少し古い話になるが、昨年8月に行われたEVO2023のスト6部門にて優勝したUAEのAngrybird選手のアケコンが、かのHORIのRAP.Nであった。これまで、プロゲーマー御用達のアケコンと言えばかのウメハラ氏が使用していた旧マッドキャッツを筆頭に、ときど氏のRazer PantheraやObsidianなど、圧倒的に海外メーカー製が強く、我らが日本の雄であるHORIのアケコンを使用している人は正直多いとは言えなかった。
さらに、ウメハラ氏が使用して以来、ヒットボックスことレバーレスアケコンが圧倒的な影響力を持ち始め、名だたるゲーマーたちがこぞってレバーから移行していった事からも分かるよう、HORI云々よりもはや勝つためにはレバーレス一択、的な風潮すらあった。
そんな中、前述のAngrybird選手がスティック、かつ我らが誇るHORIのRAPを使用しての世界一に輝いたのだから、これはもう痛快としか言いようがない。別にレバーレスを否定する訳では全くないものの、やはりアーケードゲームのコントローラーと言えば黎明期からレバーが主流だっただけに、今の時代でもそれが通用する事を証明してくれた事は、昔ながらのゲーマーとしてはやはり痛快なものがあると言わざるを得なかった。
正直、これまでHORIのアケコンを使用して世界一になった例があるのかどうかは分からないのだが、個人的には1999年のツールドフランスにおいて、ランス・アームストロングが初優勝を果たした際、それまでツールだけは勝てなかったシマノ・デュラエースが遂に世界を制した事を思い起こさせる。まあ、その記録に関しては2013年に抹消されてしまうのだけれども、やはり日本のメーカーを使用した選手が勝つというのは痛快極まりないものだ。
で、その肝心のRAP.Nであるが、改めてその特徴を説明していくと、まずは何よりもカッコいい。ガワ自体はすでにPS3時代に開発されているものであり、側面にタッチパッドとヘッドフォン端子がついた事ぐらいしか違いはないのであるが、実物は写真よりも遥かに格好良いのである。そして、金属製でこそないものの、かなりの高級感を醸し出しており、所有欲もかなり満たしてくれる。
それだけに重いのであるが、これが海外では当たり前とされる膝置きが非常に安定し、さらに天面も広くとられているため、手元がかなり安定するのだ。ノアール配置なのは現行のファイティングスティックαも同様なのであるが、こちらは縦に長くしかも左手側のスペースが不自然に狭いため、人によっては左手がガワからはみ出てしまうかもしれない作りとなっている。なので、この点はRAP.Nの明らかな優位点だろう。
逆に欠点と言えば、手元に傾斜がないために机置きにはあまり向かないとされる事だ。出来なくもないのであるが、やはり手首などが角に当たってしまうため、傾斜つきのアケコンと比べるとやりやすいとは言えないかも知れない。また、RAP.Vとは異なり、オプション系ボタンが左上に設置されているのはいいのであるが、窪みがある作りとなっているためそこに埃がたまりやすいのである。
そして、2017年発売だけあって当然HAYABUSAユニット搭載である。別に特段やりづらさなどは感じないのであるが、三和レバーに慣れ切った人は違和感を感じて当然の作りなので、まあ大抵の人は換装してしまうのであろう。また、しっかりしている作りなのにも関わらず、天面が薄いのかレバーの音が若干響くのも難点だ。
なので、一長一短あるアケコンなので、今わざわざプレミア価格で中古品を買うほどでもないとは思う。連射装置などは初代ストIIなどをプレイする際に使えるかも知れないが、今買うなら普通にファイティングスティックαを選んだ方がどう考えてもマシだろう。