あの衝撃...2億年前の恐竜たちがまさに犬や猫と同じようにスクリーンの中で闊歩し現代人と共に存在する。あのリアルな映像、それまでのダイナメーション、ダイナラマ方式がまるでチープに思えてくる、この映像がどれほど自分に感動を与えたか。初めてそれを目にしたのはブロントサウルス、高い木の枝の葉を貪り食う姿、それを観るだけで心は踊りました。あの衝撃から32年、幾多の俳優たちと「共演」させ、3年前の「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」で今までの主演俳優たちを総出演させ、トラやライオン、ゾウやキリンたち猛獣と同様に世界各地に恐竜たちを放ち、「我々は他の猛獣たちと同じように恐竜たちと共存していく」と思わせたあのラスト。あれで一旦打ち止めかなと思ったのもつかの間、制作者たちの拝金主義なのか、はたまた「永遠の少年」スティーブン・スピルバークの見果てぬ夢なのか、たった...たった3年で恐竜たちは帰ってきた。今度はメンバーを一新。人気女優スカーレット・ヨハンソンを主演に置き、全く違った発想で物語を動かした本作「ジュラシック・ワールド/復活の大地」。あれほど世界中を熱狂させた恐竜たちは人々に飽きられ...と言う下りから始まるスピルバーグ独特の人類への痛烈な皮肉。さあ、新たな物語はどういった展開を見せるのか。
インジェン社による遺伝子操作で恐竜たちが誕生してから32年、彼らは5年前に世界各地に放たれたが気候や環境の変化に耐えきれず、また恐竜たちの間で伝染病が蔓延し劇的にその数は減りほぼ絶滅に近づいていた。そしてわずかに残った恐竜たちは彼らの生存に適した環境である赤道直下に近い孤島に自らの安住の地を求め集まってきた。世界各国はこの地区を立ち入り禁止にし、また人々の間でもあれだけ最高潮にあった恐竜熱も冷めつつあった。
そんな中、大手製薬会社の社員であるマーティン・クレブスは元特殊部隊の工作員であるゾーラ・ベネットにある危険な任務を依頼する。その任務とは画期的な新薬開発のため孤島にいる恐竜たちのDNAを採取すること。2人は専門家として古生物学者のヘンリー・ルーミス博士を仲間に加える。目的の種族は3種、海のモササウルス、陸のティタノサウルス、空飛ぶ翼竜ケツァルコアトルス。ゾーラは昔の仲間である傭兵のキンケイドとその部下を仲間に入れ、彼らの持つ船で赤道直下の孤島を目指す。
途中、モササウルスに襲われボートが転覆し、漂流していた家族を救助した一行だったが島に近づいた時、目の前に突然、モササウルスとピサノサウルスの一群が襲いかかってくる。なんとかモササウルスのDNAを採取したものの、船は転覆させられ全員が海に投げ出された。犠牲者はでたが一行はなんとか島にたどり着いた。あと2種のDNAを採取するため一行は島の奥地に進む。だがこの島はかつてインジェン社の研究所であり、その研究により異種交配で想像を絶するモンスターとなった恐竜たちの住処となっていた。
このシリーズにも定義があります。先週話した、ホラー映画の定義と一緒。ふざけ倒す若者、いわゆるパリピはまず生きて帰れない。このシリーズでは拝金主義、自分だけ助かりたい奴。気の毒やけど船長の部下たちは悪党ではないけれどまず喰われてしまいます。世界各地に生息する猛獣たちと同様、恐竜たちも分散しますが観る方は思います。ブロントサウルスやトリケラトプスのような草食恐竜ばかりなら楽しみもあるやろうけど、ティラノサウルス、ヴェラキラプトルみたいなのがウロウロしてたら人間は絶滅してしまう...と。だけど人間より強い猛獣はいくらでもいます。アフリカじゃライオン、インドじゃトラ、アメリカのフロリダやミシシッピーにもワニはおるし、日本でだってクマに襲われる。結構、やばいやばいと思いながらも、食われながらも人間はこの猛獣たちとある程度は共存しています。だから恐竜とも共存できるのかな...と。これが前作の締めくくりだと思っております。ところが本作ではやっぱりそれができなかった。物語はガラッと変わって恐竜のDNA採取。まあストーリーはこれからもなんぼでも頭をひねれば出てくると思います。これからもまだ出してくるんやろうと思います。それはこの作品で「悪」としている拝金主義なのか、それともスピルバーグの「夢」なのか。それは謎ではありますがこれからもしばらくはマニアには楽しみが増えていくんではないでしょうか。スティーブン・スピルバーグが元気な限りは...。