当時のゲームソフトの売り上げは、すでにポイントなどではなくほぼ実際の売上本数が公表されていたが、明らかにPSよりもSSの方が売り上げが鈍かった。確かに1997年以降、FFVIIの影響によりPS本体が爆発的に売れており、その要因が最も大きかったのは間違いはないが、それ以上にSSに不利に働いていたのが中古市場の暴落だった。
とにかく、発売して2、3ヶ月もすれば一気に中古市場にソフトが流れてしまっていたため、あえてそこに出回るまでにいわゆる買い控えが起きてしまったのだ。特に当時はネット対戦が一部例外を除きなかった事もあり、SNKの格ゲーなどは特に暴落が早かったように思う。もちろん、格ゲー人気の盛り下がりなどもあったとは言え、当時の売り上げ本数を見る度に、すでにSS派だった私としてはヤキモキしていたものだった。
それでも、セガとしても決して手をこまねいている訳ではなかった。確かに1997年度は劣勢が目立って仕方がなかったが、年末商戦に向けてとっておきのゲームが用意されていたのだ。まずは前回でも触れたように、セガとカプコンが満を持して開発した4MB拡張RAMを引っ提げた「X-MENVSストリートファイター」である。RAM付きながら7800円と、ほぼ赤字覚悟で販売したらしいが、その甲斐もあってか当時の格ゲーとしては異例の30万本近いセールスを記録した。
移植度も素晴らしく、キャラパターンの完璧移植だけでなくゲーム中のロードもカートリッジ並に一瞬で終わるなど、それまでの格ゲーの中でも最高レベルの出来を誇っていたのだ。外部RAMの拡張が不可能なPSではどう考えても不可能な移植であり、これだけでもSSユーザーは多少なりに溜飲を下げる事となった。
そして、年末には、長年セガハードでは弱いとされてきたRPGの大作が2つリリースされていった。まずは待望のシリーズである「デビルサマナー・ソウルハッカーズ」である。前作はかなり難易度が高く、攻略本がないと若干キツイ出来であったが、こちらはかなり敷居が下がっており、間口の広い出来となっていた。そしてもう一つが、ゲームアーツが満を持して発表した「グランディア」である。
こちらはSSが弱いとされてきたポリゴンを思いっきり駆使したグラフィックを実現しており、街中の画面などは360度回転させる事が出来る。これは当時のFFですら実現出来なかった事であり、少なくとも見た目に関しては群を抜いていた出来だったものだ。のちのドラクエVIIも同じ画面構成を実現し、それなりに話題にもなっていたかも知れないが、実は初めて完全3Dフィールドを実現したのはこのSS版グランディアであったのだ。
いずれもセールスは30〜40万本程度であり、当時のSSの市場規模を考えたら成功と言えた部類であったとは思うが、それでもPSの圧倒的なセールスの前には到底かなわなかった。さらに、格ゲーとは異なりいずれの作品も「SSでなければ作れない」というゲーム性でもなかったので、いずれかPSでも出るだろうと思っていたら案の定そうだった。まあ、実は私も前者に関しては後発のPS版をプレイしていったのであるが、すでにセーブデータの安定性からRPGやSLGは危険すぎるという認識だったので、こればかりは致し方なかったものだった。