対戦で再び人気に火がついたストIIの牙城を崩せそうなゲームなどは全く現れず、いかなるゲームも悉くストIIの前に駆逐されていったものだが、意外な所から伏兵が現れた。それは、鳴り物入りでハードを投入したにも関わらず、1年半以上もこれといった大ヒット作を生み出す事が出来なかったネオジオからだった。言うまでもなく、「餓狼伝説」である。
システムが極めて酷似しているため、誰もがストII発売後の開発だと思いがちであったのだが、実際はストII前から開発されており、ストII発売後にあまりにも似ていた事に気づき、急遽ライン移動などを付け足して差別化したという。確かに、初代はプレイヤーの意志ではライン移動が出来ず、敵がエスケープする程度、しかも特定のステージのみ、という仕様であったため、いかにも付け焼き刃的な感じだった。
まあそれはさておき、この初代餓狼伝説は、ゲーメストの人気・インカムランキングにてネオジオのゲームとしては最も上位に来たのである。もちろん、ストIIにはかないようががなかったのではあるが、それでも一定のプレイヤーを掴む事には成功し、私の周りでも何人かはプレイしていたものである。しかし、私的には大ヒットゲームのクローンはどうしてもすぐにはやる気は起きなかったので、その時点では傍観する以外はなかった。
という訳で、そんな伏兵こそあったものの、ゲーマーの間ではやはりダッシュの話題で持ちきりだった。4月号で初めて画面写真付きで大まかな内容が公開され、5月号ではAOUショーバージョンが公開された。この時点でのザンギエフは極めて強く、大足払いが異常に強い、かつ通常技であるはずなのに削りが可能という凶悪な仕様だったと言われる。しかし、この時点での実質的な最強はバルログだったと言われ、次点でバイソンというものだったらしい。
このAOUショーというのは、一般人でもチケットを買えば入場可能なのであるが、案の定ダッシュの周りは黒山の人だかりであり、マニアが占領し延々と対戦が行われていたと言われ、かなりの物議を醸したものである。今ならまあ炎上案件だっただろう。
そして、そのあたりのゲーメストにおいて、立ちスクリューの詳しい攻略が改めて行われた。それまでは、レバーが斜め上に差し掛かった所でボタンを押す、みたいな解説であったのであるが、画面を止める事による検証の結果から、レバーが上下左右に入ってさえいれば受け付けるというものであり、さらにストIIはボタンを押した時だけではなく、離した時も受け付ける事までも解析されたのである。
この辺りの解析はさすがにゲーメスト、と唸るほどのクオリティであり、読むだけで楽しめたものである。まあ、だからと言ってすぐには立ちスクリューを出せるようにもなりはせず、安定して出せるようになったのはダッシュが出てからだった。ダッシュ以降では立ちスクリューなど基本中の基本技となってしまったが、この時点ではまだまだエキスパートのテクニックだったのである。