ネオジオ格ゲーの人気沸騰に伴い、当時まだ本体が5万円、ソフトが3万円ほどした家庭用ネオジオを購入する人たちも増えていった。よく「ネオジオのソフトは何故あんなに高いのか?」と言う質問をする人たちがままいたが、単純に容量が多いのと、そして家庭用並に価格が安かったら、誰もゲーセンに行かなくなる訳であり、元々アーケードゲームを家に持ち込む、と言うコンセプトなのだから高くて当たり前だろう、としか思えなかったものである。
しかし、かなり家庭用の需要が増えていった事から、遂にSNKはCD-ROMを使用したネオジオCDの発売を決定する。基本650メガバイトもあるのだから、いかにネオジオが大容量とは言っても当時はまだまだ光ディスクには到底及ぶことのないものだった。つまり、容量と価格の問題は一気に解決出来るのであるが、問題はそれを読み込むためのバッファRAMである。
格ゲーの膨大な容量を考えたら、最低でも一度に読み込む容量は50メガビットは必要だ。そこでSNKが出した答えは、なんと56メガビット、つまり7メガバイトと言うものだった。今なら下手すれば画像データ程度のものかも知れないが、当時としてはとんでもない大容量だったのだ。すでにある程度のシェアを築いていた、PCEのSUPER CD-ROM2が2メガビット、メガCDでさえ6メガビットだったのだから、それと比べるといかに桁違いだったかが分かってもらえるかと思う。
一応、PCEにはすでにアーケードカードと言うチート周辺機器があったものの、それを使用しても18メガビットが最高だった。なので、当時リリースされていたゲームであれば、全て問題なくネオジオCDに移植が出来たのであるが、容量が多いという事は当然読み込み時間がかかるという事でもある。しかし、当時はPCですら2~3倍速程度であり、発売直前だった家庭用の次世代機ですら倍速がやっとだった時代である。当然、RAMに金がかかり過ぎたネオジオCDに倍速以上を積む余裕などなく、あえなく等速ドライブでの運びとなってしまった。
すでにPCEとMDのCD-ROMユーザーであった私はその辺りを熟知していたので、これまで一貫としてネオジオCDに手を出す事はなかった。しかし、当時はおそらくほとんどの人たちがその事を知らなかったはずであり、その地獄のようなロード時間にまさに阿鼻叫喚であった事だろう。今でもググると当時の様子が伺えるが、まあそうだよな、としか思えないものである。
ただ、初回発売分はその事はまだ気づかれてなかっただろうし、また初回出荷分だけフロントローディング仕様と言うプレミアものでもあったので、あっさりと完売してしまったはずである。しかし、その後の売れ行きに関しては正直どうだったのかは分からない。そして、ほぼ同時期にSNKは他機種への移植を禁止する運びとなり、ネオジオのゲームを家でやりたければ嫌でもROMかCDの本体を買わねばならなくなったのである。