「ストリートファイターIIダッシュ」の発表で一番驚いたのは、CD-ROM2ではなく当時最大の20MビットHuカード採用という事だった。つまり、これは同時にSUPERCD-ROM2における、わずか2MビットのバッファRAMでは到底足りないという事を示唆していた。それを証明するかのように、コナミの「マーシャルチャンピオン」を始め、CD-ROM2の格ゲーはいずれも見た目がショボいパチモノのようなゲームばかりだったのだ。
そんな折に突如として発表したのが、それまでの2Mビットから一気に18Mビットへと増量する力技を実現させる「アーケードカード」なる新たな周辺機器だった。そのローンチに選ばれたのが「餓狼伝説2」であり、これがPCEの年末商戦の切り札となった。
当時、ゲーセンでは長らく「ストII」の一強であったが、前年末に発売された「餓狼伝説2」が、人気とインカム一位こそ取れなかったものの、それでもゲーメストのプッシュもあって着実にファンを増やしていった。そして6月にはADKの「ワールドヒーローズ2」、そして7月には同年のゲーメスト大賞受賞作でもある「サムライスピリッツ」のリリースなど、それはストIIに飽きてきたユーザーを取り込むに十分なほどの勢いだったのだ。
そして、8月には早くも「餓狼伝説SPECIAL」が発表、これは前作を上回る大ヒットを記録し、ほぼ同時期リリースの「スーパーストリートファイターII」を完全に食った形となったほどだ。これにより、SNKは完全に格ゲーメーカーとしての地位を築き上げ、もちろんネオジオ本体の売り上げも一気に伸びる事となる。
もちろん、それらは家庭用にも移植されたが、100メガビット超えのソフトを、当時せいぜい20MビットROMが最高だったSFCやMDに移植というのは到底無理があった。どうにかして無理矢理移植はされたものの、大幅なスケールダウンは否めなかった。ただ、他の3Dゲームなどとは違い、これらは容量さえあれば全て解決出来る問題でもあった。そこで、容量と言えばCD-ROMである。当時の観点で言えば、CD音源さえ考えなければその容量はほとんど無限大と言っても良かった。
しかし、いくらCD自体の容量は多くても、それを読み出せるRAMが小さくては全く意味のないものだった。しかし、となれば答えは単純、それを増やせばいい。と言う訳で、それを一気に解決したのがこの「アーケードカード」という訳だ。本体2Mビット、カードで16Mビット、トータル18Mビットを一気に読み込めるという訳なのだが、当時の観点からすると一気に18Mビット読み込めるというのは大変な事だった。
それまでのハードでは、20Mビットで全キャラクターを収録しなければならないのに、このカードを使えば単純に2キャラに18Mビット費やせる事となるのだ。当時のFF最新作であるVが16Mビットだったから、それすらも一度で読み込めてしまうという事にもなる。当時の家庭用では不可能とされた、「キャラパターンの完全再現」がこれで可能となったのだ。これは期待せずにはいられなかった。