大河ドラマ『光る君へ』“勝手に解説”~第十回(3)ー③道隆の関白辞職と随身問題 | 愛しさのつれづれで。〜アリスターchのブログ

大河ドラマ『光る君へ』に関して、勝手に、私感含めて書いております。ネタバレは~という方はご注意ください。

読み進む前に「はじめに」をご覧いただければ幸いです。



③道隆の関白辞職と随身問題

ゴタゴタの中で「内覧」となった伊周は、疫病対策として臨時の祭や読経などに追われ、他の政務どころではなかったようです。それでも少しは伊周の関白への道を開いたことに安堵したのか、四月三日に道隆は正式に関白辞職の上表を行います。また関白に特別に下されていた随身(近衛府の下級官人で貴人の外出時の護衛を担う)も返上します。ただし、藤原氏の首長(代表者)を表す氏長者印は道兼に譲ることになります。

すると翌日の四月四日、伊周は関白が返上した随身を自分に支給するよう一条天皇に奏上します。内覧をしているとはいえ内大臣でしかない伊周が、関白に与えられる特権である随身を賜うのは前例にないことです。伊周としては随身を与えられることで、権力者として自分を認めさせようとしていたのかもしれません。

これに対する一条天皇の答えは「関白道隆の随身を復活させる」というものでした。『小右記』には事務方トップの頭弁・源俊賢がこの結果を伝えにいくと、伊周は猛然と一条天皇の元へ行って抗議ムキーこれに一条天皇は改めて俊賢を召して「先例があるなら内大臣に随身を与える宣旨を出すべき」と指示します。俊賢がこの考えについて道隆に意見を求めると、道隆はいっそのこと伊周を関白にして随身を与えてはどうかと言って憚りません。翌五日の朝に道隆の意見を伝えに戻った俊賢でしたが、一条天皇は「気色不快」イラッとなってしまいます。一条天皇の中では伊周を関白にするかどうかの問題ではなく、あくまでも道隆が不在の場合の対処について論じているので当然と言えます。随身については、執政者でない者に支給された例として源融の例を伊周が出してきたのでこれを承認します。ただし実資の調べる限りでは源融の例は見つからないらしく(『小右記』)一条天皇の中関白家への配慮が窺えます。

 

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