報だったようで、「なんか一緒にきていた〇〇省の若い子が小〇議員と仲良くなって、いい雰囲気になって助かった」と噂になってたよ!と他省庁の人から聞かされました。
一人ひとりの議員さんを回ってご説明するのは大変な労力ですが、面と向かって話してこそ、各議員のこだわりや思い、人となりがわかるので私はけっこう根回しは好きでした。
ただ、野党はちょっと大変でしたね。特に官僚出身の野党議員はなまじ頭がよく(←失礼)、こちらの戦略を知っているだけに、法案のイタいところをついてきて対応するのに大変でした…。
特に、私が担当していた法改正の内容に何度か食いついてきた某議員は手ごわかった…。いまや「野(や)党」でもない「与(よ)党」でもない「ゆ党」といわれる某政党の代表になられ、政策的にはまっとうなことを言っていると思うのですが、当時の苦い思い出が影響して、いまだに好きになれません苦笑
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