大河ドラマ『光る君へ』に関して、勝手に、私感含めて書いております。ネタバレは~という方はご注意ください。
読み進む前に「はじめに」をご覧いただければ幸いです。
(2)中関白家の転落
①藤原道隆という人物
さて、『光る君へ』を見ていると、井浦新さん演じる道隆は何かというとお酒を飲んでいるのに気づきませんでしたか?
『大鏡』や『栄花物語』では、道隆は大酒飲みで酒癖の悪い人物として描かれています。有名なのが賀茂祭の見物に行った時のこと。下賀茂神社から上賀茂神社までの間に牛車に同乗した飲み仲間の済時や朝光と泥酔した上、あろうことか従者に簾を上げるように命じて、見物に集まった人々に冠を取って髪を乱して酔っぱらった姿をさらしてしまった、というエピソード。(『大鏡』)物語なので誇張もあるかもしれませんが、『栄花物語』は道隆がしきりに水を飲んでやせ細るさまを描いて飲水病(糖尿病)の可能性を窺わせますし、『大鏡』はズバリ「飲酒のせいで」と書いています。古代のお酒が今よりも甘いにごり酒だったことを考えるとおかしくありません。
『光る君へ』第十七回で道隆は貴子に対し
「目がかすむ・・・
手が痺れる・・・
のどが渇く」と訴えています。
第十六回、十七回の二回にわたり、内裏の詰め所で水を飲む量が増えていく道隆の様子が描かれました。苛立ったような様子は、ままならない政権運営に対するものだけではなかったことを示しているのでしょう。
いや~、やっぱり糖尿病って怖いですね
ところで『枕草子』、つまり清少納言はそんな道隆をどう捉えていたかというと、大酒のみではあったけれども、どんなに飲んでもシャンとしていて姿も優美で面白いことを言う人物だとの評価をしています。
どちらにしろ大酒飲み・・・( ̄▽ ̄;)
正暦五年(994年)十一月、ついに道隆は体調を崩して寝込んでしまいます。お酒に疫病の蔓延にと、健康にとってはよろしくない状況ですから仕方がありません。しかしこの事態に道隆は何と道兼が呪詛をしたと疑い、彼が懇意にしていた阿闍梨を検非違使に捕らえさせてしまうのです。言いがかりも甚だしいところですが、道隆側からすると定子から子どもは産まれず、次代を任せたい伊周はまだ若く頼りないので焦りもあったのでしょう。こうしてにわかに政権抗争の火ぶたが切って落とされることになったのでした。
(2)ー②に続きます