はぁー、「ロッキーⅣ」からもう35年ですかー。年取るはずです。
今回はリバイバル上映と言えばそうなんですが、スタローン自らが編集に携わり35年前のオリジナルではカットされた42分間を入れた言わばニュー・ロッキ―Ⅳ。スタローンはドラマの中身に重点を置きたかった、登場人物の心に注目したかった、と言うけど果たして観た方はどう感じられました?私はスタローンがどういう心づもりで描いたのかわからないけどやっぱりファイトシーンですね。路上の殴り合いと化した最終ラウンドに至るまでシリーズ中ではこの作品が一番迫力あると思います。私はやっぱりそっちに酔いました。いいものは何十年たっても色褪せません。
強敵クラバーラングに勝利し、チャンピオンに返り咲いたロッキー。その余韻に浸る中、ソ連がプロスポーツへの参加を表明し、ある一人の男がロッキーに挑戦状を突きつけてきた。その男の名はイワンドラゴ。雲をつくような大男で鉄の塊のような筋肉、パンチ力は歴代チャンピオンをはるかに凌ぐ。プロ初参加ながらその身体能力は群を抜いている。無口な夫の代わりにスポークスマンを務める元水泳の金メダリスト、ルドミラ夫人をはじめとした国家ぐるみの挑発に乗ったのは親友でかつてのライバル、アポークリードだった。挑発に乗らないロッキーに俺にやらせてくれと頼み込む。何とか引き留めるロッキーだったが、「ファイターとして生まれた自分は変えられないんだ」と言うアポロの言葉に負け、やむを得ずセコンドに就く。試合はアポロらしい華やかな演出の元、アポロの痛烈な挑発の中始った。最初は華麗なステップを見せ、ドラゴを翻弄するアポロであったがいかんせん、あまりにも力が違った。そしてなによりも年齢と...。痛烈なパンチの雨を浴びるアポロ。1ラウンド終了のゴングに救われたアポロたったが、「もうやめよう」と言うロッキーの制止を振り切り「友達なら絶対タオルを投げるな」と言う言葉を残し、第2ラウンドのリングに向かうアポロ。だがドラゴの容赦ない強烈なパンチがアポロを襲う。そして、ゆっくりとリングへ沈んでいく。限界を超えたドラゴの激しいパンチはアポロの命を奪う。元世界チャンピオン、アポロクリードは帰らぬ人となってしまった。
アメリカ中が大騒ぎになった。ロッキーはドラゴと戦わざるを得なくなってしまった。無益な戦いを認めないアメリカのボクシング協会を離れ、ロッキーはチャンピオンベルトを返上。ノンタイトル、ファイトマネーなし、そしてソ連側の条件をすべて飲むという形でドラゴとリングに立つことになったロッキー。日時は12月25日のクリスマス、対戦場所はモスクワ。引き留める妻エイドリアンを残し、彼はドラゴの待つソ連へと旅立った。「ドラゴのことだけを考えたい」ロッキーは雪に覆われたモスクワ郊外の山小屋で過酷なトレーニングに励む。彼に付き従うのは義兄のポーリーとアポロのトレーナーだったデュークだけ。ソ連側の監視の元、充分な設備もなし、スパーリング相手もなし、厳寒と大量の積雪の中、体力の限界を超えたトレーニングに臨む。居ても立っても居られないエイドリアンがやって来る。彼女の愛に見守られ完全アウェイの中、ロッキーはモスクワのリングに立つ。ソ連国民の激しいブーイングの嵐の中、運命のゴングは鳴った。
前と何が違うかってよくわからないんですよね。強いて上げれは確かにロッキーバルボアの思い、イワンドラゴの思い、アポロクリードの思い、そして妻エイドリアンの思いが以前よりも強く描かれているような感じはしました。ロッキーの心の中の叫びもセリフとして描かれていたし。けどその分、前回インパクトが強烈だったドラゴ夫人を演じた、スタローンの元妻ブリジットニールセンの影がなんか薄いなぁと...前と違ってセリフはえらい減ってたし、こりゃなんかスタローンの恣意的というか作為的と言うか、元嫁...どうなんやろね(笑)。ドラゴがラストで感情を爆発させるシーンがありますが、前回は描かれてなかったと思うんやけど、会見で「俺はドラゴ...」と言いかけてんのに、妻とソ連のスポーツ省幹部がスタスタと会見場をあとにする。まさに国威高揚のためだけに戦わされているという感からボクサードラゴとして自らの意思でロッキーに挑む姿はやはり今回、「ロッキーVSドラゴ」と名付けられスタローンが人を描こうとした片鱗を伺わせました。その辺りだけで別段変わったなと言うところは..そうそう、ラスト、ロッキーのセリフに35年前はソ連国民も万雷の拍手を送る中、特等席に陣取った共産党幹部のお歴々が真ん中の書記長(額に「地図」がないだけでまるまるゴルバチョフさん)が立ち上がって拍手をするのを見て周りにいた幹部たちも渋々立ち上がって拍手をするシーンが会場の笑いを誘ったんやけど、今回は万雷の拍手の中「ゴルビー」はプィッて怒って出て行ってしまった。これ見ると元々2パターン撮ってたんやねぇ。あの当時はレーガン=ゴルバチョフ時代。米ソ冷戦も緩和され、ゴルバチョフのペレストロイカによってなんか雪解けムードになってたっけ。それで当時は和やかムードのシーンを選択したのか。今は当然、ウクライナ侵攻でソ連は世界では絶対悪、ということで「プィッ」の方を選択したのでしょうか? 映画は時代を映す鏡です。どうせならCGでプーチンのそっくりさんにしたら?
去年だったか、一昨年だったか、この「ロッキーVSドラゴ」の後を引きずる形でロッキーがアポロの隠し子をチャンピオンに育て上げ、ロッキーに敗れて落ちぶれたドラゴが息子を鍛え上げ対戦させるという、もう「どこまで引きずるねん」と言う企画、「クリード 炎の宿敵」が公開されました。それの後にこれを観るとなんかタイムスリップしたような感覚で、その作品ではドラゴのセリフも多く、国家に見捨てられ、妻にも見捨てられ、自分をこんなにしてしまったロッキーへの復讐心もありいの、アポロの息子はアポロの息子で、ドラゴは自分の父を殺した張本人です。なんとも複雑な人間模様の作品でしたな。もともとロッキーが誕生したのはうだつの上がらない青年がアメリカンドリームを摑むと言う単純明快な爽やかストーリーが始まりでした。それが作る方も登場人物も富と名声を手にすると日本の昼ドラみたいになるんやね。私は純粋にファイトシーンだけを楽しみたいです。
