里中満智子「女帝の手記」5巻:目から鱗のあとがき | 停車場遍路の鉄道雑記帳(副)

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予約の順番が回ってきた。順番待ちの1番になったのが1月15日で、受け取ったのは1月30日である。4巻を延々と待ったことが嘘のようだ。

 

さて、いよいよ道鏡事件なのだが、いい意味で裏切られた。道鏡は最後まで野心の無い人物として描かれていた。途中で豹変するのだと思ってた。

 

もちろん、孝謙上皇⇒称徳天皇が道鏡を寵愛し天皇同等に扱ったところはブレてない。その他出来事の基本軸も同様だが、枝葉は一貫してフィクションならではの展開である。この作品の醍醐味なのでネタバレは控える。

 

それでも印象的なシーンを1つ紹介したい。

 

「道鏡に野心がなくとも付け入る輩は多い(から過度な昇格は控えるべき)」と、吉備真備が称徳天皇を諫めるも聞き入れない。その夜、晩酌の量が多いと注意する娘に真備が「私は歳を取りすぎた」とぼやく。

 

 

さて、このような作品とした作者の意図は「あとがき」で明かされる。ざっくり言えば「今の世に伝わる醜聞は藤原氏の創作ではなかろうか」ということだ。

 

藤原氏は大化の改新から天皇と姻戚であり称徳天皇も藤原の血筋である。幼いころから藤原の権力争いを見てきた称徳天皇はそれに嫌気がさして藤原の権力を削ごうとした。その意趣返しである。

 

この藤原内部でのドロドロは大河ドラマ「光る君へ」でも観られる。平安時代になっても相変わらずということだ。

 

 

作者は定説とは別の人格を文字(つまり筆跡)から読み取ったそうな。一次資料によるってのは史実を探求する上での基本姿勢であるが、独特のアプローチだと思う。

 

いずれにせよ楽しく読めたが、皇位簒奪の危機の経緯を掘り下げて確認するという私の目的は果たせなかった。かといって、お堅い歴史書を読むのは億劫なんだよなあ。

 

過去記事リンク張っときます。