先週は親父の三回忌のため映画鑑賞はお休み。この頃、添乗が重なったりと週が飛び飛びになったりと忙しいのを喜んでいいのかもしれませんが映画を観ない週は何か休みの日に忘れ物をしたような...「忙しい」ってええのかもしれんけど、それやったらコロナの時期にぎょうさん観に行っといたらと思うんですが当然、コロナ禍の期間中は映画館も閉館しているわけでうまいこと行かんもの。けどこの頃感じるんですがコロナが収束に向かっているにも関わらず、なんかハリウッド映画少ないと思いません?トムクルーズ主演の「トップガン/マーヴェリック」が興行収入の記録を塗り替えるロングランを続けているのは映画ファンにとっては活気づいてうれしいことなんやけどなんか全盛を誇ったハリウッド映画が少ないような気がするわ―。その分、目につくのがヨーロッパ映画、韓国映画の台頭。もうハリウッド、ハリウッドと持てはやす時代じゃないのかもしれませんね。どの国も映画を一つの文化として取り入れ発展さそうとしている。その筆頭が韓国。週をまたいで連続の韓国映画鑑賞。
それも日本のミリオン作家、佐々木譲のミステリー小説を韓国が映画化して逆輸入。もったいない!先に日本が映画化せんかい!と自分も偉そうなことは言えません。読んでへんねんから。そう言えば何年か前に日本でもテレビドラマ化されていたのをやっと思い出しました。この物語は三代に渡る警官一族の物語を上下2冊の巻によって描かれた長編小説です。平均2時間枠での映画上映時間では無理。この韓国作品では最期の三部を映画化したものです。それが正解!祖父、父のあとを追うように警官になり、その「血」を見込まれて署内の汚職疑惑の潜入捜査に駆り出された若き警官の物語。面白いです!正義か!悪か!グレーゾーンの真っ只中に飛び込んで揺れ動く若き正義漢の運命は...ドラマチックな展開に魅了されます。
新人警官チェミンジェは祖父、父と三代続く警察官の家の出だった、コンビを組む先輩警官の不正にも目を瞑ることの出来ないそんな正義感が署では浮いた存在になっている。そんな彼に内務調査室から依頼が来た。ある刑事の汚職疑惑を調査してほしいとの指令である。仲間を売るようなことになるのは嫌だと一旦は断ったが、殉職したにも関わらず、殉職扱いしてもらえない父の真実を教えてもらうということを条件にミョンジェは引き受けることにする。調査の対象は抜群の検挙率を誇るソウル広域捜査隊の班長を務める署内のエース、パクガンユン。彼には汚職と共に秘密裏に一人の警官殺害の嫌疑がかけられていた。ガンユンの元に配属されたミョンジェは早速移動のその日からガンユンに同行することになる。高級車を乗り回し、高級マンションに住み、ブランドものに身を固めた彼はおよそ刑事に似つかわしくない人物だった。捜査費用と言う名の元に警察の金は使い放題。だがそんな暮らしは警察の捜査費用だけでは到底賄えるものではない。その金はどこから調達しているのか...捜査のためと言う理由で裏組織や暴力団から資金を調達し、違法捜査を繰り返す。だが汚職と犯罪の証拠は何一つ出てこない。だがそんな破天荒なガンユンのやり方に戸惑いを持ちながらもミンジェは汚職、違法捜査と言う警察の枠にとらわれずそうまでして犯罪組織を壊滅させようと執念にも似た信念を持っているガンユンにどこか尊敬の念を抱くようになる。それは亡き父の面影を見ているようでもあった。
パクガンユン最大のターゲットは若き韓国の麻薬王ナヨンビン。彼は新しい麻薬の精製法を開発し韓国中に新しい麻薬を大量にばらまこうとしている。彼への最大の投資者が韓国有数の大財閥テホグループ、キムジョンシン会長の息子キムジョンギュン。ナヨンビン逮捕に焦るガンユンは彼らに近づくため暴力団や裏組織に近づき自らの手を汚していく。そして出所不明だった莫大な支援金を提供する組織こそチェミョンジェの父の死に関わるものだった。ガンユンはミョンジェについに打ち明ける。
「私を育ててくれたのは君の父親だ」
正義と悪が交差する権力の世界。ガンユンは果たして正義なのか悪なのか、その境界線に立つ彼に果たしてミョンジェはどういう審判を突きつけるのか...。
「警察官はグレーゾーンの上に立つべきなんだ」
一方の物語の主人公パクガンユンが敢然と言い放つまさにその姿は圧巻。甘い正義観だけを振りかざしていても悪を根底から排除することはできない。自らの手を汚して汚水にどっぷりつかり悪の根を救い上げる。まさに1970年代ハリウッドに颯爽と登場した「ダーティーハリー」の正義観です。「犯人逮捕のためなら自らの手を汚すことも辞さない」まさに「汚れた英雄」。それが現代の韓国に蘇った感じ。ハリーキャラハンのようなスーパーヒーローは出てこない。けどもっとリアリティにとんだ主人公が彼。原作の「警官の血」とは少し趣旨がかけ離れているのかもしれませんが「正義」「悪」そしてそのどっちにも近く存在する境界線、「グレゾーン」。まさにそこに立つ男の危うい信念。その男にもう一方の主人公チェミンジェは父親の面影に似たものを感じます。原作の終わりの部分だけはドラマチックに描いた作品です。いやあもう、男、男、男のオンパレード!好きやねぇこんな作品。しかしそんないいネタがあるのに韓国に取られてしまって映画を作ることもできない日本のエンタメ会はどないなっとるんですかね。寂しいし、ジェラシーを感じます。まっ、実際の人民を守ろうとしている組織、そして政治家たちもこんな気概でやっている人は何人いるんでしょうかね。観ている我々に、男に、問いかけるまさに至極のクライムサスペンスです。兎にも角にもこの原作は読んでみたいです。
はい。