アーケードの移植以外のSSのもう一つの顔と言えば、中期以降にはSSの代名詞的存在ともなったギャルゲーの存在である。初期は「美少女ゲーム」とも言われたこのジャンルのパイオニアは私的には定かではないものの、家庭用における火付け役といえばあれしかない。もちろん、1994年6月にまさに彗星の如く現れた「ときめきメモリアル」である。
当時は「なぜコナミがこんな軟派なゲームを」と、多くのコナミファンが愕然としたものであったが、発売前から業界内での評価は極めて高く、私が愛読していた「PCエンジンFAN」でも別冊の付録が付属していたほどである。さらには、当時2ページながら家庭用ゲームの紹介も行っていたゲーメストですらも、見開き2ページで特集されていた事からも、いかにこのゲームがゲーマーを虜にさせていったかが伺いしれるものだ。
しかし、当時まだそのようなゲームには抵抗があった私は、どうしてもプレイする気は起こらなかった。その風向きが変化していったのは、翌年発売されたPS版以降の事である。当然のように大ヒットを飛ばしたこの初代ときメモは、それまで見向きもしなかった人たちまでもギャルゲーという存在に目を向けさせ、そしてあの岡村隆史さんまでも夢中にさせていった。
当時、ナイナイのファンであった私は、「岡村さんがやっているのなら俺もやってみようかな」と思い、SSを購入した直後ぐらいにSS版を購入した。当然、どハマった私はしばらく没頭していくのであるが、同時期に発売された超大作「サクラ大戦」においても、美少女をクローズアップさせた作品であり、そしていずれも大ヒットを記録したため、この辺りから業界的にも「ギャルゲーは売れる」という概念が生まれていったに違いない。
しかし、任天堂は言わずもがなでありSCEも同様、となればメーカー的に残されたのはSSしかなかった。実際「野々村病院の人々」や、「スーパーリアル麻雀シリーズ」らが次世代機としては初のX指定として発売された事は、業界的にも非常にセンセーショナルな話題となったものだ。しかし、やはり家庭用という事からか、まもなくその指定は撤廃されてしまったものの、それでも18歳以上推奨という枠組みだけは残った。
そして、かつてはPCEも同様の路線に活路を見出した事からも分かるよう、ギャルゲーは2Dの美麗なグラフィックさえ出せれば問題ない。言うまでもなく、ポリゴンが弱いというSSの致命的な弱点がここでは全く問題なくなる訳だ。それら条件が重なり、各メーカーはこぞってギャルゲーを発売していった。
この路線に関してはかなり賛否両論渦巻き、実際に雑誌では議論が交わされたものだったが、私個人的な意見としては、別にギャルゲーだけというだけではなく、どのジャンルもある程度満遍なくリリースされていたはずなので、特に気になる事もなかった。それに、商業的に成功したと言えるのは、せいぜいときメモと、あとはエルフの移植作品ぐらいであった気がする。私が後者でプレイしたのは「下級生」ぐらいのものだったが、当然家庭用としてのNG要素は全て省かれており、PC版のグラフィックは望むべくもなく、内容自体は非常にマイルドである。
また、「ときメモ」はPS版に比べると非常にレスポンスが良く、ゲームがサクサク進んでくれるのだが、その反面BGMやボイスの質がPS版に比べると今ひとつであり、結局PS版を購入してからはそればかりプレイしていった。とは言っても、SS版もかなりのセールスを記録したのは間違いなく、私のようにこれで虜になった連中も多い訳であり、SSでも発売した意義は大きかった。