10月1日、朝より日本から衝撃的なニュースが目に入ってきた。言うまでもなく、日本プロレス史上最大のスーパースターである、アントニオ猪木の逝去である。頭が真っ白となった私は、こんなタイミングで海外に居る事を悔やんだものであり、正直旅程を変更してすぐに帰りたいとまで思ったほどである。
まあ、よく考えたら自分が戻った所で何の意味もないのであるが、それぐらいやるせない気持ちだった。もちろん、猪木が逝去するなど思ってもいなかった事だから、こればかりは悔やんだところでどうにもならない。しかし、それにより全身の力が抜けた私は、しばらく長州力や前田日明、そして高田延彦らの追悼コメントを読み、そしてその偉大さをあらためて噛み締めていったものである。
ただ、だからと言って部屋で寝込んでいる訳にも行かないので、「迷わず行けよ、行けばわかる」の言葉通り、その日も朝から出かけていった。目指した場所は、KLタワーである。要はペトロナスに行けない代わりに、ここの展望台に行こうと言う訳だ。しかし、Googleマップを見ても分かるように、見た目かなり不便そうな所にある。
一応、「地球の歩き方」によると、ケラナ線が最寄駅だと言うので、それを信じてそこで降りたのであるが、そこで降りたが最後、どうみてもかなり遠く、明らかにモノレール駅からの方が近かった。しかし、そこからモノレールに乗り換えるとなるとKLセントラルまで引き返す羽目になるので、仕方なく全く人気のない道を行ったのであるが、完全車社会のマレーシアは歩道が整備されておらず、めちゃくちゃ歩きづらい。
これまでの海外旅行の中でも一番と言えるぐらい、足の裏に疲労が溜まったのも、もしかしたらそれが原因かもしれない。とにかく、下手に転んで大事にならないように慎重に歩いていったものである。20分ぐらい歩いたのち、ようやくそこへの入り口となるシャトルバスを見つけて、丘の上にある入り口へとたどり着いた。チケットはKLOOK経由で買ったのだが、QRコードを読み込んでくれず、係員に手伝ってもらいつつ上へと登っていった。
しかし、この建物も案の定古めかしく、汚れが目立ったものである。展望台は屋根がなく、ダイレクトに外なのであるが、そことはまた別に床がガラス張りになっている撮影スポットが2ヶ所存在していた。マカオタワーでもあったが、あれはあくまで内部なの対し、こちらは完全に外に突き出ているのである。しかも、そこに立つために常に人が並んでいる。つまり、万が一怯えてでもしまったら笑いものになってしまう訳であり、そう言う訳でそこに向かうのはやめておいた。
そこからはもちろんKL市内が一望出来たのだが、中国大陸から離れている割には大気汚染が酷かった。車社会というのもあるだろうが、最大の原因はインドネシアからの煙だと言う。という訳で、思ったよりも見晴らしは良くはなかった。目の前にはほぼ同じぐらいのペトロナスも見えたが、眺望はほぼ変わらないだろう、という事で別に行かなくても良かったと思っている。