大河ドラマ『光る君へ』“勝手に解説”~第十三回(2)ー②『紫式部集』と越前国 | 愛しさのつれづれで。〜アリスターchのブログ

大河ドラマ『光る君へ』に関して、勝手に、私感含めて書いております。ネタバレは~という方はご注意ください。

読み進む前に「はじめに」をご覧いただければ幸いです。



 

②『紫式部集』と越前国

『光る君へ』の中のまひろは、道長との恋に区切りをつけハートブレイク珍しい宋人に会えることや未知の世界へ行けることへの期待キラキラを膨らませて旅立ちます。しかし、紫式部自らが歌を選んだ『紫式部集』の中の越前での歌には都を恋しがるものが多く存在します。

例えば、越前にやってきて初めての冬、初雪の舞う日に越前富士と称される日野山に降り積もった雪を眺めながら詠んだのは

 ここにかく 日野の杉むら埋(うづ)む雪雪の結晶

 小塩の松に けふ(今日)やまがへる

※小塩=京都市西京区にある小塩山のこと。麓には大原野神社が鎮座する

(日野山の杉林は雪に深く埋もれんばかりである。都の小塩山の松にも今日は雪がちらちらと降っているのだろうか)

 

おそらく二十代半ば(当時の結婚適齢期)くらいの紫式部が、なぜ越前という地方にやって来たかについては恋愛で負った傷を癒すため(※道長ではない念のため)というもののほかに、(母親と姉が既に亡くなっていたので)為時の世話をする者が彼女以外にいなかったからという説があります。

『光る君へ』第21回で文章生となった惟規の世話をするため、侍女のいとは都に残る決断をしています。これはおそらく後者を踏まえての事かと思われます。

『紫式部集』は式部自身が選んだものですので、彼女の内実がどうだったかについて完全に知ることなどできません。この点においても『光る君へ』は非常に絶妙に”一つの可能性としての紫式部像”を描いていると私は思いますニコニコ