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サラリーマン社長のムービートラベル

何とも言えん、映画です。なんか子供時代を思い出して、「ああ、よくよく考えれば子供時代は皆、残酷やったなぁ」と回想してしまうような作品です。題名「Playground/校庭」。そう、カメラは学校の外にはでません。しかもカメラは最後まで子供目線で。大人の顔は子供に目線に屈まないと映らない。最初から最後まで物語の中心、少女ノラの目となり学校の中で起こる出来事を追っていきます。切ないと言うより、やっぱり子供って残酷やなぁ。

新学期...7歳の少女ノラは父と3つ上の兄とともに不安な面持ちで初めて学校へ登校した。「親御さんは校内には入れません」。学校職員に父との手を振りほどかれ教室へ。泣きじゃくるノラに兄のアベルはやさしく、「大丈夫だ。すぐに友達ができるよ。昼休みに会おう」そう言って別れた。人見知りなノラはこれからの学校生活が不安でしょうがなかった。昼休みになった。ノラは兄に近づこうとしたが、アベルは「来るな!」と突き放された。「何だ、こいつ。お前の女か?」大柄な少年のアントンら数人に虐められているらしい。ノラの学校初日は散々な一日だった。

平均台や水泳など苦手なノラには体育の時間は最悪だった。それでも数人の女の子の友達が出来た。ランチの時間はふざけ合って楽しい時間も過ごせた。そして担任のアニエス先生は大人たちの中ではノラの唯一の理解者だった。アベルがいじめられていることを言うとちゃんとアントン達を叱りもしてくれた。だが、アベルに対するアントン達の虐めはますますエスカレートしていく。便器の水に頭を突っ込まれ、校庭のごみ箱に放り込まれ、生傷も絶えないようになってきた。心配したノラが「大丈夫?」と近寄ろうとすると、「来るな、絶対に誰にも言うな!」と言う。迎えに来た父が「どうした?その傷は」と尋ねると「サッカーだよ、ゴールを二つ決めた。」と噓をつく兄の心が、ノラには全く理解できなかった。

ある日、ノラは我慢しきれずに父に兄が虐められていることを告げてしまう。校門で父がアントン達に「二度と息子に近づくな!」とどやし付けるがアベルはノラに「どうだ、満足か?今度やったら殺すぞ」と毒づく。優しかった兄がだんだんと荒んでいくのを見てノラの心は傷ついた。だがアントン達の虐めが止まず、とうとう双方の親が呼び出され校長が介入することになった。そして今度は兄のことでノラが友達にからかわれるようになり、いつも校門にいる休職中の父のことにも触れられるようになった。大好きだったアニエス先生も学校を退職することになり、また一人ぼっちになってしまったノラはその不満をアベルにぶつけるようになる。そしてノラはある日、アベルが他の男の子を虐めている場面に出くわしてしまう...。

 

上映時間72分。ドキュメンタリーかと思うような短い作品。これなぁ、だれでも通って来た道なんやなぁ。それをこの監督さん、女性の監督さんやけど淡々とカメラを回しています。人間、本質は陰湿なんです。無抵抗の者を虐げることに喜びや快感を覚えてしまう。どうしようもない生き物。ほら、よくあったでしょ、虫の頭をちょん切ったり、爆竹に青虫を乗せたり、レンズで蟻を燃やしたり...。えっ?酷すぎる?けど、大人へと成長する段階で、何処かでこれは駄目なことなんやと気づくんやけど。たまにそれに気づけずに大人になってしまう奴がおる。とんでもない犯罪犯したりね、まあ政治家にもおるけどな。まあ、それをこんだけ淡々と描かれたらスプラッターホラー並にえげつないもんになってしまうと言う事。たまらんね。こういうもん観せられると。ラストの妹が兄に抱き着くシーンだけが救いかな。

 

 

 

 

 

 

 

「アノーラ」。2025年度アカデミー賞受賞作品。作品賞、監督賞、主演女優賞の主要3部門を含む計5部門の受賞。いわばハリウッドでは本年度の最高作品と称された作品です。還暦過ぎたおっさんが一人で観に行ってもなかなか納得させてもらえる作品です。若いカップルが観に行って心ときめかす作品...ではない。「プリティ・ウーマン」でジュリア・ロバーツが演じたようなシンデレラストーリー...ではない。どうしてもコミュニティから遠ざけられる若い娘の前に現れたプリンスは白馬に乗った王子さまではなく本物のクズだったと言うお話し。結論から言ってしまったけどそこが評価されたんやろね。お決まりのシンデレラストーリーではないところ。

舞台はニューヨーク、そしてラスベガス。ニューヨークの夜を彩るストリッパーとロシア財閥の御曹司が出会います。出会いは勿論、彼女の仕事場。言わば不純な動機。ああ、そこから真実の愛が...と思うやろ?

アノーラはニューヨークのネオン街で働くストリッパー。皆からはアニーと呼ばれている現代っ子。ある日、ロシア人の若者の相手をさせられる羽目に。祖母がロシア人でほんのちょっとロシア語が分かる。悪友と酔った勢いで店に流れ込んできたらしいが何の仕事をしているのか金を湯水のごとく使う。若者の名はイヴァン。彼の金払いの良さに惹かれたアニーは店外デートをOKし、イヴァンのブライトンビーチの邸宅へ。豪華な邸宅に目を丸くしたアニーはイヴァンがロシア大財閥の御曹司だと言うことを知る。一方、ベッド上での情熱的なアニーにすっかり魅了されてしまったイヴァンはロシアに帰るまでの7日間、15,000ドルで彼女に「専属契約」を持ちかける。彼の提案に乗ったアニーは店を休み、二人で贅沢三昧の日々を過ごす。アメリカ滞在の最後に二人は友人たちを誘いプライベートジェットでラスベガスへ。アメリカでの滞在が終りに近づくにつれアニーはお坊ちゃま気質だが奔放なイヴァンに惹かれていく。

「アメリカ人と結婚すればロシアに帰らなくて済む」そんな単純な発想でイヴァンはアニーに衝撃的なプロポーズ。戸惑いながらもアニーは受け入れ、二人は24時間空いているラスベガスの教会で式を挙げ夫婦に...。ニューヨークに戻り、幸せの絶頂にいた二人だったがこれを知ったイヴァンの両親は「息子が娼婦と結婚した」と激怒。アメリカでのイヴァンの御守り役だったアルメニア人の司祭トロスに二人の結婚を「無効」にするように命じる。トロスは部下のガルニクとイゴールと言う二人の用心棒を邸宅に送り込む。だが両親がロシアからやって来ることを知ったイヴァンはアニーを置き去りにして逃げ出してしまう。置き去りにされたアニーは大男の用心棒二人を相手に大暴れするが結局は縛り上げられてしまう。邸宅に着いたトロスはアニーに「結婚の無効」を迫るが頑として彼女は受け付けない。しかし結局はトロスたちに協力してイヴァンを探すことになる。気丈にイヴァンとの愛を貫こうとするアニーだったがイヴァンを探し回るうち現実を突きつけられていることを痛感することになる。

 

アノーラ(アニー)を演じたマイキー・マディソンはまさに熱演!彼女の演技と言うか、艶技と言うか...まさに「やりすぎ」とも思えるほど。これ以上は本作品を観てください。主演女優賞はなるほど納得です。前半のニューヨークやラスベガスで贅沢三昧(パリピって言うの?)を繰り広げるシーンは正直「胸糞」でした。ここから両親が登場して、二人が財産を失くしても愛を貫いて、真実の愛を掴み取る...ではないんやなあ。親のいないところで親に悪態ついても、所詮は最後の最後まで親に尻拭いして貰わないと何もできないクズ中のクズやった御曹司イヴァン。これから観る方、結論まで言って御免なさい。ラストで意味深なシーンがあります。無表情でボスの命令しか従わないと思っていた用心棒の一人、イゴールが結構、情も良識もあるいい奴だった。最初は「異常者」「レイプ魔」と罵っていたアニーも情にほだされたか本当の愛情を感じたのか、はたまた本当の男を感じたのかはよくわからないけど身を任せようとする。けど男の方がその気になると激しく抵抗する。そして結局、男の胸の中で泣き崩れる。うーん、女性の心理はわかりまへん。嫁や彼女がいるなら聞いてみたいがそれがいない自分には永遠の謎やね。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ショウタイムセブン」と言うのは夜7時からの報道番組の題名。当然、架空の番組。それがそのまま映画の題名になっています。昨今の〝オールドメディア〟と揶揄されるテレビの報道番組をやり玉にあげようと狙ったのかどうかはさておきアメリカなんかは1970年代から過激化する視聴率狙いの報道合戦に既に警鐘を鳴らしていました。その代表が監督シドニー・ルメット、主演フェイ・ダナウェイ、ウイリアム・ホールデン、ピーター・フィンチの「ネットワーク」。けどね、警鐘を鳴らそうと言うハリウッドに対して、〝オールドメディア〟と言う揶揄された言葉に乗っかろうとする日本映画はどんなもんかな?

この「ネットワーク」はアカデミー賞でピーター・フィンチが主演男優賞、フェイ・ダナウェイが主演女優賞を受賞。見事な作品でした。一方、本作「ショウタイムセブン」では阿部寛がかつてのアンカーマンを演じて頑張って張りました。かつてトップアンカーマンだった男がある事件をきっかけに番組を下ろされラジオの仕事に回されますが彼のもとに発電所の爆破予告が...これをきっかけに再度、表舞台に返り咲こうとしますが...。この作品では視聴率云々より政界とのからみが描かれていますが、芸能界のおバカタレントとのしがらみより、政界とのしがらみって描いた方が「品がある」って思とるんか?。あんまり変わらんと思うけど。

国民的報道番組「ショウタイムセブン」のメインキャスター折本慎之輔は真実に切り込む強引とも言える取材で人気絶頂の最中、ある出来事をきっかけに突然降板させられる。今は何のインパクトもない午後7時からのラジオ番組のパーソナリティに左遷されていた。同時刻の午後7時、テレビスタジオでは華々しく彼の看板番組だった「ショウタイムセブン」のオープニング。現在のメインを務めるのは安積征也と結城千晴と言う若い二人のキャスター。今の巷の話題は巨大企業、大和電力と政界との癒着。その頃、折本がパーソナリティを努めるラジオスタジオに「ウスバカゲロウ」と名乗る男から一本の電話が入る。

「今から大和電力城東火力発電所を爆破する」

折本は相手にせず、一笑に付し電話を切ったがその途端、スタジオが揺れるような地響きがする。思わずスタッフが局の窓から見た光景は遠くに見える大和電力城東発電所から燃え上がる火柱だった。一度は警察に連絡しようとした折本だったが考え直した。彼は爆破犯とのやり取りを生中継で全国放送で中継しようと考える。勿論、インタビュアーは折本自身。折本は自らを降板させたプロデューサーの東海林にこれをきっかけに「ショウタイムセブン」のメインに復帰させることを強引に承諾させ、爆破犯にインタビューを敢行する。

犯人はかつて父を大和電力の発電所事故で亡くした。だがわずかな慰謝料で事故をうやむやにされてしまったと言う。だがそこには思いもよらぬ犯人の別の思惑があった。「ショウタイムセブン」のスタジオで強引に犯人へのインタビューを敢行した折本であったが彼の思惑とは別に事態はより過激な方向へと進んでいく。

 

この番組での名物企画が「ザ・世論調査」。観ている視聴者にリモコン操作で二択のアンケート調査をとります。

「果たして総理は謝罪するでしょうか?」

生番組で視聴者にアンケート調査をする。ラストは「果たしてこれから折本慎之輔はどうすればいいのか?」で締めてしまうわけなんやけど、なんかな最後はふざけすぎ、やりすぎ。配役としては阿部寛はベストやろうけど、こういう役はこの人でないとだめと言う、プロデューサー東海林役は吉田鋼太郎。この人ウマい人やねんけどたまーに芝居が鼻につくときがあります。一人芝居でやたらに騒がしい。ここまで行くと「もうええやろ」となるわけです。難しいですよね、芝居と言うのは。テレビ業界の舞台裏を描き、演者、作る側を風刺したつもりなんやろうけどなんかどうもちゃちっぽく感じてしまいます。阿部寛、熱演やねんけど。

先にも書いた、かの名作「ネットワーク」と比べるのはあまりにも気の毒やねんけどテレビ業界の裏側を描いた作品でこの作品の右に出る者はないと思います。一人の人気キャスターが視聴率の下落を理由に降板させられることになる。精神的に不安定になった彼は番組で自殺を宣言。だが彼の奇抜な言動で逆に視聴率は上がり始める。だけど彼に目を付けた辣腕の女性プロデューサー(これがフェイ・ダナウェイ。こんな「悪女」をやらせればほんまうまいんだこの人)が精神が崩壊寸前のキャスターをより追い込んでいく。その果てはスタジオにテロリストを招き入れ...と言う猛烈にショッキングなラスト。ここまでするか...。

ちなみにこの年のアカデミー賞、この「ネットワーク」の他、作品賞に名を連ねたのは「ロッキー」「大統領の陰謀」「タクシードライバー」とまさに映画ファンならよだれをたらしそうな名作、傑作の当たり年。主演男優賞と主演女優賞は「ネットワーク」が、作品賞と監督賞は「ロッキー」が分け合いました。けど主演男優賞を受賞したピーター・フィンチはノミネートの直後に急死。死後にオスカーを受賞したと言う人はこの人だけやねんてね。

そう言えば我が家のビデオが不具合のため昨年と今年のアカデミー賞は観られませんでした。今年は「アノーラ」と言うニューヨークのストリッパーとロシアの財閥青年の恋を描いた作品が5冠をとったそう。近頃はこういったインディーズ系の作品が注目されています。うかうかしていると見逃してまう。