ちょっと前までやたらと、「即戦力」 人材求む なんていうことが言われました。今も言われているのでしょうか。
最近はちょっと変わってきているように感じます。
お付き合いさせていただいている中小、中堅の製造業さんや講演会などで伺うところでは、中途で採用してもうまくゆかず、結局新人を一から教育するということの大切さを実感されている企業が増えてきたということなのでしょう。
問題は、新人に対して今の設計がなぜこうなっているのか をちゃんと説明できるかどうかにあります。
例え話でいうと、スイッチ接点を検知し、スイッチが押されたかどうかをソフトウェアで検出するやり方を考えてみます。
普通に考えると、接点から線を引っ張ってI/Oポートのどれかにつなぎ、そのポートがH(もしくはL)、つまり1(または0)になったかを定期的にチェックする というようなプログラムを書けば良いのですが、実は単純にこうやるとうまく行かない。
スイッチというのは小さなメカ部品でできていて、人間が指で押すと数十msか数百msの周期で接点が跳ねる、ミクロな範囲でバタバタと振動します。(接点がチャタリングするといいます)
本当にスイッチが押されたのかどうかを確実に判定するためには、1(または0)になったかどうかを最初に検知した後、数十ms間隔で2、3回同じ確認をする必要があります。
こうした実際のモノの挙動、物理現象を理解した上で、制御のソフトウェアも作られていますが、こうした基本的なことを隅から隅まで全て経験し理解するというようなことはなされない。過去の数十年間に行われてきた細かいことは所与のものとして、教えられることなく、ここを直す、あそこにちょっと追加するというような開発しているのが今日の状況です。
自動車のブレーキを踏んだ時にブレーキが踏まれたというアクションを検出するロジックなども同じです。今の検出方法に至るまでたくさんの経験・ノウハウが蓄積されているはずだが、そうしたものがどこにも書き残されておらず、人の頭の中にしかない。その人が定年退職したらどうなるのか。
日本初の航空機である、MRJがなかなか離陸できず、手こずっているのも根本的には同じ課題です。つまり、航空機をゼロから作ったことがある人がどこにもいない、にも関わらずそれをやろうとしているわけです。自衛隊の戦闘機を作っているじゃないか、民間機だってライセンス製造しているじゃないか と思われるかもしれません。
でも、戦闘機と民間旅客機ではクリアすべき内容、事項が異なりますし、極論すればアメリカ人が作ったものをそのまま製造するだけ。事実上アメリカが世界の飛行機の設計、認証を支配してきたため、日本には航空機の基本原理を熟知した上で設計できる人、その設計で良いとか悪いとかを判断できる人がいません。
次の世代の技術者を育成するには相応の時間、手間暇をかけなくてはならないはずだと思います。