この頃、ハリウッド映画より韓国映画がおもしろい。と言うより日本の配給会社に問題かな?昨年の秋に観た「ザリガニの鳴くところ」なんて良かった。ようは配給会社は大作、シリーズもの一辺倒。ようは宣伝力に欠けると言うことです。ところで今回の作品「パーフェクト・ドライバー 成功率100%の女」は古き良きハリウッドから近年の「トランスポーター」シリーズや「ワイルドスピード」シリーズ。アクションがだんだん過激になるけど自分が主人公となるアンチヒーローたちに求めるのはストイックさ。その原点になるのがジェイソンステイサムでもヴィンディーゼルでもない。古き良きハリウッドのライアンオニール主演、監督が自分の大好きなウォルターヒル。「ザ・ドライバー」。この作品の系譜をこの韓国作品に観た気がします。ただ主人公と違うことは女性であること。バックボーンは脱北者と言う悲哀。この切なさの中に韓国独特のちょっと間の抜けた(失礼! )ユーモア。子供を扱ったことはないであろうこの若き女性犯罪ドライバーがストイックな中にみせる「戸惑い」が面白い。彼女を演じるのがアジア映画初のアカデミー賞作品として記憶に新しい「パラサイト 半地下の家族」で半地下家族の娘役を演じたパクソダム。あの一作で一気に主演女優に成りあがりました。アクションも見事。ロサンゼルスやマルセイユの広い道路を突っ走るんじゃなく、港湾都市、釜山の狭いどや街を縦横無尽に走るアクションも新味です❢
釜山の港にある廃車処理工場、ペッカン産業。社長のペクは裏家業として「どんな荷物でも届ける」と言う「特送」の仕事を請け負っている。「どんな荷物でも」と言うのは勿論、やばいブツ、やばい人物を指す。彼に雇われているチャンウナは女性ながら抜群のドライビングテクニックを持ち、今まで仕事に失敗したことがない。今日も銀行を襲った犯人を警察の追跡をかいくぐり見事に港まで届けた。
数日後、ペッカン産業に新しい仕事が舞い込む。闇賭博の組織から大金をかすめ取った元プロ野球選手の賭博ブローカー、キムドゥシクとその息子ソウォンをソウル郊外の港まで運び届けること。ソウルに乗り込んだウナは夜、待ち合わせの場所に車を止めるが遅れてやって来たのは息子のソウォンだけだった。しかもあとからやくざが追ってくる。迷った挙句ソウォンを車に乗せたウナは夜のソウルを逃亡、やくざ達を振り切った。だが逃げ込んだモーテルでソウォンは父が惨殺されたことを知り、大声で泣きだす。そんなソウォンにウナは冷たく言い放つ。
「生き延びたきゃ泣きやみな」
二人を追う闇賭博の元締めはギョンピルと言う悪徳警官だった。表向きは警官、裏ではやくざの二足の草鞋。組織の金を奪ったドゥシクを平然と殺す冷血漢。筋金入りの悪党だった。ドゥシクは殺される間際、ソウォンを逃がす時に300億ウォンの入った貸金庫の鍵を託したのであった。それを知ったギョンピルが執拗に二人を追い、早急に片付けるため殺し屋を雇う。そして悪徳警官が指揮を執る警察に国家情報院ハンミヨンが割り込んできた。脱北者だったウナの審査官だった彼女はドゥシク殺害の犯人として追われるウナに対して不審に思い協力を申し出たのである。一方、泣き、甘えるソウォンに対して疎ましく思っていたウナだったが身寄りのなくなったソウォンに対して、脱北の時、家族を皆殺しにされたウナは自分の境遇と今のソウォンを重ねるようになる。
悪徳警官、殺し屋、国家情報院、そしてウナとソウォン。様々な思いが入り乱れる逃亡劇はウナの本拠地、釜山へと移る。
パクソダムのアクションシーン堂に入ってましたねー。ソウォンを演じた子役の子は「パラサイト..」でパクソダムが家庭教師として潜り込んだ大富豪の息子役だった子だそうです。しかし韓国映画って言うのは舞台が殆んどソウルか釜山であるのになんともバラエティに富んだ作品が生まれます。パクソダムって美女が押し寄せる韓国映画界にあってさほど美女とは思えないですが何とも魅力的な女優さんです。前回の下層階級の平凡な女の子と今回の闇社会の凄腕ドライバー、全く相異なるキャラクターですが何とも無口で、それでいて胆が据わっている役どころはなんか相通じるものがあります。
ラストのペッカン産業での殺戮シーンはさすが韓国映画です。良きにつけ悪きにつけ強烈な印象を観ている者に植え付けます。はぁーっ負けとるなー日本映画は。悔しいかな。
ソウルから釜山へ、朝鮮半島を縦断するわけですがこのわずかな日の間にウナとソウォンの間に何とも言えない感情が生まれます。母でもない、姉でもない、恋人でもない、その中間にあるようなウナと息子でもない、弟でもない、恋人でもないその中間にあるような幼いソウォン。お互い身寄りを亡くし同じくして「家族を殺される」と言う共通の悲しみを持つ二人。何とも言えない感情がそこに流れます。それがよかった。脇役も抜群、普通のがめついあくどい社長だと思っていたペク社長が案外の人情家だったして、最後の拷問シーンは「トゥルーロマンス」のでワンシーン、マフィアのボス、クリストファーウォーケンと主人公の父、警察官のデニスホッパーが対峙するシーンを思い出しました。そして多分に「レオン」の悪徳刑事ゲイリーオールドマンを意識してると思われるギョンピル刑事。ヒロインを引きだたせます。
最初にも言いました、古い映画ファンなら知ってる、ライアンオニール主演の「ザ・ドライバー」。「ある愛の詩」のあの甘ったるーいライアンオニールからストイックでクールなライアンオニールを観ることができたこの作品。どこか影響絵受けたような気がします。この作品いろんなオマージュが含まれているような気がしますね。
この「ザ・ドライバー」、時間があればTSUTAYAなりNetflixなりで観てください。ちなみにこの作品、仕掛けがあってキャストの名前が一切ありません。他にイザベルアジャーニ、ブルースダーンなんかが出てるんですが、最後のエンドロールで..
Cast ドライバー...ライアンオニール プレイヤー(賭博士)...イザベルアジャーニ 刑事...ブルースダーン。なんか観終わった後、心地よいだまし討ちに会った感じ。ここんとこだけお話ししてもなんか粋でしょ。
しかしね、パクソダム...次回作も大いに期待してしまいます。