1993年4月、ストリートファイターIIダッシュのPCEとMDへの移植が発表された。しかし、この時点でゲーセンのダッシュはほぼ全てがターボへと入れ替わっており、ダッシュは完全に過去のものだった。この一報を読んだのはファミコン通信であったのだが、やたらと「四天王が使える」事をプッシュしており、なんという今更感がしたものだが、まあ改めて家庭用雑誌だな、という事を実感したものだ。
ただ、発売こそNECであったが、実際の開発元はカプコンだけあって、見た目的なクオリティは完璧に等しかった。問題は操作であるが、こちらも発売とほぼ同時に「アベニューパッド6」なるものが発売され解決。一応2ボタンでもプレイは出来たようだが、ほとんどそんな人たちはいなかっただろう。つまり、プレイには別売りの周辺機器が必要、という事であるため、定価ベースであれば一色で14000円ほどの出費を覚悟しなければならなかった。普通に考えれば同梱すべきだと思うのだが、そのあたりの見込みの甘さはさすがNECと言える。
そして、最大の不運はPCE版発売1ヶ月後にSFC版ターボの発売が予定されていた事だ。当時、PCEのみを所有しているゲーマーなどはかなり少なかったと思われるし、しかも内容は旧作のダッシュである。当然、買い控えが起きる事は必至であり、案の定SFC版が発売されてからは怒涛の勢いで値下げされていき、あっという間にワゴンの常連となってしまった。
そして競合となるはずのMD版は、開発延期の最中に大幅にパワーアップがなされ、実質ターボの移植となり、また6ボタンパッドもPCEのそれと比べれば割安であったため、こちらはかなりのセールスを記録した。そしてさらに、家庭用の移植では当時トレンドだった同時押しが可能だったのも大きかった。
私は当時シグマのアケコンを使用しており、ちょうど6ボタン用のケーブルも発売されていたのであるが、確か4000円程度とそれなりに高かったため、このPCE版ダッシュは見送る事となった。のち、HORIのマルチケーブルを購入した際に、ようやくダッシュも手に入れたのであるが、実際出来自体はかなり良かったため、一応それなりにプレイはしたものである。他機種より優れている面として、ボイスはもちろんだが、SEにもサンプリングを使用しているため、アーケードのそれにかなり近い出来となっている事などが挙げられる。
ただ、やはりゲーム自体はダッシュという1世代前のものであったので、正直どうして今更これを、しかも周辺機器別売りで出そうと思ったのかは気になる所ではある。ターボの版権は任天堂が得たので、その関係かも知れないが、のちのMD版がほぼ完全にターボだった事からも、内容自体は関係なかった事がわかる。いずれにしてもPCEのみがババを引いたような感じだった。