ムーンパトロールをプレイした翌年、世間ではかの「キン肉マン」人気が大爆発していた。当然、数々の関連商品が発売されていったものであるが、その中で最もヒットしたと言えばキン肉マン消しゴムである通称「キン消し」である。それが大量に売られている、駅前のお店まで母親におねだりしにいった所、お店の奥にビデオゲームコーナーがあった。
それが私が初めて目にした「ゲームセンター」的なものなのであったのだが、帰宅した後に母親が露骨に不満を表したのを昨日の事のように覚えている。つまり、当時はそれだけゲームセンターが一般人から敬遠されるものだった、と言う事だ。まだゲームに目覚めていない時代とは言え、当時小学校低学年だった私に対してすら露骨に文句を言ってきたのは、正直子供心にもショックが大きかったものだ。
そんな私にも、初めてまともなゲームコーナーでゲームをプレイする日がやってくる。それは、その夏のお盆における熱海の家族旅行において、小型のアップライト筐体に収められた緑色に輝くゲームを発見した時の事である。その緑色のゲームとは、言うまでもなくかの伝説的作品である「ゼビウス」である。当然、ゼビウスと言う名前自体も知らなかった時の事であるが、その筐体を目にした私に、父親が「やってみな」とばかりに100円玉をくれたのだ。
つまり、初めてプレイした縦画面のゲームが、ゼビウスと言う訳である。無意識にプレイした初めての縦画面のゲームが、まさかゼビウスと言うのは何か運命的なものを感じずにはいられないのであるが、当然なすすべもなくあっさりとゲームオーバーになってしまった。と言う訳で、プレイしたのはこの1回こっきりとなってしまった。しかし、それでも今なお覚えているぐらい印象的な出来事だったので、何も知らない子供に対しても意識をさせる魅力があったという事であろう。今となっては、このゼビウスがコピー基板ではなかったことを祈るばかりである。
そして、泊まった宿においては、ピンク色の鉄骨が非常に印象的なあるゲームを目にした。言うまでもなく、ドンキーコングの事である。この時プレイしたかしていなかったかは覚えてはいないのであるが、目にしたのは間違いはない。しかし、ドンキーコングに関しては、ファミコン本体が発売された同時期に、お店でプレイした記憶があるので、実際に画面を目の当たりにしたのはファミコン版の方が先である。
このように、わずかながらであってもアーケードゲームに触れる機会を得ていた私であったが、さすがに状況が特殊であったので、日常時に目にする機会は皆無に等しいと言えた。つまり、この時点はまだ私の心にゲームというのは意識するものではなかったのである。