まず、本年度のアカデミー賞、予想通り先週観た「エブリシング・エブリウェア・オール・アットワンス」(舌嚙んだ)が見事7冠を達成!自分自身あんまし評価は高くないんやけどとにもかくにも関係者の皆さんおめでとうございます!アジア人初の主演女優賞ミッシェル、おめでとうcongratulation!!(前にも言うたけど彼女同い年なんやなー)。実を言うとビデオを撮ってるんやけどこの時点でまだほんの少ししか観てません。けど、キーホイクァンの助演男優賞とジェイミーリーカーチスの助演女優賞の受賞の瞬間とスピーチは観ました。キーホイクァンの「 僕の旅はボートで始まった。それがどういう訳かハリウッドの最高峰の舞台にいる!まさにアメリカンドリームだ!」には胸が熱くなりました。彼、ベトナム難民の子なんですね。それが「インディジョーンズ」に出会い、子役から長い時を経て50歳にして表舞台へ復帰。そして観ている人たちに語り掛ける「皆さん!夢をあきらめないで!」ええなあ、ええですよ!おめでとうcongratulation!そして助演女優賞を獲得したジェイミーリ―カティス、名優トニーカーティスと名女優ジャネットリーの娘。父のトニーカーティスは「手錠のままの脱獄」で主演男優賞候補に母のジャネットリーはあの「サイコ」で助演女優賞候補になるも受賞には届かず。トニーカーティスは数々の名作に出演し一世を風靡した名優、母は言わずと知れたサスペンスミステリーの最高峰「サイコ」の女優とやっぱりサラブレットにはサラブレットのプレッシャーがあったはず、父と母が届かなかったオスカー象を手にしたと言うのは感無量だったと思います。おめでとうございますcongratulation!
とまあ、感激の一部なんですけどこのオスカー象を2度も受賞し、しかもノミネート6回(うち一回は助演賞)と言う強者トムハンクスの新作がこれ、「オットーと言う男」。
いよいよ「フォレストガンプ」の彼も初老に差し掛かってきました(俺もやねんけど)。新たに彼が演じる今回の役は隣近所から煙たがれる頑固親父。最愛の妻を亡くし、彼女の元へ逝きたいけどなかなか死にきれない、それが為、段々と偏屈になり人を寄せ付けなくなる。そんな昔なら町内に必ず一人はいたような気難しい親父を芸達者なトムハンクスが演じます。やっぱりうまいなあ。
オットーアンダーソンは気難し屋で融通が利かない。毎朝早朝に起きると家の前の雪かき、町内の見回り。ゴミが仕訳けてない、駐車がなってない、犬が小便をすると朝からすれ違う人達に毎度毎度、食って掛かる。町内ではすっかり厄介者扱いである。そんな彼は追われるように会社を定年退職となり、その偏屈ぶりにも磨きがかかる。
「こんな世の中もうたくさんだ!」
彼は亡くなった妻の元へ逝きたいと、何度も自殺未遂を繰り返すがその度に何故か誰かから邪魔が入る。まるで亡き妻が必至で止めているように...。
そんな時向かいの家にメキシコ人家族が引っ越してきた。夫のトミーは不器用で何をやってもへまをする。妻のマリソルは良く言えば天真爛漫、くよくよしない、気にしない。悪く言えば空気が読めない、いわゆるKYである。オットーが露骨に嫌な顔をしようが怒り出そうが平気で頼みごとをしたり、物事を押し付けたりとメキシコ人独特の陽気さでオットーの心の中に入ってくる。オットーの不満、イライラは募るばかりである。だが何の計算もなく、遠慮もなくドアを叩くマリソルや彼女の家族と関わるうちに無愛想ながらも少しずつオットーの心は開かれていく。
亡き妻ソーニャとの過ぎ去りし日々、出会い、プロポーズ、結婚生活、新しい命が宿った時の喜び、幸せが一杯だったカナダ旅行、そしてその帰り道での悲劇。喜びも悲しみもすべてソーニャと共有してきた。しかしその妻はもういない。二人には今の家に越して来た時からルーベンとアニータと言う黒人夫婦の親友がいた。いつもお互いの家に行き来しなんでも相談できる仲だったのにあることがきっかけでオットーとルーベンは仲違いしてしまいすっかり疎遠になってしまっていた。今、ルーベンは車椅子の生活を送っている。話もできない、動けない、アニータも年をとり介護が困難になってきた。そんな二人に目を付けた悪辣な不動産屋が遠く離れて暮らす息子を利用してルーベンを介護施設へ、アニータを養老施設へ追いやり立ち退きを迫ろうとしていた。その時、長年のわだかまりを捨てオットーはルーベンとアニータのために立ち上がろうとする。
こう言う役やるとうまいですよね-、この人。頑固親父、偏屈親父の役なんかは始めてやろうけど、時にシリアスに、時にユーモラスに、飄々と嫌味なく演じているから観ている者は不快にならず思わず笑ってしまう。感情移入ができます。大変楽しく拝見させていただきました。さりながらラストはホロリとしてしまう「寅さん」張りの人情物語。トムハンクスの経歴の中では地味-な部類の作品になるけど、また一つ彼の経歴に新たな一ページが出来ました。
彼以外は殆んど知らん俳優さんばっかりやけど、向かいに越してきたオットーの人生のラストページに大きな文字を書き加えた、あの騒がしくもなぜか愛らしいメキシコ人の奥さんからオットーにまとわりつく野良猫までなんとも個性的に瑞々しくが描かれています。久々にハリウッドの「ええ映画」やね。
さあ、帰ってじっくりとアカデミー賞の授賞式を観ましょう!