今更説明するまでもないが、ドラクエの開発には週刊少年ジャンプが大きく関わっていたため、誌面上にて不自然なほどに大きく扱われていた。当時はまさにジャンプ黄金期であり、その影響力は尋常ではなかったため、発売前の時点で認知度自体はかなり広まっていたとは思うのだが、まだ時代はアクションやシューティング中心であったため、出足は極めて静かなものだった。
そんな私が初めてプレイしたのは、当時ジャンプを毎週買っていたクラスメイトの家においてである。これはいつか触れたかも知れないが、とにかく自分の名前が表示されるというのが非常に驚きであり、今では考えられないほどの衝撃を受けたものだった。それで一瞬のうちに虜になってしまったのだが、その友人は「ロトのしるし」で詰まっており、その謎が判明するまでしばらく貸してもらえる事になった。
それでレベル7ぐらいまでプレイしたのであるが、後に返す事となってしまったため、ようやくその友人もクリアまで到達する事が出来た。それでしばらく離れてしまったのであるが、数ヶ月して自分のも買ってもらい、そのままクリアまで行けたと思う。すでにその時点でエンディングは見ていたのであるが、それでも自分の名前が入ったキャラクターでクリア、というのはやはり格別なものがあったものだ。
その時点で秋頃であったかと思うが、その頃になるとドラクエ人気もかなり浸透しており、ファミマガのウルテクコーナーでも大きく扱われていたものだった。そして徳間書店も、基本的にヒットゲームのみの刊行であった「完全攻略本」を発売、そしてその巻末ではゲーム史上初めてのフルオーケストラのサントラ発売の告知までなされていった。
「組曲ドラゴンクエスト」という名称だったが、当時の私では組曲の意味が分からず、その記事だけでは買うには至らなかった。なので、実際に聴いたのはIIのサントラ購入後である。まあ、それはともかくドラクエが国民的ゲームになでまったのはそのゲーム性はもちろんの事であるが、すぎやまこういち氏によるそのあまりにも素晴らしい名曲群があったからこそであるのは間違いない。序曲、ラダトーム城、そして広野を行くなど、それまでのファミコンゲームのレベルを超越したあまりにも美しいメロディにはとてつもない衝撃を受けたものだった。
この「ドラゴンクエスト」はゼロから創造されたものではなく、あくまでウィザードリィとウルティマという偉大なるコンピュータRPGの始祖があったからこそではあったが、それでもあの時代に、そして1作目からいきなり素晴らしいゲームバランスを誇っていたという事が本当に凄かったのである。この辺りは、後に粗製濫造された国産RPGを見れば分かる事だろう。それほどまでに、このドラクエの発売はゲーム業界には衝撃的な事だったのである。