毎度のことながらコロナ禍の中、ハリウッドからの大作、話題作が滞っています。そんな中、フランスからの小作品を一つ、「ローズメイカー 奇跡のバラ」。亡くなった父のバラ園を継いだ初老の女性と花の育て方も知らない職業訓練所から来た三人の男女が織りなす笑いと人情のフランスらしいお洒落なコメディ。今の荒んだ世間をほんの少しでも和らげてくれる物語...
亡くなった父のバラ園を引き継いだエヴァは腕の良いバラを育てる育種家だが今は造園巨大企業のラマルゼル社に顧客を奪われて倒産寸前、おまけに年に一回開かれるバラのコンクールでも金と力に物言わせるラマルゼルに8年連続で賞をさらわれている。「なんとかもう一度新種のバラで賞を勝ち取りたい」それがエヴァの望みだった。そんな時、父の代からバラ園でエヴァの右腕になってくれているヴェラがバラ園再建のため職業訓練所から3人の労働者を超格安の賃金で連れて来てくれた。だがこの3人何とも曲者。前科六犯の若者フレッド、50を過ぎても定職に付けない中年男性サミール、少々自閉症気味の女の子ナデージュ。3人は初日早々、200株のバラを枯らしてしまう羽目に...
頑固者のエヴァは激怒し、即クビにしようとしたのだが、フレッドの「ある特技」に目を付けた彼女は彼らの協力によって貴重な種を「手に入れる」ことに成功。二つの種を交配させ新種のバラを手掛けることに夢を託す。それ以来、エヴァたちの結束力はかたまりバラ園を再建することに邁進する。そんな中、エヴァはならず者だと思っていたフレッドが実は母親の育児放棄により孤児同様に育っていたことを知る。結婚したことのないエヴァだったが何かとフレッドを気にかけるようになるのだった。そして彼が人並外れた嗅覚を持っていることに気づく...。
季節は巡り3人の訓練生たちも手慣れた手つきでバラ園の戦力になってきた。そして交配させたバラがようやく花開く時期に来る。果たしてエヴァたちのバラ園は再建することが出来るのか?そして交配させた新種のバラは?
古今東西、「細腕繁盛記」の人情ものと言うのは観ていてほんま感情移入してしまいます。それはどの国の人たちもおんなじちゃうかな?
エヴァが去り行く若者フレッドにいい言葉を送っていたねぇ。
「美のない人生は虚しい」
バラの美しさ、美しいものを美しいと思える、人間そんな人生を送りたいもの。物語の主人公エヴァは人生をバラの育種にかけているためか結婚していないので夫も子供もいません。けどこの不良青年フレッドに母性本能を感じるんです。彼の本質を知り彼の人生を何とか正道に戻してやりたい。フレッドも実の母親は見つかるんですがエヴァの姿に真の母親像を見出すんです。エヴァやフレッドを始めとする3人の訓練生の不器用さには思わず吹き出すんですが、物語の後半には母性が溢れる展開となっています。地味で小作品と言ってしまえばそれまでですがフレンチ人情喜劇と言うかなんというか...そんな作品です。