スピルバーク監督の自叙伝。と言う触れ込みの作品。本作もアカデミー賞有力候補でした。主要部門はやっぱり取れんかったね、スピルバーグ監督。けど自分はこの作品の方が好きやなあ。最初退屈そうな映画やなって思ったけど。一見平凡でどこにでもいるような家族やねんけどとにかくスピルバークは母親に影響を受けた人なんやな思います。一昔前、「スピルバークはマザコン」と言うのがまことしやかに囁かれていました。この作品みればよくわかります。うーん、やっぱりある種、なんて言うか特別な感情を持っていたんやねぇ、母親には。
そして、ユダヤ人であると言うこと。黒人差別だけではなくこのころはユダヤ人差別なんてものがあったんですねぇ。コンピューターエンジニアの人生は堅実だと言う父。そして元ピアニストの奔放で夢を追うことをやめるなと言う母。そんな二人の愛に育まれてサミーフェイブルマン少年は育っていきます。
サミーフェイブルマンはニュージャージーでコンピューターエンジニアの父バートと元ピアニストの芸術家の母ミッツィの間に生まれた。1952年幼いサミー少年は父と母に連れられて初めて映画館に足を踏み入れた。最初は「暗いところは嫌だ」とごねていたサミーであったがすぐに映画の魔力に魅入られる。生まれて初めて観た作品は「地上最大のショウ」。彼はそれ以降、映画に夢中になる。そんなサミーに母ミッツィは夫の8㎜カメラを与える。それからと言うものサミーは父と母、3人の妹、それにいつも家族の様に過ごす、父と母の親友ベニーを相手にカメラを回し続ける、「映画監督」となる。
サミーがティーンエージャーになった頃、父のバートはコンピューターのシステム開発の功績が認められ今在籍する、RAC社からゼネラルエレクトリックス社にスカウトされアリゾナへ移住することになった。親友のベニーも一緒。引越しの道中の撮影はサミーの独壇場だ。アリゾナで新生活を始め、地元のボーイスカウトに入ったサミーは友人たちとジョンフォード監督の「リバティバランスを撃った男」を観てさらに映画に対する情熱を燃やし、自ら映画を作りたいと言う衝動に駆られる。彼はボーイスカウト仲間たちを役者に仕立てて8㎜映画を作るが、さらなる「大作」を作るためにはもっと高性能の映写機と編集機が必要だった。彼は高額の映写機の購入を父のバートに懇願するがあまりにも映像の世界にのめりこんでいくサミーに「趣味の域を超えるな」と窘める。そんな時、ミッツィの最愛の母がこの世を去り彼女は悲嘆にくれる。彼女の嘆き用を見るに見かねたバートは高性能の編集機をサミーに買い与え、「これで母さんを元気づけてやってくれ」と今までの家族で撮ったフィルムの編集を頼む。
そんな時、ミッツィの叔父ボリスがフェイブルマン家を訪ねてくる。ミッツィの母である妹の御悔みにやって来たのだ。サーカスで働いていた彼は一族の変わり者として敬遠されていたが映画に夢中になるサミーに「お前にも芸術一家の血が流れている」と伝えながらも「だが芸術は栄冠をもたらすが一方で孤独をももたらす」と言い残し去っていく。
サミーが作った自主映画はボーイスカウトの父兄たちの観ている前で上映され好評。人気を博していた。そんな時フィルムを編集していたサミーはフィルムに移りこんでいる、母ミッツィとベニーの親し気な様子を見つけてしまう。映像の世界にのめりこんでいく彼に対し否定的な父とは対照的に、常にサミーの背中を押してくれるのは母ミッツィだった
。ミッツィとベニーに対し複雑な思いを抱く中、父バートの更なるシステム開発が認められ、業界最大手IBM社への移籍が決まる。家族はカリフォルニアへと移住する。しかし今度はベニーを残して...。
今度の土地、北カリフォルニアは最悪だった。自宅は古ぼけた賃貸。学校ではユダヤ人であることにサミーはいじめを受けていた。そして、家族にとってもっとも厄介な問題が待っていたのである。だがここはサミーにとって大きく人生を変える土地でもあったのである。
半世紀もの間、ハリウッドで映画を撮り続けていたスピルバーグ監督にとって原点は「家族」であったことがよくわかります。最後に登場するジョンフォードのヘンコっぷりには思わず吹き出してしまいます。スピルバークがハリウッドいや、映画界に残した功績。これは凄いです!思えばこのサミー少年の様に映画に見せられたのは中学一年生の時。友人に連れられて行った作品が彼の「ジョーズ」でした。映画館に着いたときはもう満席で2席並んで空いていたのは最前列だけでした。だから最前列で観る、あの襲ってくるホオジロザメのド迫力!一番前でも全然しんどくなかったからですからね。観終わった後は放心状態。映画に魅せられた瞬間でした。正直な話、「エブリシング・エブリウェア・オール・アットワンス」より自分としてはこっちの方がよかったなあ。スピルバーグと言う映画の叙事詩をサーガを覗いたよう。大谷の野球小僧に対してスピルバーグの映画小僧。一つのことに夢中になりそれが人生のライフワークになっている。うらやましい限りです。