珍し、スペイン映画です。監督さんはアレックスデライグレシアって人で「気狂いピエロの決闘」って作品でヴェネチア国際映画祭で監督賞、脚本賞をらったそう。自分はよう知りません。クエンティンタランティーノが絶賛していたそうですからだいたいどんな映画かわかります。この作品「ベネシアフレニア」でもその一端が垣間見えました。一言で言えばちと趣味が悪い。
どんな物語かと言うと発端は「オーバーツーリズム」。これはこの仕事に携わる我々にも耳が痛い。舞台はイタリア、ヴェニス。我々日本人は飛行機でいきますからあんまり実感はないんですがコロナ前あたりからここは他のヨーロッパ各国から入港する大型クルーザーの入港に地元住民の反対運動で大きく揺れています。これは実際の話。
作品ではそんな背景においてスペインから5人の若者がやってきます。浮かれています。俗にいうパリピですわ。まあそんな若者たちが得体のしれない殺人鬼に殺され、あるいは行方不明になりと言う物語。白昼堂々と大勢の観光客たちの前で観光客が惨殺されます。ところが観光客たちは「街頭劇だ!」と言って騒ぎ立てたり、スマホで写真を撮ったりともう以上。浮かれているからサービスを受けてると思いこむこの集団心理。異常です。観光地自体が異様な世界となっています。浮かれたバカンスが一転して地獄に変わる異国の地。アホな若者たちが巻き込まれていく物語です。
結婚を間近に控えたイサはスペインから弟のホセ、そして友人たちと男女5人で「水の都」ヴェニスへやって来た。イサは独身最後の思い出にハメを外そうとフィアンセを残して仲間と大いに期待してやって来たのだが大型クルーザ―の観光客船で港に着く早々、地元住民たちの「観光客は帰れ!」と言う猛烈な洗礼を受けいきなり面食らってしまう。次に水上タクシーに乗船した5人は一緒に同乗してきたピエロ姿の不気味な男に嫌がらせをうけるが何とかホテルに到着。町はカーニバルの真っ最中。観光客たちの思い思いの仮装衣装で町は華やかだった。フロントに到着すると5人は頼んでいた衣装に着替えディナーへ。到着早々の嫌なことも忘れ酒に酔い、帰りに怪しげな店に立ち寄り羽目を外すが翌日、ホセがホテルへ戻らなかった。イサたちは警察を呼ぶが相手にしてもらえない。そのうち、友人たちが一人また一人と姿を消していく。楽しいはずのバカンスが地獄に変わろうとしていた...。
今日の朝の報道番組でも「オーバーツーリズム」の問題を取り上げていましたが、これからコロナ禍による制限も解除されて我々、観光業界も忙しくなるわけですがオーバーツーリズム=観光客公害も大きくなるわけです。この作品の舞台となるヴェニスではなんでも大型クルーザーが来航するたびに水位が増し住民の生活が脅かされているとか。水の上に町が浮かんでいるようなところやもんねー。そりゃ地元住民も迷惑です。しかしこの作品に登場する5人の若者たちに協力する船頭さんの言うように「俺たちの町は観光で成り立っているんだ」と言うこともまた事実。難しいよね。「俺たちは観光客なんだ。客なんだから何をやっても構わないんだ。」と言う態度は良くないことは明らか。中国人によくみられるけど日本人も例外ではありません。逆に日本に来る外国人の人気№1京都では舞妓さんたちが外国人観光客に写真を撮ろうと追い掛け回されると言う話もよく聞きます。これも明らかにオーバーツーリズム。お互い中にいる人も外から来る人も尊重しあうことが一番大事。そうすりゃこんなことも起こらないんやけど。また受け入れる側の過剰な誘致も問題。日本だって「観光立国」を立ち上げたのはいいけど一番大切なのは我が国の国民。お金を落としてもらうのはいいけど綺麗な町にゴミや傲慢を落としていって貰うのは勘弁してほしい。それさえなければ当社としても積極的にインバウンド事業に参加したいんやけど...。
とにかくこの作品は「オーバーツーリズム」から端を発した惨劇。勿論、殺人は何があってもよくはありません。この作品、冒頭に「この作品は実際にあった事件をもとに構成されています」とあります。探してんねんけどなかなかわからん。正直、作品自体は大したことありまへん。しかし耳の痛い題材です。
