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サラリーマン社長のムービートラベル

「アノーラ」。2025年度アカデミー賞受賞作品。作品賞、監督賞、主演女優賞の主要3部門を含む計5部門の受賞。いわばハリウッドでは本年度の最高作品と称された作品です。還暦過ぎたおっさんが一人で観に行ってもなかなか納得させてもらえる作品です。若いカップルが観に行って心ときめかす作品...ではない。「プリティ・ウーマン」でジュリア・ロバーツが演じたようなシンデレラストーリー...ではない。どうしてもコミュニティから遠ざけられる若い娘の前に現れたプリンスは白馬に乗った王子さまではなく本物のクズだったと言うお話し。結論から言ってしまったけどそこが評価されたんやろね。お決まりのシンデレラストーリーではないところ。

舞台はニューヨーク、そしてラスベガス。ニューヨークの夜を彩るストリッパーとロシア財閥の御曹司が出会います。出会いは勿論、彼女の仕事場。言わば不純な動機。ああ、そこから真実の愛が...と思うやろ?

アノーラはニューヨークのネオン街で働くストリッパー。皆からはアニーと呼ばれている現代っ子。ある日、ロシア人の若者の相手をさせられる羽目に。祖母がロシア人でほんのちょっとロシア語が分かる。悪友と酔った勢いで店に流れ込んできたらしいが何の仕事をしているのか金を湯水のごとく使う。若者の名はイヴァン。彼の金払いの良さに惹かれたアニーは店外デートをOKし、イヴァンのブライトンビーチの邸宅へ。豪華な邸宅に目を丸くしたアニーはイヴァンがロシア大財閥の御曹司だと言うことを知る。一方、ベッド上での情熱的なアニーにすっかり魅了されてしまったイヴァンはロシアに帰るまでの7日間、15,000ドルで彼女に「専属契約」を持ちかける。彼の提案に乗ったアニーは店を休み、二人で贅沢三昧の日々を過ごす。アメリカ滞在の最後に二人は友人たちを誘いプライベートジェットでラスベガスへ。アメリカでの滞在が終りに近づくにつれアニーはお坊ちゃま気質だが奔放なイヴァンに惹かれていく。

「アメリカ人と結婚すればロシアに帰らなくて済む」そんな単純な発想でイヴァンはアニーに衝撃的なプロポーズ。戸惑いながらもアニーは受け入れ、二人は24時間空いているラスベガスの教会で式を挙げ夫婦に...。ニューヨークに戻り、幸せの絶頂にいた二人だったがこれを知ったイヴァンの両親は「息子が娼婦と結婚した」と激怒。アメリカでのイヴァンの御守り役だったアルメニア人の司祭トロスに二人の結婚を「無効」にするように命じる。トロスは部下のガルニクとイゴールと言う二人の用心棒を邸宅に送り込む。だが両親がロシアからやって来ることを知ったイヴァンはアニーを置き去りにして逃げ出してしまう。置き去りにされたアニーは大男の用心棒二人を相手に大暴れするが結局は縛り上げられてしまう。邸宅に着いたトロスはアニーに「結婚の無効」を迫るが頑として彼女は受け付けない。しかし結局はトロスたちに協力してイヴァンを探すことになる。気丈にイヴァンとの愛を貫こうとするアニーだったがイヴァンを探し回るうち現実を突きつけられていることを痛感することになる。

 

アノーラ(アニー)を演じたマイキー・マディソンはまさに熱演!彼女の演技と言うか、艶技と言うか...まさに「やりすぎ」とも思えるほど。これ以上は本作品を観てください。主演女優賞はなるほど納得です。前半のニューヨークやラスベガスで贅沢三昧(パリピって言うの?)を繰り広げるシーンは正直「胸糞」でした。ここから両親が登場して、二人が財産を失くしても愛を貫いて、真実の愛を掴み取る...ではないんやなあ。親のいないところで親に悪態ついても、所詮は最後の最後まで親に尻拭いして貰わないと何もできないクズ中のクズやった御曹司イヴァン。これから観る方、結論まで言って御免なさい。ラストで意味深なシーンがあります。無表情でボスの命令しか従わないと思っていた用心棒の一人、イゴールが結構、情も良識もあるいい奴だった。最初は「異常者」「レイプ魔」と罵っていたアニーも情にほだされたか本当の愛情を感じたのか、はたまた本当の男を感じたのかはよくわからないけど身を任せようとする。けど男の方がその気になると激しく抵抗する。そして結局、男の胸の中で泣き崩れる。うーん、女性の心理はわかりまへん。嫁や彼女がいるなら聞いてみたいがそれがいない自分には永遠の謎やね。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ショウタイムセブン」と言うのは夜7時からの報道番組の題名。当然、架空の番組。それがそのまま映画の題名になっています。昨今の〝オールドメディア〟と揶揄されるテレビの報道番組をやり玉にあげようと狙ったのかどうかはさておきアメリカなんかは1970年代から過激化する視聴率狙いの報道合戦に既に警鐘を鳴らしていました。その代表が監督シドニー・ルメット、主演フェイ・ダナウェイ、ウイリアム・ホールデン、ピーター・フィンチの「ネットワーク」。けどね、警鐘を鳴らそうと言うハリウッドに対して、〝オールドメディア〟と言う揶揄された言葉に乗っかろうとする日本映画はどんなもんかな?

この「ネットワーク」はアカデミー賞でピーター・フィンチが主演男優賞、フェイ・ダナウェイが主演女優賞を受賞。見事な作品でした。一方、本作「ショウタイムセブン」では阿部寛がかつてのアンカーマンを演じて頑張って張りました。かつてトップアンカーマンだった男がある事件をきっかけに番組を下ろされラジオの仕事に回されますが彼のもとに発電所の爆破予告が...これをきっかけに再度、表舞台に返り咲こうとしますが...。この作品では視聴率云々より政界とのからみが描かれていますが、芸能界のおバカタレントとのしがらみより、政界とのしがらみって描いた方が「品がある」って思とるんか?。あんまり変わらんと思うけど。

国民的報道番組「ショウタイムセブン」のメインキャスター折本慎之輔は真実に切り込む強引とも言える取材で人気絶頂の最中、ある出来事をきっかけに突然降板させられる。今は何のインパクトもない午後7時からのラジオ番組のパーソナリティに左遷されていた。同時刻の午後7時、テレビスタジオでは華々しく彼の看板番組だった「ショウタイムセブン」のオープニング。現在のメインを務めるのは安積征也と結城千晴と言う若い二人のキャスター。今の巷の話題は巨大企業、大和電力と政界との癒着。その頃、折本がパーソナリティを努めるラジオスタジオに「ウスバカゲロウ」と名乗る男から一本の電話が入る。

「今から大和電力城東火力発電所を爆破する」

折本は相手にせず、一笑に付し電話を切ったがその途端、スタジオが揺れるような地響きがする。思わずスタッフが局の窓から見た光景は遠くに見える大和電力城東発電所から燃え上がる火柱だった。一度は警察に連絡しようとした折本だったが考え直した。彼は爆破犯とのやり取りを生中継で全国放送で中継しようと考える。勿論、インタビュアーは折本自身。折本は自らを降板させたプロデューサーの東海林にこれをきっかけに「ショウタイムセブン」のメインに復帰させることを強引に承諾させ、爆破犯にインタビューを敢行する。

犯人はかつて父を大和電力の発電所事故で亡くした。だがわずかな慰謝料で事故をうやむやにされてしまったと言う。だがそこには思いもよらぬ犯人の別の思惑があった。「ショウタイムセブン」のスタジオで強引に犯人へのインタビューを敢行した折本であったが彼の思惑とは別に事態はより過激な方向へと進んでいく。

 

この番組での名物企画が「ザ・世論調査」。観ている視聴者にリモコン操作で二択のアンケート調査をとります。

「果たして総理は謝罪するでしょうか?」

生番組で視聴者にアンケート調査をする。ラストは「果たしてこれから折本慎之輔はどうすればいいのか?」で締めてしまうわけなんやけど、なんかな最後はふざけすぎ、やりすぎ。配役としては阿部寛はベストやろうけど、こういう役はこの人でないとだめと言う、プロデューサー東海林役は吉田鋼太郎。この人ウマい人やねんけどたまーに芝居が鼻につくときがあります。一人芝居でやたらに騒がしい。ここまで行くと「もうええやろ」となるわけです。難しいですよね、芝居と言うのは。テレビ業界の舞台裏を描き、演者、作る側を風刺したつもりなんやろうけどなんかどうもちゃちっぽく感じてしまいます。阿部寛、熱演やねんけど。

先にも書いた、かの名作「ネットワーク」と比べるのはあまりにも気の毒やねんけどテレビ業界の裏側を描いた作品でこの作品の右に出る者はないと思います。一人の人気キャスターが視聴率の下落を理由に降板させられることになる。精神的に不安定になった彼は番組で自殺を宣言。だが彼の奇抜な言動で逆に視聴率は上がり始める。だけど彼に目を付けた辣腕の女性プロデューサー(これがフェイ・ダナウェイ。こんな「悪女」をやらせればほんまうまいんだこの人)が精神が崩壊寸前のキャスターをより追い込んでいく。その果てはスタジオにテロリストを招き入れ...と言う猛烈にショッキングなラスト。ここまでするか...。

ちなみにこの年のアカデミー賞、この「ネットワーク」の他、作品賞に名を連ねたのは「ロッキー」「大統領の陰謀」「タクシードライバー」とまさに映画ファンならよだれをたらしそうな名作、傑作の当たり年。主演男優賞と主演女優賞は「ネットワーク」が、作品賞と監督賞は「ロッキー」が分け合いました。けど主演男優賞を受賞したピーター・フィンチはノミネートの直後に急死。死後にオスカーを受賞したと言う人はこの人だけやねんてね。

そう言えば我が家のビデオが不具合のため昨年と今年のアカデミー賞は観られませんでした。今年は「アノーラ」と言うニューヨークのストリッパーとロシアの財閥青年の恋を描いた作品が5冠をとったそう。近頃はこういったインディーズ系の作品が注目されています。うかうかしていると見逃してまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1972年9月ドイツ・ミュンヘン。4年に一度のスポーツ界一大イベント、ミュンヘン・オリンピック。ここでまさに驚天動地の出来事が起こりました。「イスラエル選手団人質殺害事件」。今でこそ厳重な警備の中、行われていますが大戦後27年、平和の息吹が世界中で芽生えながらも中東各地では地域紛争が絶えなかった時代。オリンピック選手村の襲撃なんて誰も予想していなかった...それをやってのけたパレスチナゲリラ。この頃、日本でも赤軍派が暴れまわっていた時代でした。テロだの革命だの、死者8,500万にとも言われている第二次世界大戦で人類は嫌と言うほど戦争の悲惨さを味わったはずなのに、それでも戦うことをやめない人間と言う生き物は憐れみさえ感じます。

そんな中でこの事件は起こりました。「平和の祭典」のはずがテロリストたちに格好のえさ場を与えてしまったのです。この事件はスティーブン・スピルバーグ監督で2006年に公開された「ミュンヘン」と言う作品でも描かれていますがどちらかと言えばこの作品は後日談。同胞を殺されたイスラエルがパレスチナゲリラ達に報復をしていくと言うもの。この作品は事件そのものを描いています。しかも凄いのはカメラはテロ行為を追わない。それどころかオリンピックの中継室の中から全く外に出ない。この事件を中継したのは社会部でも事件部でもない、スポーツ部のクルーたち。カメラは貴重なフィルムを治めました。しかし同時にこの放送を犯人側も観ることになり情報が筒抜けになったとの批判もありました。時代はようやく衛星放送が一般化されてきた時代。今、批判の的になっている「オールドメディア」の走りとも言えるかもしれません。しかしカメラが中継室から出ず、クルーたちの廊下を走る音、ドアを勢いよく開ける音、そしてクルーに扮した役者たちのあの緊張感だけで約90分間の緊迫したドラマを作り上げたこの作品はヒッチコックの「裏窓」を彷彿させます。

1972年9月5日未明。ドイツ・ミュンヘンでは4年に一度のスポーツの祭典、ミュンヘン・オリンピックも中盤に差し掛かり大きな盛り上がりを見せている真っ最中、クルーたちが交代しようとしたその時だった。8人の男たちが選手村に侵入。イスラエル選手団の部屋を占拠。コーチ一人と選手一人が射殺され9名が人質に取られた。一早く「異変」に気づいたのはアメリカのテレビクルーたち、しかもスポーツ専門のクルーたちである。彼らは自分たちの手で事件の記録をカメラに収めることを決意する。犯人グループはPLO(バレスチナ解放機構)の組織「黒い九月」のメンバー。彼らの要求はイスラエルに収監中のバレスチナ人と日本赤軍派のメンバー、そしてドイツに収監中の「ドイツ赤軍」のメンバーの即時釈放。だがイスラエル政府はこれを拒否。おまけにイスラエルの国防軍部隊を派遣することを要請してきた。ドイツ政府はこれを聞き入れられるわけもなく、ミュンヘン警察が対策に当たったのだが慣れない警察は対策が後手後手とまわる。そして事件は最悪の結末を迎えることになる...。

 

この時代はようやく衛星放送が一般化されるようになり世界中の人々がこの生中継を観ることになります。けれどそれは犯人にも情報が筒抜けだと言う事。それにこの事件の対応に当たったのが軍ではなく警察。この時のドイツの法律では軍隊が介入することができなかったとのこと。これはドイツに限らず、今では当然のように各国ともテロ対策部隊ありますがどの国もテロ対策には対応が不十分でした。この事件をきっかけに世界中の国がテロリストたちの対応するためテロ対策部隊の編成を始めたと言います。

この時の釈放要求のメンバーの中にテルアビブ空港銃乱射事件の犯人、日本赤軍派の岡本公三も含まれてたと言います。この時代は日本赤軍の全盛期、世界中で日本が注目されてた時もあったんですよね...悪い意味で。第二次世界大戦では悲劇の民族だったユダヤ人たちが戦後、ユダヤ人国家イスラエルを建国してからだんだんとイスラエルに対して風当たりが強くなってきました。そこに暮らしていたパレスチナ人たちを「追い出した」と言う思いは世界中の人々の中に反イスラエルの機運を高めることになってしまいました。けどイスラエルと言う国は大戦の教訓をいかし決して外圧には負けないと言う不文律があります。国際世論を信じない、自存自衛の戦いを続ける、この確固たる信念。それこそが5度にわたりアラブ周辺国の連合軍との戦いに勝ち続けている所以だと思います。だからへっぼこ首相、外道内閣に苦しめられる我々日本国民からすれば羨ましい限りです。北朝鮮拉致問題なんて絶対ないと思いますよ。サッと取り返しに行ってサッと戻ってくる。平然とやってしまうでしょう。立派な国家スタンスだと思います。

たった丸一日だけの出来事でしたがこの事件は世界中を震撼させ、各国ともテロ対策を講じることとなるきっかけを作った事件でありテロに対する認識を変えた事件でもあります。それにしても放送局の部屋の中だけで醸し出されるこの緊迫感。見事な作品だったと思います。